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第四章 Love And Hate
第80話 保健室の先生
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酷い風邪を引いて早退して、結局翌日は学校を休んだのだが、心配した友紀ちゃんたちからのLINEが引切りなしだった。
もっとも、わたしの体のことよりも、専ら十一夜君との関係について心配しているようなので、途中から面倒臭くなって携帯を見るのを止めた。うんざりだ。
正直、友人である十一夜君とわたしがどうとか考えてもみなかったのだけれど、そういうことを考え出すと、何だか変に意識してしまいそうで考えたくない。
だって、うっかり十一夜君って好きな人がいるのか訊いてみただけで、あんな雰囲気になるのだ。その上突如現れた美少女、桐島さんと十一夜君の急接近を考えたら、余計なことは考えない方がいい。
そんな風に思っていたのに、一日中ベッドの上でうつらうつらしながら見た夢の中で、十一夜君とわたしは何故か付き合っていることになっていて、デートをしていた。皆がおかしなことを言うものだから、そのせいだろうか。何とも気恥ずかしい夢だ。
ただ、薄っすらとデートの夢だったことは覚えているものの、詳しい内容はさっぱり思い出せないのが歯痒い。
そんなことでもまた靄々。そのうちに今度は十一夜君と桐島さんがどうなったのか気になって靄々。
病気で休んでいるというのに、何でこんなに靄々しながら過ごさなきゃならないんだか。
これが噂のもやもや病か。……違うな。
どうでもいいや。兎に角、そんな風にして靄々させられちゃって、夢の中の十一夜君と現実の十一夜君、二人とも迷惑千万だよ、まったく。
させられてと言うよりは勝手に靄々しているだけだけど。
その次の日、熱はかなり下がったものの、まだ本調子じゃないので休んだ方がいいだろうということになった。
授業のノートは秋菜が貸してくれた。クラスは違うけど、まあ授業の進み具合は概ね同じような感じだし、秋菜のノートはクオリティが高いから一番信用できる。
そんなわけで午前中はダラダラ寝ていて、昼近くなって体調も大分良くなってきたし、溜まっていたLINEのメッセージを開いて確認してみた。
未読部分を見てみれば、十一夜君の行動報告みたいになっていた。
その報告によれば、わたしが保健室に担ぎ込まれた後、十一夜君は教室に戻ってきたものの、わたしがいなくなっていることには目もくれず、いつもの通り授業以外は寝ていたそうだ。昼休みにはまた桐島さんがやってきて、二人で何処かへ出ていったので、楓ちゃんと友紀ちゃんが追跡したそうだ。
十一夜君相手にそんなことをしたところで、どうせ結果は目に見えている。
案の定、途中で巻かれてしまったようで、見失ったらしい。
はぁ、友紀ちゃんたち、何をやってるんだか。まあ、確かに二人のことが気になると言えば気になるが、何しろ相手はあの十一夜君。無駄なことだ。
そんなことより、わたしがいなくなったことに十一夜君が無関心と言うところが問題だ。だって、もしわたしがまた何者かによって拉致されていたりしたらどうするんだ。わたしのことを守ってくれるんじゃなかったのか。
机の上においてあるキーホルダーを睨みながら、自然と視線に力がこもってしまう。
報告の続きによれば、放課後も桐島さんが十一夜君を迎えに来て、一緒に帰って行ったと言う。友紀ちゃんの報告には十一夜君たちに対する怒りが込められているように感じられた。
これはどうやら本当に付き合い始めたらしい。
自分の身の安全も、今までみたいに十一夜君に頼りっ放しというわけにはいかなくなるだろう。
最近は身の危険は特にないけど、早めに何か策を講じる必要があるなあ。全然思い付かないけど……。
昼食は叔母さんが部屋に運んでくれて、二人で食べた。
「そう言えば、最近十一夜君はどうしてるの?」
「は、どうしてるって、何が?」
「ん? そのままの意味だけど。元気にしてる? とか、何か変わったことはないの? とかそういう意味」
「ふ~ん。何か知らないけど、彼女ができたらしいよ」
「あら、まぁ。ホントに?」
「いや、分からないけどね。隣のクラスの超美人の桐島さんって女子と、休み時間も帰り道も一緒らしいよ。一昨日から」
それにしてもどいつもこいつも十一夜君、十一夜君ってさ。何だよ。十一夜君がどうだろうと知るもんか。
「一昨日って、夏葉ちゃん倒れて殆ど寝ていたのに詳しいのね」
「クラスメイトがいちいち報告してくるんだよ。訊いてもいないのに」
「ふ~ん」
そう言って叔母さんはにやにや笑っている。最近わたしの周りにはこういう反応を見せる人が多い気がするのだけど、気のせいだろうか。友紀ちゃんや楓ちゃん然り、聖連ちゃん然りだ。その反応って、何か意味ありげで凄く気になるんだよな。何なんだろう。
「夏葉ちゃんのお友達は友達思いなのね」
「え? あぁ、まあそれはそうかな。でも何で?」
「ふふ~ん。なるほど。夏葉ちゃんがそんなだから皆気を揉むのね~」
「は? 何々? 全然意味が分からないんだけど?」
「うふふ、そうだよね」
叔母さんはただ笑ってそう言うだけだ。
「何々? もう何なの?」
「かわいいわね、夏葉ちゃんは。うふふふ」
「ちょっと、また~。分からん!」
皆の含み笑いが不気味すぎる。一体全体何が言いたいんだ。わたしが何をした?
