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社畜は腹が減っている
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「お前、誰だよ」
「あっごめんね挨拶遅れちゃって、ええっとこう改めて自己紹介するの恥ずかしいな~なんて.......ちょっと咲也くん!? スマホなんか取り出して何してるの?」
「通報」
「一回、一回落ち着こうよ、ね!!」
「至極冷静な対応だろ」
「本当だ!!」
むしろお前が落ち着け。俺は男の腕を掴みあげると空いた片方の手で携帯を操作する。
「あ~もしもし警察ですか」
「そうだ! ゆ、夕食まだでしょ? お腹空いてない?」
「.......」
俺はしばらく悩んでから黙って通話を切った。
「肉じゃががいい」
「よし任せてくれ!」
今朝から何も食べてなくてお腹が空いていたのだ。
出来上がった夕食は見栄えや匂いからして食欲をそそるものだった。
「毒とか入ってないだろうな」
「どうせ入れるなら媚薬にするよ、ってそんな生ゴミを見るような目で見ないで!!」
ようなではなく実際生ゴミだと思って見てる。
男は疑わしい所だらけだが目の前に用意された料理には何の罪もない、それに美味しそ.......げふんげふん。
手を合わせてからゆっくりと頬張っていく。味が染みていて肉汁が口の中に広がった。
「.......美味い」
「良かった~おかわりあるから沢山食べてね」
俺は目の前の男と皿に盛り付けられた料理を見比べる。そして肩を落とした。
「信じたくないがやっぱりお前がスト子さんなんだな」
「スト子?」
「ストーカーさんのあだ名だ。俺がつけた」
まさか男だなんて思ってもいなかったからな。だがこの肉じゃがの味は紛れもないスト子さんのものだ、いつも俺の朝食やお弁当を用意してくれていた聖母のような~。
「はぁ」
「そんなあからさまにガッカリされると流石に凹むんだけど」
「世の中知らなくていいことってあるんだな」
「その台詞の使い所今じゃないと思うよ。あっ、ほらちゃんと噛んで食べないと駄目じゃないか」
「お前は俺の母親か」
「ストーカーだよ」
そうだったな。現実に思考が追いつかなくて遠くを見つめてしまう。にしても美味いなこの肉じゃが。
「これ食ったら通報するから逃げるなよ」
「あっ一応まだ通報する気はあったんだね。忘れてるのかと思ってた」
誰が忘れるか、食欲を満たす為に一時休戦しただけだ。
「そういやお前は食べないのか?」
俺だけこんな美味い料理ご馳走になって(俺の家で俺の冷蔵庫にいつの間にか入ってた食材だけど)いいのかよ。
「うん、僕は君を見てるだけでお腹いっぱいだからね」
語尾にハートが付きそうな甘ったるい口調。
「.......」
「もしかしてときめいた?」
俺は服の裾をめくって腕を見せてやった。
「鳥肌凄いね」
「お前、気持ち悪いにも程があるだろ」
どうしてこんな奴が俺のストーカーなんだふざけるな。
「もっと可愛い子が良かった! いやこの際顔はどうだっていい、胸の大きな子がよかった!!」
「咲也くん結構むっつりだよね、そういう所も好き」
男に囁かれても嬉しかねぇんだよ馬鹿野郎。
「本当勘弁してくれ.......ご馳走でした」
「お粗末さまでした」
俺が平らげた器を愛おしげに見つめているストーカー男。
「取り敢えず身分証明書提示しろ」
「僕に興味が湧いたの?」
「違ぇよ!!」
頭の中お花畑かよ、しかも何でちょっと顔赤くしてんだこいつ。
「そんな余裕ぶってられるのも今のうちだからな」
「冷蔵庫にプリン買ってあるよ。咲也くん甘いもの好きでしょ?」
「気配り上手アピールすんじゃねぇよストーカーのくせに!! プッチン出来るやつなんだろうな!?」
「君のそういう所心底好き」
