28 / 55
彼氏と彼女
私が話したい人_5
しおりを挟む
「部屋が同じなのは、確か同期の子だって言ってたね?」
「うん! 栞ちゃん! ……あのね、彼女には、その、社長としてじゃなくて、私の彼氏として会ってほしいと思っていて……」
「……彼女がゆあの大切な人なのかな?」
「そうなの! ……私、そんなに友達多いほうじゃないから。学生時代の友人も、疎遠になってる子もいるし」
「じゃあ、彼女には、もう?」
「少しだけ、話をしたの。あっ! 別に、誰かに喋ったりとか栞ちゃんはしないから! 応援するって言ってくれたの」
「僕の社長としての評価は?」
「……堅物俺様社長?」
「これはこれは。手厳しいね。……もしかしてゆあもそう思ってた?」
「……うっ」
「ゆあも正直だね。誤魔化せばいいのに。……でも、間違ってないかもね」
「えっ?」
「ほしいものは意地でも手に入れるし、僕のモノが他の誰かに奪われるなんて許せないし。……特に、ゆあに関しては」
「ハルトさん?」
「僕よりも仲が良いのは妬けるなぁ」
「おっ、女の子だよ!?」
「性別は関係ないよ? 紹介されても良いけど、しっかりと僕のだって伝えないとね?」
ハルトの視線がゆあに刺さる。優しく話しているはずなのに、どこか威圧するような空気がゆあの身体と心を絡めとる。じっと見つめるそのハルトの瞳を見つめ返すと、ゆあは腕を伸ばしてハルトを抱き締めた。
――こうして、社員旅行当日。大きなスーツケースに荷物をまとめたゆあは、一人空港へと向かった。
「ゆあ! こっちこっち!」
「栞ちゃん! ……わお、凄い荷物」
「それはゆあも一緒じゃん。初日と最終日はホテル泊だし、あれもこれもって不安になって詰め込んでたら、どんどん増えてっちゃったけど」
「わかる。忘れ物とか心配してたら、いつの間にかこんな私も荷物になっちゃった」
お互いがお互いの大きなスーツケースを見て笑った。出国してしまえばもう忘れ物を取りに戻ることはできない。国は違えど生活に必要なものは変わらない。お金とクレジットカードにとスマホ、それに貸し出されるWi-Fiさえあればなんとかなるだろうが、それでも『もし』を考えると、つい荷物を増やしがちである。
「ねぇゆあパスポート忘れてないよね?」
「さすがにそれはちゃんと持ってきてるよ!? 栞ちゃんこそ、普段電子決済ばっかりだけどクレジットカード持ってきた?」
「使わないだけでいつも財布に入れてるからね!? ま、みんな同じホテルに泊まるし、船に乗るまではみんな団体行動だし、もしなにか起こったとしても……まぁなんとかなるっしょ」
「……船、乗り遅れないように気を付けないとね」
「ちょっと、怖いこと言わないでよ……。なんかフラグが立った気がするんですけど」
「だって乗り遅れたら、出航しちゃうんだよ? 置いていかれちゃうんだよ?」
「よっぽど無計画かつ場当たりな行動しなきゃ大丈夫でしょ……」
「……だと良いんだけど」
「あー、ゆあはぼんやりしてることあるから、一人にならないようにね? ちょっと迷子になったら、誰にも気づかれないままま置いていかれそうなんだもん」
「ちょっ……ちょっと! 私そんなぼんやりしてないからね!?」
「いやいやー。どうだか」
「そういう栞ちゃんこそ『いろんなお店覗きたい!』『いろんなお土産買いたい!』ってあっちこっち行っちゃわないでよ?」
「空港でも船内でも買えるから大丈夫だもーん」
面白がりながらも、心配そうに笑う栞に向かって、ゆあは向きになって反論した。お互い、真に思っていることは口にしない。
(……前みたいなことがないと良いけど)
「まだまだ時間あるから、集合時間になるまで遊びに行かない? あ、そういえば飲み物飲み切った? 液体はちゃんと……」
「もう! 栞ちゃんお母さんみたい。ちゃんと調べてます!」
「あはは、ついつい」
「確認はちゃんとできてる、ってことで、空港内ゆっくり見よう?」
「はーい」
参加者の集合時刻までまだ余裕がある。チェックインと預け荷物の手続きを先に済ませ、2人は思い思いに空港の中を探索すると、休憩のためにカフェへ入る。
「ふあぁー! まだ出発してないのにちょっと疲れちゃった。ゆあ平気?」
「うん。普段空港ってそんなに来ることもないしさ。新鮮でこれはこれで楽しめてるし。栞ちゃんは?」