「それが分からないうちは、夏葉ちゃんもまだまだ大人の女には程遠いわね。うふふふ」
「あ、また~。何、その笑い。て言うか大人の女とかさ。そんなのよりこっちは早く男に戻りたいわ」
「あら、夏葉ちゃんはまだ男の子に戻りたいと思ってたの?」
「え? それはやっぱり……そうだけど?」
「そうなの? 女の子としての人生を楽しんでいるように見えてたけど……男の子に戻りたいという気持ちはあるのね……」
「そりゃあそうだよ。元々男なんだしさあ。一応現実として女になっちゃったから、その現実は受け入れるより仕方がないと思ってやってるけど、男に戻るのを諦めたわけじゃないよ」
まぁ、現実的に男に戻って困ることもいくらかあるのだけど、それでもやっぱりなぁ。今の状態だと一生恋愛もできない気がするし。
叔母さんはそんなわたしを温かく見守ってくれているが、どう思っているんだろうな。
叔母さんに限らず家族全体が、男子が女子化するという前代未聞の大事件をかなり積極的に受け入れてくれている。きっとそれは、突然そんな事態に見舞われたわたしのことを一番に考えてのことだと思う。一番困惑しているのは当の本人だろうと全面受け入れの姿勢を取ってくれたのだ。
それも華名咲家の財力と権力とコネクションを積極的に駆使して。
「夏葉ちゃんが男の子でも女の子でも、わたしたちにとっては大切な家族だからね。あなたが戻りたいと願っているのなら、わたしたちもできることは精一杯援助するわよ。」
「ありがとう……叔母さん」
そんな風に考えてくれていたんだ。女子化した今では、言葉遣いから立ち居振る舞いに至るまで、女らしくするようにうるさく言われるから、そんな風に言ってもらえると何だか意外で嬉しい。
◇ ◇ ◇
そして次の日、漸く体調も戻って登校すると、わたしの登校を待っていたわけではないだろうが、転校生がクラスにやってきた。
「え~とね。夏休み直前のタイミングだけど、転入生を紹介しま~す。君、教室に入って」
細野先生の唐突なアナウンスに急にそわそわしだすクラスメイトたち。
その転校生が教室に入ってくると、少し教室内がざわつく。
これまたイケメン男子だ。うちのクラスだと十一夜君が一番人気だが、彼に対抗しうるイケメンがうちのクラスにやってきた。
塩顔の十一夜君とは対象的にちょっと濃い目のぱっちり二重で彫りの深い顔だ。
「うん、じゃあ適当に自己紹介してもらえるかな」
先生の適当な指示に応えて、転校生が自己紹介を始めた。
「はじめまして。父の仕事の都合で、スイスに行ってましたが、この度五年ぶりに日本に戻ってきました。黛孝太郎です。よろしくお願いします」
黒板に名前を書いて、そう自己紹介した黛君。帰国子女なんだな。
スイスか。以前、ダヴォスってところに家族でスキーをしに行ったことがあったな。ホッケーの試合を見た思い出がある。
それで黛君の席はわたしからは遠い窓際の席になった。
イケメンの登場に、女子は浮足立ち、男子は値踏みするような目を向ける。
今日一日は彼の話題でクラスは持ち切りだろうな。
さて、十一夜君はと言えば相変わらずだ。
朝、いつものように挨拶を交わした際「もういいのか?」と訊ねられた程度で、特にわたしのことを心配した風もなくとっとと寝てしまった。
何ていう薄情さだ。彼女が出来た途端にこの冷たさ。リア充爆発しろとかいう例のアレは、こういう気持ちのときに使うのだな。それにしてもこんなに冷酷な奴だったとはな。
そして友紀ちゃんや楓ちゃんから受けていた報告の通り、今日も休み時間になれば隣のクラスの美少女、桐島さんがやってきて十一夜君と何処かへ行ってしまう。
そんな鬱陶しいリア充を見ていると、何だか苛々が募ってくる。家で一人で寝ていた間はずっと靄々していたのだが、実際にその様子を目にすると何か苛々する。こんなにリア充が鬱陶しいものだとは思わなかったな。
昼休みにまた二人連れ立って出ていく十一夜君と桐島さんに、性懲りもなく友紀ちゃんが尾行しようと言い出した。そんなことをしたって無駄なことだと分かりきっていたはずなのに、苛々が募っていたわたしもついつい友紀ちゃんの提案に乗っかってしまった。
教室を出ようとしたところで、タイミング悪く渡瀬先輩が待ち構えていた。