プリンはプッチン出来るやつだった。ストーカーのくせに中々やるじゃないか。
「あっごめんね挨拶遅れちゃって、ええっとこう改めて自己紹介するの恥ずかしいな~なんて.......ちょっと咲也くん!? スマホなんか取り出して何してるの?」
「通報」
「一回、一回落ち着こうよ、ね!!」
「至極冷静な対応だろ」
「本当だ!!」
むしろお前が落ち着け。俺は男の腕を掴みあげると空いた片方の手で携帯を操作する。
「あ~もしもし警察ですか」
「そうだ! ゆ、夕食まだでしょ? お腹空いてない?」
「.......」
俺はしばらく悩んでから黙って通話を切った。
「肉じゃががいい」
「よし任せてくれ!」
今朝から何も食べてなくてお腹が空いていたのだ。
出来上がった夕食は見栄えや匂いからして食欲をそそるものだった。
「毒とか入ってないだろうな」
「どうせ入れるなら媚薬にするよ、ってそんな生ゴミを見るような目で見ないで!!」
ようなではなく実際生ゴミだと思って見てる。
男は疑わしい所だらけだが目の前に用意された料理には何の罪もない、それに美味しそ.......げふんげふん。
手を合わせてからゆっくりと頬張っていく。味が染みていて肉汁が口の中に広がった。
「.......美味い」
「良かった~おかわりあるから沢山食べてね」
俺は目の前の男と皿に盛り付けられた料理を見比べる。そして肩を落とした。
「信じたくないがやっぱりお前がスト子さんなんだな」
「スト子?」
「ストーカーさんのあだ名だ。俺がつけた」
まさか男だなんて思ってもいなかったからな。だがこの肉じゃがの味は紛れもないスト子さんのものだ、いつも俺の朝食やお弁当を用意してくれていた聖母のような~。
「はぁ」
「そんなあからさまにガッカリされると流石に凹むんだけど」
「世の中知らなくていいことってあるんだな」
「その台詞の使い所今じゃないと思うよ。あっ、ほらちゃんと噛んで食べないと駄目じゃないか」
「お前は俺の母親か」
「ストーカーだよ」
そうだったな。現実に思考が追いつかなくて遠くを見つめてしまう。にしても美味いなこの肉じゃが。
「これ食ったら通報するから逃げるなよ」
「あっ一応まだ通報する気はあったんだね。忘れてるのかと思ってた」
誰が忘れるか、食欲を満たす為に一時休戦しただけだ。
「そういやお前は食べないのか?」
俺だけこんな美味い料理ご馳走になって(俺の家で俺の冷蔵庫にいつの間にか入ってた食材だけど)いいのかよ。
「うん、僕は君を見てるだけでお腹いっぱいだからね」
語尾にハートが付きそうな甘ったるい口調。
「.......」
「もしかしてときめいた?」
俺は服の裾をめくって腕を見せてやった。
「鳥肌凄いね」
「お前、気持ち悪いにも程があるだろ」
どうしてこんな奴が俺のストーカーなんだふざけるな。
「もっと可愛い子が良かった! いやこの際顔はどうだっていい、胸の大きな子がよかった!!」
「咲也くん結構むっつりだよね、そういう所も好き」
男に囁かれても嬉しかねぇんだよ馬鹿野郎。
「本当勘弁してくれ.......ご馳走でした」
「お粗末さまでした」
俺が平らげた器を愛おしげに見つめているストーカー男。
「取り敢えず身分証明書提示しろ」
「僕に興味が湧いたの?」
「違ぇよ!!」
頭の中お花畑かよ、しかも何でちょっと顔赤くしてんだこいつ。
「そんな余裕ぶってられるのも今のうちだからな」
「冷蔵庫にプリン買ってあるよ。咲也くん甘いもの好きでしょ?」
「気配り上手アピールすんじゃねぇよストーカーのくせに!! プッチン出来るやつなんだろうな!?」
「君のそういう所心底好き」
プリンはプッチン出来るやつだった。ストーカーのくせに中々やるじゃないか。
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