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悪役令嬢の居ぬ間に
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アイリーン・ベーカー八歳の誕生日が迫っている。
「そんなわけで今日集まってもらったのは他でもない、アイリーンのサプライズバースデーパーティを開こうと思うんだけど、協力してくれるよね?」
僕が呼んだのはクロードにレベッカ嬢、ブラウンくんとカイスくんだ。ブラウンくんの後ろにはあの有名な魔法学の天才児ハワード・ランドルフもいる。何でも以前アイリーンに助けられたから是非祝い事に参加したいと申し出てくれた。
「アイリーンの為にこんなにも沢山集まってくれるなんて.......皆、頑張ろうね!!」
「いいから話を進めろ」
クロードはせっかちだな~。
「あ、あの」
「はい何かなブラウンくん」
「俺今までアイリーンの誕生日祝ったことないんですけど、もしかして呼ばれなかっただけですか? だったらすげぇ悲しいなって」
うっ、非常に痛い所をつかれた。
「俺もないな」
「ワタシも.......」
「ボクもないんやけど」
カイスくんやハワードさんが無いのは当然だ。彼らは知り合ってから日が浅い。けれどクロードにレベッカ、そしてブラウンくんには言わなければいけないだろう真実を。
「実はアイリーンの誕生日会を開くこと自体今回が初めてなんだよ」
「は!?」
まずクロードが叫んだ。次にレベッカが小首を傾げブラウンくんなんて目を点にしている。
「勿論僕個人で彼女の誕生日を祝ったことはある、けどアイリーンはあまり自分の為に人を集めたりそういう派手な催し好きじゃないみたいなんだ」
アイリーン本人に直接「誕生日パーティ開かない?」と聞いたことがある。彼女は即座に首を振って「祝われるような立場じゃないので」なんて悲しいことを口にした。僕の誕生日はいつも誰よりも喜んで参加してくれるのに自分のは開きもしないなんて.......だからサプライズで開いてしまおうという発想に行きついた。流石のアイリーンも開かれてしまってから文句を言うなんて野暮なことはしないだろうしね!
「だから今回のパーティはアイリーンと仲のいい君達だけを誘ったんだ」
「へぇ~それやったら納得やな」
カイスくんは仲のいいという言葉に反応したのかとても嬉しそうに頷いている。
「そういえばアイリーンは今何をしてるんですか? この面子が集まってるのに居ない方が不自然な気が」
「アイリーンはお父様に連れ出して貰ってるよ」
お父様にはサプライズのことを伝えているからきっと気を配ってくれたんだろう。今頃二人仲良くお出かけしてるはずだ。
「.......アイザック、お前は時々人の地雷の上でタップダンス踊るよな」
「場所はどうする?」
ハワードさんが僕を見ながら話を進める。
「僕の家は?」
「絶対お嬢にバレるぞ」
「リリアン様のこともあるだろうしベーカー家はやめた方がいいだろうな」
うっ、確かにお母様が知ったらあまりいい顔しないよね。でも折角だから家族皆で祝いたかったな~。
「それならギルバート家が適任だな」
「せんせーの言う通り!! アイリーンは俺の婚約者でもあるんだから祝うなら我が家が一番」
「ちょっと待てや」
当たり前のように先へ進めようとするブラウンくんをカイスが止めに入った。
「何だ童、邪魔するな」
「あんたやってガキやん。ギルバート家よりワイアット家の方が絶対ええもんぎょうさん出せるで? アイリーンの好きな魚とか肉とかお茶とか何でもござれや」
カイスくんはアイリーンと打ち解けて以来彼女やその周りには方言を隠さなくなったらしい。レベッカに言わせればギャップ? が凄いとか何とか。
「俺の家の方が凄い!!」
「ボクの家来た方がアイリーン喜ぶし!!」
「まぁ落ち着け」
流石親友のクロード、こんな時争いが起きないよう真っ先に仲介に入ってくれる。
「そうですよブラウン様、カイス様、御二方の家はそもそも遠いじゃないですか! ワタシたちダミアン家が適当だと思いますけど?」
あれ? レベッカさん? 何で火に油を.......。心なしかクロードも首を縦に振っている。
「ギルバート家!!」
「ワイアット家や!!」
「ダミアン、ダミアン!!」
「ちょっと皆一回落ち着こうよ」
話が前に進まない所の問題じゃない。こんな時冷静な意見を述べるアイリーンがいれば。
「アイリーンの為になるよう皆で考えようよ、決まらないならジャンケンにする?」
「いや、ワイアット家にすべきだな」
先程から考え込む仕草を見せていたハワードさんが顔を上げた。
「せんせー!? う、裏切り者っ!!」
「おいいくら天才児でも聞き捨てならないな」
「そうですわ!! だいたいワイアット家はこの中じゃ一番田舎」
「流れ弾みたくディスんなや」
「馬鹿野郎、少しは頭を捻れクソガキ共」
ハワードさんって聞いていたよりお口が悪い気が.......。
ハワードさんは胸を張って答えた。
「ワイアット家はここから一番遠い、つまりパーティ当日は泊まりになる可能性が高いってことだ」
お泊まり!!
その素敵なワードが僕ら子供たちの目を輝かせた。どれだけ楽しくても帰る時間が迫ってきてしまうあの悲しさ、楽しい時はあっという間に過ぎてしまう世の摂理を嘆いた経験は子供なら誰だってあるだろう。そんな悲しみを打ち砕いてくれるのがお泊まりだ。アイリーンを祝い騒いだ後皆と仲良く楽しく夜を過ごせる!!