「華名咲さん、よかったら昼、一緒にどうかな。明日のライブのこととか、ちょっと話しておきたいし」
「あ、先輩……今ちょ」
今ちょっと都合が悪いからと断ろうとしたところで、目の色を変えた友紀ちゃんが割って入ってきた。
「先輩! ピンデスの渡瀬先輩ですよね! わたしファンなんです! 明日のライブ行きます!」
こんな具合にグイグイ渡瀬先輩に迫っている。
おい、十一夜君の尾行はどうなった。自分が言いだしたことなのにさあ。
「あ、あぁ。そうなんだ。あ、ありがとう」
先輩も友紀ちゃんの圧に押され気味だ。
「わたし、夏葉ちゃんの友達なんです! よ、よかったら、あの……お昼、わたしもご一緒させていただけませんか!」
はぁ? 十一夜君はどうするんだよ。あの美少女とどこで何をやってるんだか確認しないと、授業にもろくに身が入らないとか言ってたくせに。
「え? あ、うん。勿論。じゃあ一緒に食べるかい?」
「うわぁー、ホントですか? 是非っ」
十一夜君を尾行するはずが、何と渡瀬先輩のバンドの熱狂的なファンである友紀ちゃんの手のひら返しによって、渡瀬先輩と一緒に昼ごはんという運びになった。
なし崩し的に楓ちゃんも付き合わされることになり、結果、渡瀬先輩は美女三人に囲まれて文字通り美味しい昼ごはんと相成ったわけだ。
「何か食べたいものある?」
「ピンデスの話が聞けるなら何でもいいです!」
友紀ちゃんの一言に誰も意見できる雰囲気ではなかったのだが、先輩のお薦めの店ということで来たのは、わたしたちもお気に入りのピーターラビットだった。ここならわたしたちもよく利用するし、文句はない。
席に着いて、メニューを眺めながら何にしようかと考えている間も、友紀ちゃんだけは先輩を見ながら終始ニヤニヤが止まらない様子だ。さっさと注文を選べ。
すっかり興奮気味で前のめりに渡瀬先輩を質問攻めにしている友紀ちゃんに少々呆れながら、ふと顔を上げると、テーブル越しに何と十一夜君と桐島さんがいるじゃないか。
奇遇にも、同じ店に来ていたのか。この店はそもそも、十一夜君がここで食べてみたいと言ってわたしの奢りで来たのが最初だ。そんな店に彼女を連れてくるとは何となく癪に障る。
別にそんなの十一夜君の自由だ。だけど、何だか癪だ。
あんな美少女とイチャコラしやがって。鼻の下伸びてるんじゃないのか、コンチクショーめ。
……って、ん? これはリア充に対するDTの嫉妬か? 未だ残っている男の部分が、桐島さんみたいな美少女を彼女にしているリア充に対して嫉妬の炎を燃やしていると、そういうことなのかな?
女になっても未だ衰えを知らぬとは、恐るべしDTパワーかな。主に負の力において。
「ごめん。何かやっぱりまだ本調子じゃないみたい。ちょっと具合悪いから教室に戻るね」
DTの嫉妬かと思うとみっともない限りだが、美少女と楽しそうにランチを共にしている十一夜君を見ていると、何だか苛々して気分が悪いので、体調のせいにしてこの場を去ることにした。DTの負のパワー舐めんなよ。
心配してくれる友紀ちゃんや楓ちゃんと、どことなくがっかりしている風に見える渡瀬先輩を尻目に、早卒と不愉快なその場を立ち去った。
教室に戻ってもどうせ誰もいないし、先日のお礼も兼ねて保健室に立ち寄ることにして、手土産にピーターラビットの焼き菓子を買った。
保健室に来ると、養護の先生が独りでカップ麺を啜っていた。女子力低そうだな、先生。
「あら、いらっしゃい。まだ体調悪いの?」
「あ、いえ。この前はお世話になったのでお礼に。よかったらこれ」
買ってきたピーターラビットの焼き菓子を手渡す。
「あら、若いのに気が利くわね。座って。お茶を入れるから一緒に食べましょうよ」
「あ、そうですか。それじゃ、お言葉に甘えて」
「ほら、そこの君も。少しは元気出たでしょ。一緒にいただきましょ」
養護の先生がそう言ってベッドの方に声を掛けると、出てきたのは何と今日転校してきたばかりの黛君だった。
「あれ、黛君だよね、今日転校してきた」
「あら、華名咲さんと同じクラスなの?」
「ああ、どうも」
まだ個人的には挨拶もしていなかったから、黛君の方はわたしのことを認識していないかもしれない。
