6 / 13
社畜とSTKの半年間⑴
しおりを挟む
時間は半年前まで遡る。
当時俺は大学時代から付き合っていた彼女に振られ意気消沈中だった。
「私と仕事、どっちが大事なのよ!!」
ドラマにありがちな台詞を吐かれつい口が滑ってしまったのだ。
「.......分からない」
「っ!!」
激昴した彼女に水を浴びせられたことまでは覚えている。
「貴方のそういう所我慢できないの、別れましょう」
店を出て走り去っていく彼女を追いかけることも出来ず、俺は意気地無しだ。
分からないと答えたのは本心からだった。彼女は大事だ、大事にしたいと思っていた。対して仕事は俺にとって生きる為でしかなく好きか嫌いかで言われれば嫌いに当てはまるようなもの。そんなのと大事な彼女を比べた事がなくて「分からない」なんて口走ってしまった。結果その大事な彼女を傷つけたのだから本当に世話ないよな。
水浸しにしてしまった事を店員に詫びて、ふらふらと居酒屋を転々とし酔えるだけ酔って忘れようとした。そこから記憶が曖昧なんだ、浅木が俺を見かけたと言ったのは恐らくこの日の事だろう。だってそれ以来酒飲んでないからな。
ストーキングされていると気づいたのはそれから少し経った後だ。最初はやけに視線を感じる、ぐらいの違和感だった。それでも俺は「疲れてんのかな?」「うつ症状かもしれない」みたいに悩んでもストーカーだなんて思いもしていなかった。
次に気づくきっかけになったのは自宅宛に届けられた公共料金の支払いが知らない間に済まされていた事だ。いつまで経っても届かない水道代やガス代の請求を不審に思って問い合せたところ「支払い済みですね」だとか。
俺はまず自身の記憶障害を疑った。ストレスで頭がイカれたのかもしれない。病院で診察して本当にそうだったら会社休めるな~なんて呑気に考えていたっけ。
結果、身体のどこにも異常は見られなかった。(栄養失調気味だと医師に注意されたぐらいだ)
決定打になったのは夜中に帰宅してきたら汚部屋だった自宅が綺麗に掃除されていた事。部屋を間違えたと慌てて表札を確認して目を丸くした、あれここ俺の家じゃねぇかって。
「それストーカーですよ」
後輩の宮本にありのまま相談するとそう告げられた。ストーカー、実感がわかなくて言葉だけが耳をすぎていく。
「俺にストーカーね~」
絶対趣味悪いなそいつ。
「警察に通報した方がいいですよ。このご時世何かと物騒なんですから」
「面倒臭い」
「またそんな事言って.......」
だが実際今の俺にそんな時間と余裕はない。
「それに被害届け出すにも被害が出てないしな」
部屋を片っ端から確認したが盗まれているものはおろか、冷蔵庫には新しい食材が置かれていたぐらいだ。ストーカーは部屋を丁寧に掃除した後俺の食生活改善を試みて買い足してくれたらしい。
「他人が勝手に部屋入ってるなんて気持ち悪いくないんですか?」
「気持ち悪いよそりゃ」
それよりもあの汚部屋に足を踏み入れるスペースが出来た感動の方がやや大きかっただけ。
「ストーカーにしては家庭力高いよな、尊敬する」
「反応間違ってると思います、危ない目に合ってからじゃ遅いんですよ!!」
当時俺は大学時代から付き合っていた彼女に振られ意気消沈中だった。
「私と仕事、どっちが大事なのよ!!」
ドラマにありがちな台詞を吐かれつい口が滑ってしまったのだ。
「.......分からない」
「っ!!」
激昴した彼女に水を浴びせられたことまでは覚えている。
「貴方のそういう所我慢できないの、別れましょう」
店を出て走り去っていく彼女を追いかけることも出来ず、俺は意気地無しだ。
分からないと答えたのは本心からだった。彼女は大事だ、大事にしたいと思っていた。対して仕事は俺にとって生きる為でしかなく好きか嫌いかで言われれば嫌いに当てはまるようなもの。そんなのと大事な彼女を比べた事がなくて「分からない」なんて口走ってしまった。結果その大事な彼女を傷つけたのだから本当に世話ないよな。
水浸しにしてしまった事を店員に詫びて、ふらふらと居酒屋を転々とし酔えるだけ酔って忘れようとした。そこから記憶が曖昧なんだ、浅木が俺を見かけたと言ったのは恐らくこの日の事だろう。だってそれ以来酒飲んでないからな。
ストーキングされていると気づいたのはそれから少し経った後だ。最初はやけに視線を感じる、ぐらいの違和感だった。それでも俺は「疲れてんのかな?」「うつ症状かもしれない」みたいに悩んでもストーカーだなんて思いもしていなかった。
次に気づくきっかけになったのは自宅宛に届けられた公共料金の支払いが知らない間に済まされていた事だ。いつまで経っても届かない水道代やガス代の請求を不審に思って問い合せたところ「支払い済みですね」だとか。
俺はまず自身の記憶障害を疑った。ストレスで頭がイカれたのかもしれない。病院で診察して本当にそうだったら会社休めるな~なんて呑気に考えていたっけ。
結果、身体のどこにも異常は見られなかった。(栄養失調気味だと医師に注意されたぐらいだ)
決定打になったのは夜中に帰宅してきたら汚部屋だった自宅が綺麗に掃除されていた事。部屋を間違えたと慌てて表札を確認して目を丸くした、あれここ俺の家じゃねぇかって。
「それストーカーですよ」
後輩の宮本にありのまま相談するとそう告げられた。ストーカー、実感がわかなくて言葉だけが耳をすぎていく。
「俺にストーカーね~」
絶対趣味悪いなそいつ。
「警察に通報した方がいいですよ。このご時世何かと物騒なんですから」
「面倒臭い」
「またそんな事言って.......」
だが実際今の俺にそんな時間と余裕はない。
「それに被害届け出すにも被害が出てないしな」
部屋を片っ端から確認したが盗まれているものはおろか、冷蔵庫には新しい食材が置かれていたぐらいだ。ストーカーは部屋を丁寧に掃除した後俺の食生活改善を試みて買い足してくれたらしい。
「他人が勝手に部屋入ってるなんて気持ち悪いくないんですか?」
「気持ち悪いよそりゃ」
それよりもあの汚部屋に足を踏み入れるスペースが出来た感動の方がやや大きかっただけ。
「ストーカーにしては家庭力高いよな、尊敬する」
「反応間違ってると思います、危ない目に合ってからじゃ遅いんですよ!!」
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる