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真似っ子ファンクラブ
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私が手がけて作ったアイザック・ベーカーファンクラブ、今では会員数二桁後半を超え順調に幅をきかせている。ファンクラブなんて発想自体なかった取り巻き達に秩序と守るべきルールを与えることで牽制兼ねアイザックの負担を減らす狙いだったんだけども。
「真似された、しかもワイアット家に」
遺憾である。ドンっと机を叩き、衝動で痛めた手をさすった。
「お嬢様珍しく荒れてますね」
「物に当たらない所がまたらしいと言えばらしいですけど.......手、冷やしますか?」
「お願いします」
本当はその場でじたんだ踏んで暴れ回りたいけれど従者しかいない自室とはいえ流石にはばかれる。
「別にふぁんくらぶの一つや二つ真似されたからといって怒らなくても」
「私が怒っているのはファンクラブのことではありません、いつの時代も画期的なアイディアや先進的な思考は真似される運命ですからね」
真似自体は予想していたことだ。
「にしても早すぎる!!」
設立してからそう時間が経っていない。これでは敢えてパクリましたよと宣言されたも同然。ワイアット家が当てつけにファンクラブを真似したと捉えてまず間違いないだろう。
「当てつけとはいえうちの大事なお兄様のファンクラブを真似するとは.......絶対許さん」
「どんなふぁんよりも過激ですね」
「危ないことだけはしないで下さいね、ただでさえ最近お嬢様の評判ガタ落ちなんですから」
それは狙って落としてるから大丈夫なんだよ。
「サラはカイス様の容姿を見たことがありますか?」
真似とはいえファンクラブが出来るぐらいだ、さぞ顔立ちがいいんだろう。
「直接見たことはありませんが噂程度ならよく耳にしますよ」
「例えば?」
「髪はプラチナブロンドのくせっ毛、色は琥珀のように白く瞳はアメジスト。まるで天使だとよく噂されてますね」
「天使.......お兄様とキャラが被るな」
「お嬢様がアイザック様に抱いている印象が丸わかりですね」
おいルイ、引くんじゃない!!
「とにかくこうなったら戦争ですね」
「そんな物騒な」
慌てるサラ、彼女の心配も分かるが私としてはこのまま見過ごすわけにはいかない。アイザックの妹として、彼のマネージャーとしての威厳を見せつけないと。
「カイスファンクラブの女性たちで何人かがうちのファンクラブに喧嘩売ってきてるんですよ!?」
そう、一番黙っておけない理由がこれだ。
カイスのファンクラブ会員と名乗る女性(女児)が複数でうちの会員一人を取り囲み虐めとも取れる行為に及んでいるらしい。「カイス様の方が素敵だから」「アイザックファンなんて」等々罵っている現場を目撃したレベッカから聞いた時、久しぶりに声を荒らげてしまった。
ふざけるな、って。
「お嬢様、それ以上は」
握った拳に爪がくい込んで血が滲むより先にルイの制しが入った。
私はアイザックが大切だ。
だから彼が笑っていられるよう周りに秩序と配慮を持って欲しくてこのファンクラブを作った。それを下手に真似されただけでなく集団で一人を虐める理由に使われたのが何より腹立たしい。
人の好みはそれぞれだ、私がアイザックを思うように皆がアイザックを思ったりしない事は分かっている。でもそれは他者を排除する理由にしてはいけない。
「潰す.......」
「加勢します」
「ルイまでそんな。お嬢様を止めてくださいよ!!」
サラには悪いが穏便にすますつもりはない。
「サラ、確かワイアット家から招待状が来てましたよね」
「えぇ。先日また新たに招待状が届いていました、今回はアイザック様宛のも一緒に」
「.......そういうことか」
私一人を誘った所でこないと考え、アイザックを餌に誘ったらしい。こういう風に頭が回るのだから流石アルフレッドが嫌悪するだけあるか。何はともあれいい機会だ。
「ならその誘いを受けましょう、勿論お兄様と一緒に」
「かしこまりました」
「あとそれから新しい服を用意して欲しいんです、せっかく誘って頂いたのですからそれ相応の準備をして行かないと失礼でしょう?」
「あのお嬢様が服を!!」
サラは目を丸くし、ルイまでも驚いている。いや確かにオシャレとか興味無いけどそこまでビックリされると困るんだが。
古来より戦は形から入るのが常だ。鎧甲冑の戦闘服、とはいかないけれど私だって武装していこう。
「そうですね、白をモチーフにした最近流行りの細かいレースが入った綺麗な.......」
「はいそのようなドレスをご用意致しますね!」
「いやアイザックお兄様にそんな感じの正装を」
「駄目ですよ、聞こえてません」
あれ、私のはアイザックより地味でいいんだけど!!
