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友達の兄妹
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長閑な昼下がり、木陰に腰を落ち着けながら嬉々として鍛錬に励む少年たちを観察していた。こう言えばショタコンに聞こえるかもしれないが実際はアイザックの剣術鍛錬の見学に来ているだけである。
「元気だな~」
適度な運動は好きだ、出不精ではあるが動く事自体が嫌いなわけじゃない。ただ過剰なまでに身体を酷使したり思考が追いつかない程エネルギーを使うのが嫌なだけ、可能な限り考えて物事を解決したがるのが私の悪い癖だろう。
子供のうちからこんななのできっと私にはスポーツというものが向いてないんだと思う。
「お嬢様も剣術習いたかったですか?」
私があまりに微笑ましい視線を送っていたので横にいるルイが尋ねてきた。アルフレッドに頼み込んで却下されているのを知ってか少し控えめな聞き方だ。
「そうですね、護身術はあるに越したことないですから」
令嬢とは格好の的になりやすいから。叶うなら自分で何とかしたい、これも悪い癖なんだろうな~。
「ソレ自分がいるのに必要ですか?」
「.......貴方の天然発言は世に出すには危ういですね」
この子外に出したら秒でストーカー連れて来そう。自分の発言にはもっと責任を持ちたまえ!!
「はぁ。私が男の子ならアイザックお兄様と一緒に練習出来るのに」
結局子供っぽいとは分かっていてもそこなんだよな。私が同性ならアイザックと二人切磋琢磨しながら.......いいな。ニヤけた顔を他人に見られないよう俯いた。
「アイリーン!! そんなところに居ないでもっと近くで見ましょうよ」
レベッカがこちらに走り寄ってくる。彼女は以前アイザックファンクラブの設立で手を組んでから何かと仲がいい、というより一方的に歩み寄ってくれているのだ。名前呼びし合う関係というのも郁以来なのでとにかく新鮮である。
「レベッカちょっとはしゃぎすぎ」
「だってあのアイザック様がお兄様と一緒に汗を流してるのよ!? 二人の高揚した頬を眺められるなんて最高じゃない!!」
この子偶にぶっ飛んだ発言するよな。将来めちゃくちゃ不安なんだけど。
「あの中にもし男の子版アイリーンが居たら三つ巴なのに」
私と考えが似ているようで最も遠くへ行っている気がするのは気の所為なのかな? 読めない彼女の思考に振り回されながらアイザックの元へ歩いていく。確かに頑張っている彼はかっこいい、あれうちの兄なんですよと国中を自慢して回りたいぐらい素敵だ。
「アイザック、危ないから剣を飛ばすんじゃない!!」
「すみません振った拍子に手が滑って.......」
例え運動音痴だとしても、だ。
たどたどしいアイザックの構えとは違いクロードは背筋を伸ばし型通りにこなしている。彼もブラウン程ではないといえ剣術の才があるらしい。流石裏攻略対象なだけある。
「凄いなクロード様」
「お兄様ったら張り切ってるのよアイリーンとアイザック様が居るからね」
多分私の所在は関係ない気がする。一心不乱に剣を振るクロードと対して剣に振られるアイザック。.......頑張れお兄様。
二人は暫くそうして練習に励んでいると休憩を言い渡された。レベッカがすかさずアイザックの元に駆けタオルを渡している。抜かりないなこの子。
「お疲れ様ですクロード様」
「.......あぁアイリーン嬢か」
今気づきましたといった様子のクロード。やはり私のことは眼中にないらしい、正直その方が気が楽だ。
「アイザックは頑張っているぞ」
先程怒られていたアイザックを庇うよう口を開くクロード。妹に呆れられたら可哀想だという彼なりの気遣いだろう。
「見ていれば分かりますよ。お兄様は努力家で優しい」
「あいつは剣術向きではないかもしれないがそのうち俺なんかよりずっと強くなる」
何が、とはまだ分からないけどな。そう微笑んだクロードの言葉に驚かされた。随分よくアイザックの事を見ている。幼馴染で、友達でありよきライバル。少年漫画にありそうな二人だ。
「お兄様と仲良くして頂きありがとうございます」
優しいアイザックが選んだ友達ならきっと彼もまた優しいのだろう。ゲームでもアイリーンの所業について何故か庇ってくれてたみたいだしいい人なのは確定か。
「こちらこそうちの愚妹と仲良くしてくれて助かっている」
レベッカのことだ。兄妹仲はそんなに悪くないらしい。
「あれは良くも悪くも我が強いからな。同年代の子によく出しゃばりだと疎まれたりするんだ」
目立ちたがり屋らしい。
「レベッカには人を引っ張る素質がありますよ。将来先導者や人の上に立つ立場になれば輝くかもしれません」
ゲームではアイリーンの取り巻きとしてその才を腐らせていたが。
「君が設立したふぁんくらぶ? というやつのお陰だろう。あれを任されてから生き生きしてるからな」
実際レベッカはファンクラブの会員番号一番として皆をまとめ上げている。(ちなみに私はマネージャーポジなので会員番号は与えられてない)
「ありがとう、あの子と友達になってくれて」
おお~イケメンスマイルだ。無愛想な子だと思ってたのに意外と身内や仲のいい子には甘いタイプなのかな?
「いいえ。私こそレベッカと友達になれて嬉しいですよ」
社交辞令じゃない、本心だ。この世界で友達らしい友達いないからね。ブラウンはどちらかと言えば親戚の年下男子みたいなポジションだし。え? 婚約者? 知らない知らない。
「良ければ俺とも友達になってくれないか? アイザックが君のことを自慢げに話すから一度ゆっくり喋ってみたかったんだ」
「はい!?」
「本当に? 良かった~」
いや今のは聞き返しただけなんだけど。どうしよう出来るだけ裏とはいえ攻略対象の彼とは友達の兄妹って立ち位置のままでいたかったんだけど!!
「元気だな~」
適度な運動は好きだ、出不精ではあるが動く事自体が嫌いなわけじゃない。ただ過剰なまでに身体を酷使したり思考が追いつかない程エネルギーを使うのが嫌なだけ、可能な限り考えて物事を解決したがるのが私の悪い癖だろう。
子供のうちからこんななのできっと私にはスポーツというものが向いてないんだと思う。
「お嬢様も剣術習いたかったですか?」
私があまりに微笑ましい視線を送っていたので横にいるルイが尋ねてきた。アルフレッドに頼み込んで却下されているのを知ってか少し控えめな聞き方だ。
「そうですね、護身術はあるに越したことないですから」
令嬢とは格好の的になりやすいから。叶うなら自分で何とかしたい、これも悪い癖なんだろうな~。
「ソレ自分がいるのに必要ですか?」
「.......貴方の天然発言は世に出すには危ういですね」
この子外に出したら秒でストーカー連れて来そう。自分の発言にはもっと責任を持ちたまえ!!
「はぁ。私が男の子ならアイザックお兄様と一緒に練習出来るのに」
結局子供っぽいとは分かっていてもそこなんだよな。私が同性ならアイザックと二人切磋琢磨しながら.......いいな。ニヤけた顔を他人に見られないよう俯いた。
「アイリーン!! そんなところに居ないでもっと近くで見ましょうよ」
レベッカがこちらに走り寄ってくる。彼女は以前アイザックファンクラブの設立で手を組んでから何かと仲がいい、というより一方的に歩み寄ってくれているのだ。名前呼びし合う関係というのも郁以来なのでとにかく新鮮である。
「レベッカちょっとはしゃぎすぎ」
「だってあのアイザック様がお兄様と一緒に汗を流してるのよ!? 二人の高揚した頬を眺められるなんて最高じゃない!!」
この子偶にぶっ飛んだ発言するよな。将来めちゃくちゃ不安なんだけど。
「あの中にもし男の子版アイリーンが居たら三つ巴なのに」
私と考えが似ているようで最も遠くへ行っている気がするのは気の所為なのかな? 読めない彼女の思考に振り回されながらアイザックの元へ歩いていく。確かに頑張っている彼はかっこいい、あれうちの兄なんですよと国中を自慢して回りたいぐらい素敵だ。
「アイザック、危ないから剣を飛ばすんじゃない!!」
「すみません振った拍子に手が滑って.......」
例え運動音痴だとしても、だ。
たどたどしいアイザックの構えとは違いクロードは背筋を伸ばし型通りにこなしている。彼もブラウン程ではないといえ剣術の才があるらしい。流石裏攻略対象なだけある。
「凄いなクロード様」
「お兄様ったら張り切ってるのよアイリーンとアイザック様が居るからね」
多分私の所在は関係ない気がする。一心不乱に剣を振るクロードと対して剣に振られるアイザック。.......頑張れお兄様。
二人は暫くそうして練習に励んでいると休憩を言い渡された。レベッカがすかさずアイザックの元に駆けタオルを渡している。抜かりないなこの子。
「お疲れ様ですクロード様」
「.......あぁアイリーン嬢か」
今気づきましたといった様子のクロード。やはり私のことは眼中にないらしい、正直その方が気が楽だ。
「アイザックは頑張っているぞ」
先程怒られていたアイザックを庇うよう口を開くクロード。妹に呆れられたら可哀想だという彼なりの気遣いだろう。
「見ていれば分かりますよ。お兄様は努力家で優しい」
「あいつは剣術向きではないかもしれないがそのうち俺なんかよりずっと強くなる」
何が、とはまだ分からないけどな。そう微笑んだクロードの言葉に驚かされた。随分よくアイザックの事を見ている。幼馴染で、友達でありよきライバル。少年漫画にありそうな二人だ。
「お兄様と仲良くして頂きありがとうございます」
優しいアイザックが選んだ友達ならきっと彼もまた優しいのだろう。ゲームでもアイリーンの所業について何故か庇ってくれてたみたいだしいい人なのは確定か。
「こちらこそうちの愚妹と仲良くしてくれて助かっている」
レベッカのことだ。兄妹仲はそんなに悪くないらしい。
「あれは良くも悪くも我が強いからな。同年代の子によく出しゃばりだと疎まれたりするんだ」
目立ちたがり屋らしい。
「レベッカには人を引っ張る素質がありますよ。将来先導者や人の上に立つ立場になれば輝くかもしれません」
ゲームではアイリーンの取り巻きとしてその才を腐らせていたが。
「君が設立したふぁんくらぶ? というやつのお陰だろう。あれを任されてから生き生きしてるからな」
実際レベッカはファンクラブの会員番号一番として皆をまとめ上げている。(ちなみに私はマネージャーポジなので会員番号は与えられてない)
「ありがとう、あの子と友達になってくれて」
おお~イケメンスマイルだ。無愛想な子だと思ってたのに意外と身内や仲のいい子には甘いタイプなのかな?
「いいえ。私こそレベッカと友達になれて嬉しいですよ」
社交辞令じゃない、本心だ。この世界で友達らしい友達いないからね。ブラウンはどちらかと言えば親戚の年下男子みたいなポジションだし。え? 婚約者? 知らない知らない。
「良ければ俺とも友達になってくれないか? アイザックが君のことを自慢げに話すから一度ゆっくり喋ってみたかったんだ」
「はい!?」
「本当に? 良かった~」
いや今のは聞き返しただけなんだけど。どうしよう出来るだけ裏とはいえ攻略対象の彼とは友達の兄妹って立ち位置のままでいたかったんだけど!!
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