「あ、わたし同じクラスの華名咲夏葉です。どうぞよろしくね。因みに五組に見た目が同じ子がいるんだけど、そっちは従姉妹。両親が双子同士だからそっくりになっちゃったみたい」
「華名咲さん……よろしく。黛孝太郎です」
まぁ、朝自己紹介してたから知ってるけど。
「黛君、具合悪いの?」
「あぁ、まだ体が馴染まないっていうか……時差ボケの一種というか……」
「そうかそうか、スイスから来たんだもんね。時差結構あるよね。日本にはいつ戻ったの?」
「三日前かな」
「三日前かぁ、時差ボケ治るのにちょっと時間掛かってる感じかな」
三日前と言えば、ちょうどわたしが体調を崩した日だ。
「黛君。華名咲さん美人でしょ。オススメ物件よ。今フリーらしいし」
「先生、余計なお世話ですから。わたしは誰とも付き合う気ないですし」
「はいはい。勿体ないなぁ、もう。わたしがあなたの若さでその美貌だったらとっかえひっかえだったのに……残念。さ、お茶どうぞ。食べましょ」
く、エッチな養護教員とか男子生徒の夢の体現じゃないか。いや別にエッチと決まったわけじゃないけど。
それからお茶とお菓子をいただきながら、これと言って内容のある話もなく昼休みの終わりが近づいて教室に戻った。
偶々、わたしが黛君と一緒に教室に戻ってきたものだから、また教室がちょっとざわついた。
十一夜君はすでに教室に戻っていて、いつものように突っ伏して寝ていた。
友紀ちゃんと楓ちゃんは、わたしと黛君が一緒だったことに驚いたのか、また二人して顔を見合わせている。
「ちょっとちょっと。どういうことよ、夏葉ちゃん? 転校生と一緒だったわけ?」
楓ちゃんが近付いてきて、そう訊いてくる。
「あぁ、保健室に行ったら彼もいたんだよ。昼休み終わるから一緒に戻ってきただけだけど?」
「そうだったんだ。彼のこと諦めちゃったのかと思ったよ……」
そう言いながら楓ちゃんが十一夜君の方を見やる。
十一夜君は我関せずと言った風情で寝ている。しれっとしちゃって。
「は? 別に十一夜君は関係ないし」
苛っと来て思わず口調が刺々しくなってしまう。
すると十一夜君がムクリと起きた。
「何?」
しまった、聞こえてしまったようだ。
「別に。何でもないし」
「そうか」
十一夜君は一言言うとまた伏せてしまう。くぅ~~~っ、何この態度。リアクション薄っ。何か腹立つんだよな。
と、そこに視線を感じて振り向くと、何と桐島さんが入口のところで仁王立ちしてこちらを睨みつけているではないか。
な、何だよ。こっち見んな。って言うかこっち来るなよ、怖いから。
「ちょっと。あなた十一夜君に馴れ馴れしくし過ぎじゃない? そういうの目障りだからやめていただけるかしら」
おっと、漫画みたいな高飛車キャラ来たーーーっ。
「は? 面白いじゃないの。あなたこそどういうつもりよ!」
わたしが呆気にとられてぽかんとしていたら、友紀ちゃんが桐島さんに食って掛かっている。やめろやめろ。こんなのでも十一夜君の彼女さんなんだろ。
腹立つけど取り合わない方がいいよ。
「あら、どうかしまして? わたしは当然の権利を主張したまでですので、部外者はお黙りになって」
「ぶ、部外者ですって? ぽっと出のあなたなんかに部外者呼ばわりされるなんて心外だわ」
あ、やばいやばい。喧嘩になりかけてる。
「ちょっと、友紀ちゃん。やめなよ」
ここで十一夜君も漸く喧騒で目が覚めたのか、再び起き上がり桐島さんに気付いたようだ。
「あ、瞳子さんか。どうした?」
「ううん、ちょっとこの子たちに用があっただけ。もう用は済んだわ」
「そうか」
そしてまた十一夜君は寝てしまう。どんだけ眠いんだよ。
て言うか瞳子さん? もう下の名前で呼んでいるのかよ。わたしなんて未だに華名咲さん呼ばわりだよ。
桐島さんは勝ち誇るような目線をくれて自分の教室に戻っていった。
「か、夏葉ちゃん……眉間に皺が寄ってる……」
「へ?」
慌てて両指で眉間の皺を伸ばすが、あの高飛車女の態度にも、十一夜君の態度にも苛々は募る一方。
普通、友達には彼女できたことくらい報告するだろう? それなのに十一夜君と来たら何だよ。あんまりじゃないか。
何が、『あ、瞳子さんか』だよ、バーカ。イチャコラしやがって。
大体事件の調査はどうした。十一夜家の総力上げるんじゃなかったのか?