「ついでですからルイも仕立てましょうか」
「いえ自分は」
「こうなったら道ずれです」
逃げようとする従者の腕を掴み、私は天使の面をした悪魔(カイス・ワイアット)と戦うことを決めたのだった。
「真似された、しかもワイアット家に」
遺憾である。ドンっと机を叩き、衝動で痛めた手をさすった。
「お嬢様珍しく荒れてますね」
「物に当たらない所がまたらしいと言えばらしいですけど.......手、冷やしますか?」
「お願いします」
本当はその場でじたんだ踏んで暴れ回りたいけれど従者しかいない自室とはいえ流石にはばかれる。
「別にふぁんくらぶの一つや二つ真似されたからといって怒らなくても」
「私が怒っているのはファンクラブのことではありません、いつの時代も画期的なアイディアや先進的な思考は真似される運命ですからね」
真似自体は予想していたことだ。
「にしても早すぎる!!」
設立してからそう時間が経っていない。これでは敢えてパクリましたよと宣言されたも同然。ワイアット家が当てつけにファンクラブを真似したと捉えてまず間違いないだろう。
「当てつけとはいえうちの大事なお兄様のファンクラブを真似するとは.......絶対許さん」
「どんなふぁんよりも過激ですね」
「危ないことだけはしないで下さいね、ただでさえ最近お嬢様の評判ガタ落ちなんですから」
それは狙って落としてるから大丈夫なんだよ。
「サラはカイス様の容姿を見たことがありますか?」
真似とはいえファンクラブが出来るぐらいだ、さぞ顔立ちがいいんだろう。
「直接見たことはありませんが噂程度ならよく耳にしますよ」
「例えば?」
「髪はプラチナブロンドのくせっ毛、色は琥珀のように白く瞳はアメジスト。まるで天使だとよく噂されてますね」
「天使.......お兄様とキャラが被るな」
「お嬢様がアイザック様に抱いている印象が丸わかりですね」
おいルイ、引くんじゃない!!
「とにかくこうなったら戦争ですね」
「そんな物騒な」
慌てるサラ、彼女の心配も分かるが私としてはこのまま見過ごすわけにはいかない。アイザックの妹として、彼のマネージャーとしての威厳を見せつけないと。
「カイスファンクラブの女性たちで何人かがうちのファンクラブに喧嘩売ってきてるんですよ!?」
そう、一番黙っておけない理由がこれだ。
カイスのファンクラブ会員と名乗る女性(女児)が複数でうちの会員一人を取り囲み虐めとも取れる行為に及んでいるらしい。「カイス様の方が素敵だから」「アイザックファンなんて」等々罵っている現場を目撃したレベッカから聞いた時、久しぶりに声を荒らげてしまった。
ふざけるな、って。
「お嬢様、それ以上は」
握った拳に爪がくい込んで血が滲むより先にルイの制しが入った。
私はアイザックが大切だ。
だから彼が笑っていられるよう周りに秩序と配慮を持って欲しくてこのファンクラブを作った。それを下手に真似されただけでなく集団で一人を虐める理由に使われたのが何より腹立たしい。
人の好みはそれぞれだ、私がアイザックを思うように皆がアイザックを思ったりしない事は分かっている。でもそれは他者を排除する理由にしてはいけない。
「潰す.......」
「加勢します」
「ルイまでそんな。お嬢様を止めてくださいよ!!」
サラには悪いが穏便にすますつもりはない。
「サラ、確かワイアット家から招待状が来てましたよね」
「えぇ。先日また新たに招待状が届いていました、今回はアイザック様宛のも一緒に」
「.......そういうことか」
私一人を誘った所でこないと考え、アイザックを餌に誘ったらしい。こういう風に頭が回るのだから流石アルフレッドが嫌悪するだけあるか。何はともあれいい機会だ。
「ならその誘いを受けましょう、勿論お兄様と一緒に」
「かしこまりました」
「あとそれから新しい服を用意して欲しいんです、せっかく誘って頂いたのですからそれ相応の準備をして行かないと失礼でしょう?」
「あのお嬢様が服を!!」
サラは目を丸くし、ルイまでも驚いている。いや確かにオシャレとか興味無いけどそこまでビックリされると困るんだが。
古来より戦は形から入るのが常だ。鎧甲冑の戦闘服、とはいかないけれど私だって武装していこう。
「そうですね、白をモチーフにした最近流行りの細かいレースが入った綺麗な.......」
「はいそのようなドレスをご用意致しますね!」
「いやアイザックお兄様にそんな感じの正装を」
「駄目ですよ、聞こえてません」
あれ、私のはアイザックより地味でいいんだけど!!
「ついでですからルイも仕立てましょうか」
「いえ自分は」
「こうなったら道ずれです」
逃げようとする従者の腕を掴み、私は天使の面をした悪魔(カイス・ワイアット)と戦うことを決めたのだった。
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