14 / 15
十三話
しおりを挟む
アーノルド邸の庭は広くそして緑豊かだ。丁寧に刈られた芝生を足で踏みしめながらガーデニングに目を向ける。立ち寄った者が腰をかけるためのベンチにガーデン・ノームと呼ばれる人形が何体か並べられ、つるバラのアーチが彩やかに仕立てられている。建物自体は古いがこういった細かい物に関してはかなり手入れが行き届いているようだ。
「この庭は専属の庭師に任せてるんですよ」
「それは、凄いですね」
庭師の腕がいいんだろう。素人目に見てもこの庭は手が凝っていることが一目瞭然だった。
「もう老父なんですけどね。跡取りが早く欲しいってよく騒いでます」
そんなたわいもない話しにどう返事しようか考えていた時、耳に大きな罵声が飛び込んできた。
「このど阿呆!! 何度言ったら分かるんだよ、俺らは庭師なんだから目立たせるのは庭にしろって言ってるだろうが!!!! どうしてお前さんの方が派手な髪の毛にしてんだ」
「自分をデコることで創作意欲が湧いてくるんです!! 最高の庭を造るにはまず最高の自分をつくらないと」
「鏡みて来いこのウスラトンカチ! どこが最高だ、どう見ても鶏のトサカじゃねぇか!!」
「ひでぇ!? ファッションの最先端なのに~」
「お前さんの時代は永遠に来ねぇよ!!」
驚いて思わずケイトさんの方を見た。彼は呆れた様子で頭を抱えている。
「あの、あれは」
「さっき言ったうちの専属庭師.......とその弟子」
騒ぎの中心にいるのは白髪のおじいさんと真っ赤な髪を逆立てている少年だった。歳は俺と同じかそれより下。よく日に焼けた肌と髪の色とミスマッチなエメラルドの瞳。
「パーカーさん、そこまでにしてあげて下さいな」
止めに入ったケイトさんの姿でようやく俺たちの存在に気づいたらしいおじいさんが気まずそうにこちらを見た。
「あぁケイトさん。お恥ずかしい所を見られてしまいましたのぉ」
「いえ、気にしてませんよいつもの事ですから」
ボソリととんでもないことを呟くケイトさん。この激しいやり取りがいつもなのか。
「なぁなぁケイトさんそいつ誰?」
俺の方を指差してきた少年(その指を失礼だとおじいさんに叩かれた)。
「今日からうちで働いて貰うノアくんです」
「ノア・カーライトと申します。仕事自体が初めてで至らない点だらけだと思いますがどうか宜しくお願いします」
頭を下げるとふいにおじいさんからわしゃわしゃと撫でられた。
「いい子だ、この子いい子だ~こういう子が欲しかったんだよなぁ」
「爺ちゃんにはオレがいるじゃん!!」
「そんな髪の弟子は知らんっ」
「えぇ!?」
このやり取りなんか楽しそうだなぁ。そういえば俺の正体が元敵国の人間だって知られてないのか? バレたらきっと話しかけてなんて貰えないよな。
「何暗い顔してんの? あっ、オレはレオナルド・パーカー!! こっちの爺ちゃんがオレの師匠のボンズ爺ちゃん。オレのことはレオでいいよ~オレもノアって呼ぶし」
「馴れ馴れしい奴だなお前。ボンズだ、よろしくなノアくん」
「爺ちゃん人の事言えなくない!?」
「そろそろ落ち着いてくださいよ二人とも。ノアくん困ってますよ」
「いえそんな.......えっとレオとボンズさん?」
レオは愛称呼びなんてして大丈夫か? 俺が戦場でどうやって生きてきたか知ったら離れていくのに。俺の心配は他所にレオとボンズさんは口角をこれでもかと言うくらい上げて笑いかけてくれた。
「よろしくな、ノア。ところでお前って歳いくつ? 歳上は敬うべきなんだぜ少年~」
「十八だけど」
「何だレオの三つも上か。それにしては小柄だな、ちゃんと食べてるのか?」
うっ気にしてる所を突かれた。三つも年下のはずのレオと背丈が変わらないのは自分でも情けなく思えてくる。
「ノアくんはこれからが成長期なんですよ! ね、ノアくん?」
ケイトさん.......フォローまでしてくれて本当に優しい人だ。
「まぁノアが伸びだ倍オレも成長するけどな!!」
「お前はまずデリカシーを育てろこの馬鹿!!」
「この庭は専属の庭師に任せてるんですよ」
「それは、凄いですね」
庭師の腕がいいんだろう。素人目に見てもこの庭は手が凝っていることが一目瞭然だった。
「もう老父なんですけどね。跡取りが早く欲しいってよく騒いでます」
そんなたわいもない話しにどう返事しようか考えていた時、耳に大きな罵声が飛び込んできた。
「このど阿呆!! 何度言ったら分かるんだよ、俺らは庭師なんだから目立たせるのは庭にしろって言ってるだろうが!!!! どうしてお前さんの方が派手な髪の毛にしてんだ」
「自分をデコることで創作意欲が湧いてくるんです!! 最高の庭を造るにはまず最高の自分をつくらないと」
「鏡みて来いこのウスラトンカチ! どこが最高だ、どう見ても鶏のトサカじゃねぇか!!」
「ひでぇ!? ファッションの最先端なのに~」
「お前さんの時代は永遠に来ねぇよ!!」
驚いて思わずケイトさんの方を見た。彼は呆れた様子で頭を抱えている。
「あの、あれは」
「さっき言ったうちの専属庭師.......とその弟子」
騒ぎの中心にいるのは白髪のおじいさんと真っ赤な髪を逆立てている少年だった。歳は俺と同じかそれより下。よく日に焼けた肌と髪の色とミスマッチなエメラルドの瞳。
「パーカーさん、そこまでにしてあげて下さいな」
止めに入ったケイトさんの姿でようやく俺たちの存在に気づいたらしいおじいさんが気まずそうにこちらを見た。
「あぁケイトさん。お恥ずかしい所を見られてしまいましたのぉ」
「いえ、気にしてませんよいつもの事ですから」
ボソリととんでもないことを呟くケイトさん。この激しいやり取りがいつもなのか。
「なぁなぁケイトさんそいつ誰?」
俺の方を指差してきた少年(その指を失礼だとおじいさんに叩かれた)。
「今日からうちで働いて貰うノアくんです」
「ノア・カーライトと申します。仕事自体が初めてで至らない点だらけだと思いますがどうか宜しくお願いします」
頭を下げるとふいにおじいさんからわしゃわしゃと撫でられた。
「いい子だ、この子いい子だ~こういう子が欲しかったんだよなぁ」
「爺ちゃんにはオレがいるじゃん!!」
「そんな髪の弟子は知らんっ」
「えぇ!?」
このやり取りなんか楽しそうだなぁ。そういえば俺の正体が元敵国の人間だって知られてないのか? バレたらきっと話しかけてなんて貰えないよな。
「何暗い顔してんの? あっ、オレはレオナルド・パーカー!! こっちの爺ちゃんがオレの師匠のボンズ爺ちゃん。オレのことはレオでいいよ~オレもノアって呼ぶし」
「馴れ馴れしい奴だなお前。ボンズだ、よろしくなノアくん」
「爺ちゃん人の事言えなくない!?」
「そろそろ落ち着いてくださいよ二人とも。ノアくん困ってますよ」
「いえそんな.......えっとレオとボンズさん?」
レオは愛称呼びなんてして大丈夫か? 俺が戦場でどうやって生きてきたか知ったら離れていくのに。俺の心配は他所にレオとボンズさんは口角をこれでもかと言うくらい上げて笑いかけてくれた。
「よろしくな、ノア。ところでお前って歳いくつ? 歳上は敬うべきなんだぜ少年~」
「十八だけど」
「何だレオの三つも上か。それにしては小柄だな、ちゃんと食べてるのか?」
うっ気にしてる所を突かれた。三つも年下のはずのレオと背丈が変わらないのは自分でも情けなく思えてくる。
「ノアくんはこれからが成長期なんですよ! ね、ノアくん?」
ケイトさん.......フォローまでしてくれて本当に優しい人だ。
「まぁノアが伸びだ倍オレも成長するけどな!!」
「お前はまずデリカシーを育てろこの馬鹿!!」
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!