そんなときに色恋沙汰なんて余裕かましやがってコンチキショーめ。
「夏葉ちゃん、眉間……」
「え? あ、はいはい」
結局この日も十一夜君との友人関係を取り戻すことができなかった。
そしてわたしの眉間の皺も戻らなかった。
もっとも、わたしの体のことよりも、専ら十一夜君との関係について心配しているようなので、途中から面倒臭くなって携帯を見るのを止めた。うんざりだ。
正直、友人である十一夜君とわたしがどうとか考えてもみなかったのだけれど、そういうことを考え出すと、何だか変に意識してしまいそうで考えたくない。
だって、うっかり十一夜君って好きな人がいるのか訊いてみただけで、あんな雰囲気になるのだ。その上突如現れた美少女、桐島さんと十一夜君の急接近を考えたら、余計なことは考えない方がいい。
そんな風に思っていたのに、一日中ベッドの上でうつらうつらしながら見た夢の中で、十一夜君とわたしは何故か付き合っていることになっていて、デートをしていた。皆がおかしなことを言うものだから、そのせいだろうか。何とも気恥ずかしい夢だ。
ただ、薄っすらとデートの夢だったことは覚えているものの、詳しい内容はさっぱり思い出せないのが歯痒い。
そんなことでもまた靄々。そのうちに今度は十一夜君と桐島さんがどうなったのか気になって靄々。
病気で休んでいるというのに、何でこんなに靄々しながら過ごさなきゃならないんだか。
これが噂のもやもや病か。……違うな。
どうでもいいや。兎に角、そんな風にして靄々させられちゃって、夢の中の十一夜君と現実の十一夜君、二人とも迷惑千万だよ、まったく。
させられてと言うよりは勝手に靄々しているだけだけど。
その次の日、熱はかなり下がったものの、まだ本調子じゃないので休んだ方がいいだろうということになった。
授業のノートは秋菜が貸してくれた。クラスは違うけど、まあ授業の進み具合は概ね同じような感じだし、秋菜のノートはクオリティが高いから一番信用できる。
そんなわけで午前中はダラダラ寝ていて、昼近くなって体調も大分良くなってきたし、溜まっていたLINEのメッセージを開いて確認してみた。
未読部分を見てみれば、十一夜君の行動報告みたいになっていた。
その報告によれば、わたしが保健室に担ぎ込まれた後、十一夜君は教室に戻ってきたものの、わたしがいなくなっていることには目もくれず、いつもの通り授業以外は寝ていたそうだ。昼休みにはまた桐島さんがやってきて、二人で何処かへ出ていったので、楓ちゃんと友紀ちゃんが追跡したそうだ。
十一夜君相手にそんなことをしたところで、どうせ結果は目に見えている。
案の定、途中で巻かれてしまったようで、見失ったらしい。
はぁ、友紀ちゃんたち、何をやってるんだか。まあ、確かに二人のことが気になると言えば気になるが、何しろ相手はあの十一夜君。無駄なことだ。
そんなことより、わたしがいなくなったことに十一夜君が無関心と言うところが問題だ。だって、もしわたしがまた何者かによって拉致されていたりしたらどうするんだ。わたしのことを守ってくれるんじゃなかったのか。
机の上においてあるキーホルダーを睨みながら、自然と視線に力がこもってしまう。
報告の続きによれば、放課後も桐島さんが十一夜君を迎えに来て、一緒に帰って行ったと言う。友紀ちゃんの報告には十一夜君たちに対する怒りが込められているように感じられた。
これはどうやら本当に付き合い始めたらしい。
自分の身の安全も、今までみたいに十一夜君に頼りっ放しというわけにはいかなくなるだろう。
最近は身の危険は特にないけど、早めに何か策を講じる必要があるなあ。全然思い付かないけど……。
昼食は叔母さんが部屋に運んでくれて、二人で食べた。
「そう言えば、最近十一夜君はどうしてるの?」
「は、どうしてるって、何が?」
「ん? そのままの意味だけど。元気にしてる? とか、何か変わったことはないの? とかそういう意味」
「ふ~ん。何か知らないけど、彼女ができたらしいよ」
「あら、まぁ。ホントに?」
「いや、分からないけどね。隣のクラスの超美人の桐島さんって女子と、休み時間も帰り道も一緒らしいよ。一昨日から」
それにしてもどいつもこいつも十一夜君、十一夜君ってさ。何だよ。十一夜君がどうだろうと知るもんか。
「一昨日って、夏葉ちゃん倒れて殆ど寝ていたのに詳しいのね」
「クラスメイトがいちいち報告してくるんだよ。訊いてもいないのに」
「ふ~ん」
そう言って叔母さんはにやにや笑っている。最近わたしの周りにはこういう反応を見せる人が多い気がするのだけど、気のせいだろうか。友紀ちゃんや楓ちゃん然り、聖連ちゃん然りだ。その反応って、何か意味ありげで凄く気になるんだよな。何なんだろう。
「夏葉ちゃんのお友達は友達思いなのね」
「え? あぁ、まあそれはそうかな。でも何で?」
「ふふ~ん。なるほど。夏葉ちゃんがそんなだから皆気を揉むのね~」
「は? 何々? 全然意味が分からないんだけど?」
「うふふ、そうだよね」
叔母さんはただ笑ってそう言うだけだ。
「何々? もう何なの?」
「かわいいわね、夏葉ちゃんは。うふふふ」
「ちょっと、また~。分からん!」
皆の含み笑いが不気味すぎる。一体全体何が言いたいんだ。わたしが何をした?
