上 下
7 / 61
アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)

初めての場所_1

しおりを挟む

 チュン──チュン──チュン──。

「……ん……ここは……?」

 鳥の囀る声を耳にして、ノイは目を覚ました。うっすらと開けた目が捉えたのは、ウォルナット色の木で出来た壁、それに合わせただろうカントリー調の家具、白と濃い赤の布団カバー。その目に映ったモノをしっかりと見ると、明らかに自分の部屋ではない。それは、すぐにわかった。

 ──コンコン。

「……え」

 不意に部屋のドアが叩かれた。

「……ノエル? 入るわよ?」

 ──ガチャ。

 部屋の主の返事を待たずに、ドアが開いた。

「ノエル? 朝ご飯が出来たわよ? そろそろいらっしゃい」
「あ……は、はい……」

 咄嗟に返事をした。だが、声の主が誰なのかも分からない。

"──此処は、何処、なの──?"

 ノイは全てを理解出来ていなかった。ただ、あのウタが言ったように、別の世界に来たことは恐らく確かだった。でなければ、突然見ず知らずの場所に瞬間移動する訳がない。そう思ったからだ。
 ……はたして先程、ノイを『ノエル』と呼んだ女性は、誰なのか。

"……何か、少しでも手掛かりを……!"

 ノイは片っ端から引き出し、扉を開けていった。艶のある木で出来た櫛に、純白のクロスが敷かれたバスケット。恐らくまだ未使用の靴は、キチンと揃えてしまわれていた。他にも可愛らしいワンピースに、フリルやレースがふんだんに使われて、パステルカラーが愛らしい上下の揃った下着。膨らんだシルエットのスカートに、パリッとしたブラウス。
 そんな中、クローゼットを開けた時一枚のケープが目に入った。

「……赤い、赤い、まるで血のような色……」

 手に取り、身につけてみる。フードも付いており、それを被った。
 クローゼットについていた鏡を覗き込むと、非常に見覚えのある姿がそこにはあった──。

「──赤ずきん」

 思わず口を吐いて出た言葉。──あぁ、そうか。それがこの世界か。この物語の舞台か。ウタが完結を望んだストーリーか。……ノイは、赤ずきんになったのだ。
 部屋に飾られた、アンティーク調の鏡に映った自分をみて見る。綺麗なブロンドの髪の毛は、多少癖っ毛なのか毛先がくるんとしていた。自分では有り得ない青みがかった瞳に、白くて細い手足に、長い睫毛。鏡に向かって笑ってみると、あどけない少女のような笑みがそこにはあった。
 頭身も低く、子供のように見える。ということは、先程の女性はきっと母親だろう。

「……取り敢えず、行かなきゃ。じゃなきゃ、何も始まらない……!」

 意を決したノイは、勢いよくケープをベッドに脱ぎ捨てると、部屋を出て階段を駆け降りた。

「おっ……おはよう……!」

 極力、不自然のないように振る舞う。ぎこちないが可愛らしい笑顔も添えて。

「おはようノエル」

 自分の挨拶にそう答えてニッコリと笑う母らしき人。ノイの胸が少し痛む。今、この人の大事な娘は全くの別人になっていて、しかも物語完結の為にしなければならないことがあるのだから。だが、ノイ自身は物語を進め、あまり言いたくはなかったが、エッチなことを終わらせて、早く次に行きたいのが本音だ。
 何話あるか、目次をきちんと見てくれば良かったと、ノイは酷く後悔していた。サッと流すように確認しただけだから、何話あるのかわからない。……それでも全てを終わらせなければ、元の世界には帰れないのだから、どうにか頑張る他無かった。

"あんまり進みたくないけど……前に進むしかないんだ……"

 そう考えたくもないことを考えていると、食事が運ばれてきた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...