「採用」
「素晴らしい案ですわね」
「流石せんせー」
「天才児の評判は伊達じゃないってことやな」
「おみそれしました」
口々にハワードさんへ賛辞を並べ立てる。ハワードさんは満更でもない様子で胸を反らした。
「よし、場所はワイアット家に決定だな」
「そんなわけで今日集まってもらったのは他でもない、アイリーンのサプライズバースデーパーティを開こうと思うんだけど、協力してくれるよね?」
僕が呼んだのはクロードにレベッカ嬢、ブラウンくんとカイスくんだ。ブラウンくんの後ろにはあの有名な魔法学の天才児ハワード・ランドルフもいる。何でも以前アイリーンに助けられたから是非祝い事に参加したいと申し出てくれた。
「アイリーンの為にこんなにも沢山集まってくれるなんて.......皆、頑張ろうね!!」
「いいから話を進めろ」
クロードはせっかちだな~。
「あ、あの」
「はい何かなブラウンくん」
「俺今までアイリーンの誕生日祝ったことないんですけど、もしかして呼ばれなかっただけですか? だったらすげぇ悲しいなって」
うっ、非常に痛い所をつかれた。
「俺もないな」
「ワタシも.......」
「ボクもないんやけど」
カイスくんやハワードさんが無いのは当然だ。彼らは知り合ってから日が浅い。けれどクロードにレベッカ、そしてブラウンくんには言わなければいけないだろう真実を。
「実はアイリーンの誕生日会を開くこと自体今回が初めてなんだよ」
「は!?」
まずクロードが叫んだ。次にレベッカが小首を傾げブラウンくんなんて目を点にしている。
「勿論僕個人で彼女の誕生日を祝ったことはある、けどアイリーンはあまり自分の為に人を集めたりそういう派手な催し好きじゃないみたいなんだ」
アイリーン本人に直接「誕生日パーティ開かない?」と聞いたことがある。彼女は即座に首を振って「祝われるような立場じゃないので」なんて悲しいことを口にした。僕の誕生日はいつも誰よりも喜んで参加してくれるのに自分のは開きもしないなんて.......だからサプライズで開いてしまおうという発想に行きついた。流石のアイリーンも開かれてしまってから文句を言うなんて野暮なことはしないだろうしね!
「だから今回のパーティはアイリーンと仲のいい君達だけを誘ったんだ」
「へぇ~それやったら納得やな」
カイスくんは仲のいいという言葉に反応したのかとても嬉しそうに頷いている。
「そういえばアイリーンは今何をしてるんですか? この面子が集まってるのに居ない方が不自然な気が」
「アイリーンはお父様に連れ出して貰ってるよ」
お父様にはサプライズのことを伝えているからきっと気を配ってくれたんだろう。今頃二人仲良くお出かけしてるはずだ。
「.......アイザック、お前は時々人の地雷の上でタップダンス踊るよな」
「場所はどうする?」
ハワードさんが僕を見ながら話を進める。
「僕の家は?」
「絶対お嬢にバレるぞ」
「リリアン様のこともあるだろうしベーカー家はやめた方がいいだろうな」
うっ、確かにお母様が知ったらあまりいい顔しないよね。でも折角だから家族皆で祝いたかったな~。
「それならギルバート家が適任だな」
「せんせーの言う通り!! アイリーンは俺の婚約者でもあるんだから祝うなら我が家が一番」
「ちょっと待てや」
当たり前のように先へ進めようとするブラウンくんをカイスが止めに入った。
「何だ童、邪魔するな」
「あんたやってガキやん。ギルバート家よりワイアット家の方が絶対ええもんぎょうさん出せるで? アイリーンの好きな魚とか肉とかお茶とか何でもござれや」
カイスくんはアイリーンと打ち解けて以来彼女やその周りには方言を隠さなくなったらしい。レベッカに言わせればギャップ? が凄いとか何とか。
「俺の家の方が凄い!!」
「ボクの家来た方がアイリーン喜ぶし!!」
「まぁ落ち着け」
流石親友のクロード、こんな時争いが起きないよう真っ先に仲介に入ってくれる。
「そうですよブラウン様、カイス様、御二方の家はそもそも遠いじゃないですか! ワタシたちダミアン家が適当だと思いますけど?」
あれ? レベッカさん? 何で火に油を.......。心なしかクロードも首を縦に振っている。
「ギルバート家!!」
「ワイアット家や!!」
「ダミアン、ダミアン!!」
「ちょっと皆一回落ち着こうよ」
話が前に進まない所の問題じゃない。こんな時冷静な意見を述べるアイリーンがいれば。
「アイリーンの為になるよう皆で考えようよ、決まらないならジャンケンにする?」
「いや、ワイアット家にすべきだな」
先程から考え込む仕草を見せていたハワードさんが顔を上げた。
「せんせー!? う、裏切り者っ!!」
「おいいくら天才児でも聞き捨てならないな」
「そうですわ!! だいたいワイアット家はこの中じゃ一番田舎」
「流れ弾みたくディスんなや」
「馬鹿野郎、少しは頭を捻れクソガキ共」
ハワードさんって聞いていたよりお口が悪い気が.......。
ハワードさんは胸を張って答えた。
「ワイアット家はここから一番遠い、つまりパーティ当日は泊まりになる可能性が高いってことだ」
お泊まり!!
その素敵なワードが僕ら子供たちの目を輝かせた。どれだけ楽しくても帰る時間が迫ってきてしまうあの悲しさ、楽しい時はあっという間に過ぎてしまう世の摂理を嘆いた経験は子供なら誰だってあるだろう。そんな悲しみを打ち砕いてくれるのがお泊まりだ。アイリーンを祝い騒いだ後皆と仲良く楽しく夜を過ごせる!!
「採用」
「素晴らしい案ですわね」
「流石せんせー」
「天才児の評判は伊達じゃないってことやな」
「おみそれしました」
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「よし、場所はワイアット家に決定だな」
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