ツンデレ貴族さま、俺はただの平民です。
夜のトラフグ
BL
シエル・クラウザーはとある事情から、大貴族の主催するパーティーに出席していた。とはいえ歴史ある貴族や有名な豪商ばかりのパーティーは、ただの平民にすぎないシエルにとって居心地が悪い。
しかしそんなとき、ふいに視界に見覚えのある顔が見えた。
(……あれは……アステオ公子?)
シエルが通う学園の、鼻持ちならないクラスメイト。普段はシエルが学園で数少ない平民であることを馬鹿にしてくるやつだが、何だか今日は様子がおかしい。
(………具合が、悪いのか?)
見かねて手を貸したシエル。すると翌日から、その大貴族がなにかと付きまとってくるようになってーー。
魔法の得意な平民×ツンデレ貴族
※同名義でムーンライトノベルズ様でも後追い更新をしています。

使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。


楓の散る前に。
星未めう
BL
病弱な僕と働き者の弟。でも、血は繋がってない。
甘やかしたい、甘やかされてはいけない。
1人にしたくない、1人にならなくちゃいけない。
愛したい、愛されてはいけない。
はじめまして、星見めうと申します。普段は二次創作で活動しておりますが、このたび一次創作を始めるにあたってこちらのサイトを使用させていただくことになりました。話の中に体調不良表現が多く含まれます。嘔吐等も出てくると思うので苦手な方はプラウザバックよろしくお願いします。
ゆっくりゆるゆる更新になるかと思われます。ちょくちょくネタ等呟くかもしれないTwitterを貼っておきます。
星見めう https://twitter.com/hoshimimeu_00
普段は二次垢におりますのでもしご興味がありましたらその垢にリンクあります。
お気に入り、しおり、感想等ありがとうございます!ゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡

アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる