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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)
初めての場所_2
しおりを挟む目の前に出されたのは、ベーコンエッグとトースト。そして嗅いだことのある匂いの黄色い液体。恐らくコーンスープだろう。サラダボウルに乗せられた野菜達は瑞々しく、こんがりと焼かれたパンは、美味しそうな焦げ目の上にバターが乗っており、半分溶けたソレは非常に良い匂いを醸し出していた。
「オレンジジュースとミルク、どっちにする?」
「んー……オレンジジュース!」
ノイは出来るだけ子どもっぽく、明るく喋るよう努めた。
「はい、どうぞ。……ミルクもきちんと飲まなきゃダメよ?」
「は、はぁい」
「もう……。昨日はよく眠れた?」
「えっ……ま、まぁまぁよ」
「そう? 気のせいかしら? 少し顔色が悪いように見えるのだけれど」
「き、きっ、気のせいよ! だから、うん! 心配しないで!」
「……なら良いのだけれど。夜更かしはダメよ?」
「分かってる! ……あー! お腹空いちゃった! いただきまーす!」
微妙な空気を誤魔化すように、ノイ、は大袈裟に食事をし始めた。
パリパリと音を立ててレタスを咀嚼し、トマトを嚙み潰す。パンはジャムも添えられていたが、敢えて塗らずにバターの風味を楽しんだ。
「あ、そうそう。ノエルにお願いがあるの。」
「なぁに? ……か、母さん」
「お母さんの姉さんのところに、あの葡萄酒と、パンを届けてくれないかしら? 熱で身体が自由に動かなくて、困っているみたいなの」
「姉さん? おばあちゃんじゃ、なくて?」
「何を言ってるの? おばあちゃんなら、この家にいるじゃない」
「……おやおや、みんな早いねぇ。おはよう」
「お母さん、おはよう」
「おはようノエル」
「おは、よう……」
ノエルのお母さんに『お母さん』と呼ばれた老婆が、【おばあちゃん】であることは明らかだった。
"話が……違う……?"
ノイの知っている赤ずきんは、おばあさんの元へ向かう筈だ。葡萄酒とパンを持って、途中で狼に会って花を摘むという道草を食い、おばあさんの元へ。その間に食べられて狼が成り代わり、お腹の中のおばあさんを助ける。
登場人物は、赤ずきんとその母、おばあさんに狩人、そして狼だ。母親のお姉さんなど、存在しない。
"これ……勝手に話が出来上がってる……? もしくは、ウタが話を捻じ曲げている、か……"
真実は分からない。が、どちらにしろ、赤ずきんとなったノイに選択肢は無い。その【お姉さん】とやらに、葡萄酒とパンを届けなければ。ノイにも本物のノエルにも、明日が来ないのだ。
"ケープだとか登場人物の一部だとか、細かいところは、忠実なのに、ね……"
「これが念のための住所よ。……と言っても、何度も行っているから平気かしら?」
「えっ、あっ、ちょうだい! そ、その、一応、ね。は、はは……」
「……変な子ね? まぁ良いわ。最近変な人が多いみたいだから。気をつけてちょうだい」
「えぇ、分かったわ。ご飯を食べ終わったら、すぐに行くから」
ノイは、これからどう話を進めて行くか、キーパーソンとなるおばあちゃんが、母の姉に変わったことで、どう影響するのか、他の狼や狩人はどうなっているのか、考えを巡らせながらご飯を食べた。
「あ、そういえば……住所、って、森の奥じゃない、よね?」
「あらやだ、覚えていないの? 隣町じゃない、あんなに何度も行ったのに、忘れちゃった?」
「あ、はは。最近忘れっぽくて。あはは、はは」
「……まぁ、最近は行っていなかったものね、嫌がって。そういえば、どうして行くのを嫌がったの?」
「う、うーん……。その、気分じゃなかった……かも……?」
誤魔化しきれたかどうかは怪しいところだが、急いで食べ進める。
"どうしよう、なんか、知っている話と全然違うんですけど!?"
ノイは大きな不安を胸に抱えながら、母の姉の元へ向かう為の準備を始めた。
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