「それが分からないうちは、夏葉ちゃんもまだまだ大人の女には程遠いわね。うふふふ」
「あ、また~。何、その笑い。て言うか大人の女とかさ。そんなのよりこっちは早く男に戻りたいわ」
「あら、夏葉ちゃんはまだ男の子に戻りたいと思ってたの?」
「え? それはやっぱり……そうだけど?」
「そうなの? 女の子としての人生を楽しんでいるように見えてたけど……男の子に戻りたいという気持ちはあるのね……」
「そりゃあそうだよ。元々男なんだしさあ。一応現実として女になっちゃったから、その現実は受け入れるより仕方がないと思ってやってるけど、男に戻るのを諦めたわけじゃないよ」
まぁ、現実的に男に戻って困ることもいくらかあるのだけど、それでもやっぱりなぁ。今の状態だと一生恋愛もできない気がするし。
叔母さんはそんなわたしを温かく見守ってくれているが、どう思っているんだろうな。
叔母さんに限らず家族全体が、男子が女子化するという前代未聞の大事件をかなり積極的に受け入れてくれている。きっとそれは、突然そんな事態に見舞われたわたしのことを一番に考えてのことだと思う。一番困惑しているのは当の本人だろうと全面受け入れの姿勢を取ってくれたのだ。
それも華名咲家の財力と権力とコネクションを積極的に駆使して。
「夏葉ちゃんが男の子でも女の子でも、わたしたちにとっては大切な家族だからね。あなたが戻りたいと願っているのなら、わたしたちもできることは精一杯援助するわよ。」
「ありがとう……叔母さん」
そんな風に考えてくれていたんだ。女子化した今では、言葉遣いから立ち居振る舞いに至るまで、女らしくするようにうるさく言われるから、そんな風に言ってもらえると何だか意外で嬉しい。
◇ ◇ ◇
そして次の日、漸く体調も戻って登校すると、わたしの登校を待っていたわけではないだろうが、転校生がクラスにやってきた。
「え~とね。夏休み直前のタイミングだけど、転入生を紹介しま~す。君、教室に入って」
細野先生の唐突なアナウンスに急にそわそわしだすクラスメイトたち。
その転校生が教室に入ってくると、少し教室内がざわつく。
これまたイケメン男子だ。うちのクラスだと十一夜君が一番人気だが、彼に対抗しうるイケメンがうちのクラスにやってきた。
塩顔の十一夜君とは対象的にちょっと濃い目のぱっちり二重で彫りの深い顔だ。
「うん、じゃあ適当に自己紹介してもらえるかな」
先生の適当な指示に応えて、転校生が自己紹介を始めた。
「はじめまして。父の仕事の都合で、スイスに行ってましたが、この度五年ぶりに日本に戻ってきました。黛孝太郎です。よろしくお願いします」
黒板に名前を書いて、そう自己紹介した黛君。帰国子女なんだな。
スイスか。以前、ダヴォスってところに家族でスキーをしに行ったことがあったな。ホッケーの試合を見た思い出がある。
それで黛君の席はわたしからは遠い窓際の席になった。
イケメンの登場に、女子は浮足立ち、男子は値踏みするような目を向ける。
今日一日は彼の話題でクラスは持ち切りだろうな。
さて、十一夜君はと言えば相変わらずだ。
朝、いつものように挨拶を交わした際「もういいのか?」と訊ねられた程度で、特にわたしのことを心配した風もなくとっとと寝てしまった。
何ていう薄情さだ。彼女が出来た途端にこの冷たさ。リア充爆発しろとかいう例のアレは、こういう気持ちのときに使うのだな。それにしてもこんなに冷酷な奴だったとはな。
そして友紀ちゃんや楓ちゃんから受けていた報告の通り、今日も休み時間になれば隣のクラスの美少女、桐島さんがやってきて十一夜君と何処かへ行ってしまう。
そんな鬱陶しいリア充を見ていると、何だか苛々が募ってくる。家で一人で寝ていた間はずっと靄々していたのだが、実際にその様子を目にすると何か苛々する。こんなにリア充が鬱陶しいものだとは思わなかったな。
昼休みにまた二人連れ立って出ていく十一夜君と桐島さんに、性懲りもなく友紀ちゃんが尾行しようと言い出した。そんなことをしたって無駄なことだと分かりきっていたはずなのに、苛々が募っていたわたしもついつい友紀ちゃんの提案に乗っかってしまった。
教室を出ようとしたところで、タイミング悪く渡瀬先輩が待ち構えていた。
「華名咲さん、よかったら昼、一緒にどうかな。明日のライブのこととか、ちょっと話しておきたいし」
「あ、先輩……今ちょ」
