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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)
初めての場所_1
しおりを挟むチュン──チュン──チュン──。
「……ん……ここは……?」
鳥の囀る声を耳にして、ノイは目を覚ました。うっすらと開けた目が捉えたのは、ウォルナット色の木で出来た壁、それに合わせただろうカントリー調の家具、白と濃い赤の布団カバー。その目に映ったモノをしっかりと見ると、明らかに自分の部屋ではない。それは、すぐにわかった。
──コンコン。
「……え」
不意に部屋のドアが叩かれた。
「……ノエル? 入るわよ?」
──ガチャ。
部屋の主の返事を待たずに、ドアが開いた。
「ノエル? 朝ご飯が出来たわよ? そろそろいらっしゃい」
「あ……は、はい……」
咄嗟に返事をした。だが、声の主が誰なのかも分からない。
"──此処は、何処、なの──?"
ノイは全てを理解出来ていなかった。ただ、あのウタが言ったように、別の世界に来たことは恐らく確かだった。でなければ、突然見ず知らずの場所に瞬間移動する訳がない。そう思ったからだ。
……はたして先程、ノイを『ノエル』と呼んだ女性は、誰なのか。
"……何か、少しでも手掛かりを……!"
ノイは片っ端から引き出し、扉を開けていった。艶のある木で出来た櫛に、純白のクロスが敷かれたバスケット。恐らくまだ未使用の靴は、キチンと揃えてしまわれていた。他にも可愛らしいワンピースに、フリルやレースがふんだんに使われて、パステルカラーが愛らしい上下の揃った下着。膨らんだシルエットのスカートに、パリッとしたブラウス。
そんな中、クローゼットを開けた時一枚のケープが目に入った。
「……赤い、赤い、まるで血のような色……」
手に取り、身につけてみる。フードも付いており、それを被った。
クローゼットについていた鏡を覗き込むと、非常に見覚えのある姿がそこにはあった──。
「──赤ずきん」
思わず口を吐いて出た言葉。──あぁ、そうか。それがこの世界か。この物語の舞台か。ウタが完結を望んだストーリーか。……ノイは、赤ずきんになったのだ。
部屋に飾られた、アンティーク調の鏡に映った自分をみて見る。綺麗なブロンドの髪の毛は、多少癖っ毛なのか毛先がくるんとしていた。自分では有り得ない青みがかった瞳に、白くて細い手足に、長い睫毛。鏡に向かって笑ってみると、あどけない少女のような笑みがそこにはあった。
頭身も低く、子供のように見える。ということは、先程の女性はきっと母親だろう。
「……取り敢えず、行かなきゃ。じゃなきゃ、何も始まらない……!」
意を決したノイは、勢いよくケープをベッドに脱ぎ捨てると、部屋を出て階段を駆け降りた。
「おっ……おはよう……!」
極力、不自然のないように振る舞う。ぎこちないが可愛らしい笑顔も添えて。
「おはようノエル」
自分の挨拶にそう答えてニッコリと笑う母らしき人。ノイの胸が少し痛む。今、この人の大事な娘は全くの別人になっていて、しかも物語完結の為にしなければならないことがあるのだから。だが、ノイ自身は物語を進め、あまり言いたくはなかったが、エッチなことを終わらせて、早く次に行きたいのが本音だ。
何話あるか、目次をきちんと見てくれば良かったと、ノイは酷く後悔していた。サッと流すように確認しただけだから、何話あるのかわからない。……それでも全てを終わらせなければ、元の世界には帰れないのだから、どうにか頑張る他無かった。
"あんまり進みたくないけど……前に進むしかないんだ……"
そう考えたくもないことを考えていると、食事が運ばれてきた。
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