今ちょっと都合が悪いからと断ろうとしたところで、目の色を変えた友紀ちゃんが割って入ってきた。
「先輩! ピンデスの渡瀬先輩ですよね! わたしファンなんです! 明日のライブ行きます!」
こんな具合にグイグイ渡瀬先輩に迫っている。
おい、十一夜君の尾行はどうなった。自分が言いだしたことなのにさあ。
「あ、あぁ。そうなんだ。あ、ありがとう」
先輩も友紀ちゃんの圧に押され気味だ。
「わたし、夏葉ちゃんの友達なんです! よ、よかったら、あの……お昼、わたしもご一緒させていただけませんか!」
はぁ? 十一夜君はどうするんだよ。あの美少女とどこで何をやってるんだか確認しないと、授業にもろくに身が入らないとか言ってたくせに。
「え? あ、うん。勿論。じゃあ一緒に食べるかい?」
「うわぁー、ホントですか? 是非っ」
十一夜君を尾行するはずが、何と渡瀬先輩のバンドの熱狂的なファンである友紀ちゃんの手のひら返しによって、渡瀬先輩と一緒に昼ごはんという運びになった。
なし崩し的に楓ちゃんも付き合わされることになり、結果、渡瀬先輩は美女三人に囲まれて文字通り美味しい昼ごはんと相成ったわけだ。
「何か食べたいものある?」
「ピンデスの話が聞けるなら何でもいいです!」
友紀ちゃんの一言に誰も意見できる雰囲気ではなかったのだが、先輩のお薦めの店ということで来たのは、わたしたちもお気に入りのピーターラビットだった。ここならわたしたちもよく利用するし、文句はない。
席に着いて、メニューを眺めながら何にしようかと考えている間も、友紀ちゃんだけは先輩を見ながら終始ニヤニヤが止まらない様子だ。さっさと注文を選べ。
すっかり興奮気味で前のめりに渡瀬先輩を質問攻めにしている友紀ちゃんに少々呆れながら、ふと顔を上げると、テーブル越しに何と十一夜君と桐島さんがいるじゃないか。
奇遇にも、同じ店に来ていたのか。この店はそもそも、十一夜君がここで食べてみたいと言ってわたしの奢りで来たのが最初だ。そんな店に彼女を連れてくるとは何となく癪に障る。
別にそんなの十一夜君の自由だ。だけど、何だか癪だ。
あんな美少女とイチャコラしやがって。鼻の下伸びてるんじゃないのか、コンチクショーめ。
……って、ん? これはリア充に対するDTの嫉妬か? 未だ残っている男の部分が、桐島さんみたいな美少女を彼女にしているリア充に対して嫉妬の炎を燃やしていると、そういうことなのかな?
女になっても未だ衰えを知らぬとは、恐るべしDTパワーかな。主に負の力において。
「ごめん。何かやっぱりまだ本調子じゃないみたい。ちょっと具合悪いから教室に戻るね」
DTの嫉妬かと思うとみっともない限りだが、美少女と楽しそうにランチを共にしている十一夜君を見ていると、何だか苛々して気分が悪いので、体調のせいにしてこの場を去ることにした。DTの負のパワー舐めんなよ。
心配してくれる友紀ちゃんや楓ちゃんと、どことなくがっかりしている風に見える渡瀬先輩を尻目に、早卒と不愉快なその場を立ち去った。
教室に戻ってもどうせ誰もいないし、先日のお礼も兼ねて保健室に立ち寄ることにして、手土産にピーターラビットの焼き菓子を買った。
保健室に来ると、養護の先生が独りでカップ麺を啜っていた。女子力低そうだな、先生。
「あら、いらっしゃい。まだ体調悪いの?」
「あ、いえ。この前はお世話になったのでお礼に。よかったらこれ」
買ってきたピーターラビットの焼き菓子を手渡す。
「あら、若いのに気が利くわね。座って。お茶を入れるから一緒に食べましょうよ」
「あ、そうですか。それじゃ、お言葉に甘えて」
「ほら、そこの君も。少しは元気出たでしょ。一緒にいただきましょ」
養護の先生がそう言ってベッドの方に声を掛けると、出てきたのは何と今日転校してきたばかりの黛君だった。
「あれ、黛君だよね、今日転校してきた」
「あら、華名咲さんと同じクラスなの?」
「ああ、どうも」
まだ個人的には挨拶もしていなかったから、黛君の方はわたしのことを認識していないかもしれない。
「あ、わたし同じクラスの華名咲夏葉です。どうぞよろしくね。因みに五組に見た目が同じ子がいるんだけど、そっちは従姉妹。両親が双子同士だからそっくりになっちゃったみたい」
「華名咲さん……よろしく。黛孝太郎です」
まぁ、朝自己紹介してたから知ってるけど。
「黛君、具合悪いの?」
「あぁ、まだ体が馴染まないっていうか……時差ボケの一種というか……」
「そうかそうか、スイスから来たんだもんね。時差結構あるよね。日本にはいつ戻ったの?」
「三日前かな」
「三日前かぁ、時差ボケ治るのにちょっと時間掛かってる感じかな」
三日前と言えば、ちょうどわたしが体調を崩した日だ。
「黛君。華名咲さん美人でしょ。オススメ物件よ。今フリーらしいし」
「先生、余計なお世話ですから。わたしは誰とも付き合う気ないですし」
「はいはい。勿体ないなぁ、もう。わたしがあなたの若さでその美貌だったらとっかえひっかえだったのに……残念。さ、お茶どうぞ。食べましょ」
く、エッチな養護教員とか男子生徒の夢の体現じゃないか。いや別にエッチと決まったわけじゃないけど。
それからお茶とお菓子をいただきながら、これと言って内容のある話もなく昼休みの終わりが近づいて教室に戻った。
偶々、わたしが黛君と一緒に教室に戻ってきたものだから、また教室がちょっとざわついた。
十一夜君はすでに教室に戻っていて、いつものように突っ伏して寝ていた。
友紀ちゃんと楓ちゃんは、わたしと黛君が一緒だったことに驚いたのか、また二人して顔を見合わせている。
「ちょっとちょっと。どういうことよ、夏葉ちゃん? 転校生と一緒だったわけ?」
楓ちゃんが近付いてきて、そう訊いてくる。
「あぁ、保健室に行ったら彼もいたんだよ。昼休み終わるから一緒に戻ってきただけだけど?」
「そうだったんだ。彼のこと諦めちゃったのかと思ったよ……」
そう言いながら楓ちゃんが十一夜君の方を見やる。
十一夜君は我関せずと言った風情で寝ている。しれっとしちゃって。
「は? 別に十一夜君は関係ないし」
苛っと来て思わず口調が刺々しくなってしまう。
すると十一夜君がムクリと起きた。
「何?」
しまった、聞こえてしまったようだ。
「別に。何でもないし」
「そうか」
十一夜君は一言言うとまた伏せてしまう。くぅ~~~っ、何この態度。リアクション薄っ。何か腹立つんだよな。
と、そこに視線を感じて振り向くと、何と桐島さんが入口のところで仁王立ちしてこちらを睨みつけているではないか。
な、何だよ。こっち見んな。って言うかこっち来るなよ、怖いから。
「ちょっと。あなた十一夜君に馴れ馴れしくし過ぎじゃない? そういうの目障りだからやめていただけるかしら」
おっと、漫画みたいな高飛車キャラ来たーーーっ。
「は? 面白いじゃないの。あなたこそどういうつもりよ!」
わたしが呆気にとられてぽかんとしていたら、友紀ちゃんが桐島さんに食って掛かっている。やめろやめろ。こんなのでも十一夜君の彼女さんなんだろ。
腹立つけど取り合わない方がいいよ。
「あら、どうかしまして? わたしは当然の権利を主張したまでですので、部外者はお黙りになって」
「ぶ、部外者ですって? ぽっと出のあなたなんかに部外者呼ばわりされるなんて心外だわ」
あ、やばいやばい。喧嘩になりかけてる。
「ちょっと、友紀ちゃん。やめなよ」
ここで十一夜君も漸く喧騒で目が覚めたのか、再び起き上がり桐島さんに気付いたようだ。
「あ、瞳子さんか。どうした?」
「ううん、ちょっとこの子たちに用があっただけ。もう用は済んだわ」
「そうか」
そしてまた十一夜君は寝てしまう。どんだけ眠いんだよ。
て言うか瞳子さん? もう下の名前で呼んでいるのかよ。わたしなんて未だに華名咲さん呼ばわりだよ。
桐島さんは勝ち誇るような目線をくれて自分の教室に戻っていった。
「か、夏葉ちゃん……眉間に皺が寄ってる……」
「へ?」
慌てて両指で眉間の皺を伸ばすが、あの高飛車女の態度にも、十一夜君の態度にも苛々は募る一方。
普通、友達には彼女できたことくらい報告するだろう? それなのに十一夜君と来たら何だよ。あんまりじゃないか。
何が、『あ、瞳子さんか』だよ、バーカ。イチャコラしやがって。
大体事件の調査はどうした。十一夜家の総力上げるんじゃなかったのか?
そんなときに色恋沙汰なんて余裕かましやがってコンチキショーめ。
「夏葉ちゃん、眉間……」
「え? あ、はいはい」
結局この日も十一夜君との友人関係を取り戻すことができなかった。
そしてわたしの眉間の皺も戻らなかった。
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