「私も! 空港だとちょっと雰囲気違うお店もあって面白いよね」
「外観とかメニューとか」
「そうそう! ……なんだけど、私達、もしかして集合するの早過ぎた?」
「そうかも? でも、このタイミングなら、機内に持ち込めるものなら忘れ物してても買えるし、行く前にゆっくりカフェで気持ち落ち着けることもできるし、私は早く来て良かったって思ってるよ」
「私もポジティブに考えよ! ……ねぇ英語話せないけど大丈夫かな」
「船内ならなんとかなるんじゃない? スマホあるし翻訳機能使えば大丈夫だと思ってる!」
集合時刻までカフェで過ごすと、早めに出て2人は集合場所へと向かった。2人以外にも既に他の社員が到着しており、時間が経つにつれてチラホラとその人数も増えていく。しばらく順に増えていったその中には、春川とその周囲の人間の姿もあった。
「うん! 栞ちゃん! ……あのね、彼女には、その、社長としてじゃなくて、私の彼氏として会ってほしいと思っていて……」
「……彼女がゆあの大切な人なのかな?」
「そうなの! ……私、そんなに友達多いほうじゃないから。学生時代の友人も、疎遠になってる子もいるし」
「じゃあ、彼女には、もう?」
「少しだけ、話をしたの。あっ! 別に、誰かに喋ったりとか栞ちゃんはしないから! 応援するって言ってくれたの」
「僕の社長としての評価は?」
「……堅物俺様社長?」
「これはこれは。手厳しいね。……もしかしてゆあもそう思ってた?」
「……うっ」
「ゆあも正直だね。誤魔化せばいいのに。……でも、間違ってないかもね」
「えっ?」
「ほしいものは意地でも手に入れるし、僕のモノが他の誰かに奪われるなんて許せないし。……特に、ゆあに関しては」
「ハルトさん?」
「僕よりも仲が良いのは妬けるなぁ」
「おっ、女の子だよ!?」
「性別は関係ないよ? 紹介されても良いけど、しっかりと僕のだって伝えないとね?」
ハルトの視線がゆあに刺さる。優しく話しているはずなのに、どこか威圧するような空気がゆあの身体と心を絡めとる。じっと見つめるそのハルトの瞳を見つめ返すと、ゆあは腕を伸ばしてハルトを抱き締めた。
――こうして、社員旅行当日。大きなスーツケースに荷物をまとめたゆあは、一人空港へと向かった。
「ゆあ! こっちこっち!」
「栞ちゃん! ……わお、凄い荷物」
「それはゆあも一緒じゃん。初日と最終日はホテル泊だし、あれもこれもって不安になって詰め込んでたら、どんどん増えてっちゃったけど」
「わかる。忘れ物とか心配してたら、いつの間にかこんな私も荷物になっちゃった」
お互いがお互いの大きなスーツケースを見て笑った。出国してしまえばもう忘れ物を取りに戻ることはできない。国は違えど生活に必要なものは変わらない。お金とクレジットカードにとスマホ、それに貸し出されるWi-Fiさえあればなんとかなるだろうが、それでも『もし』を考えると、つい荷物を増やしがちである。
「ねぇゆあパスポート忘れてないよね?」
「さすがにそれはちゃんと持ってきてるよ!? 栞ちゃんこそ、普段電子決済ばっかりだけどクレジットカード持ってきた?」
「使わないだけでいつも財布に入れてるからね!? ま、みんな同じホテルに泊まるし、船に乗るまではみんな団体行動だし、もしなにか起こったとしても……まぁなんとかなるっしょ」
「……船、乗り遅れないように気を付けないとね」
「ちょっと、怖いこと言わないでよ……。なんかフラグが立った気がするんですけど」
「だって乗り遅れたら、出航しちゃうんだよ? 置いていかれちゃうんだよ?」
「よっぽど無計画かつ場当たりな行動しなきゃ大丈夫でしょ……」
「……だと良いんだけど」
「あー、ゆあはぼんやりしてることあるから、一人にならないようにね? ちょっと迷子になったら、誰にも気づかれないままま置いていかれそうなんだもん」
「ちょっ……ちょっと! 私そんなぼんやりしてないからね!?」
「いやいやー。どうだか」
「そういう栞ちゃんこそ『いろんなお店覗きたい!』『いろんなお土産買いたい!』ってあっちこっち行っちゃわないでよ?」
「空港でも船内でも買えるから大丈夫だもーん」
面白がりながらも、心配そうに笑う栞に向かって、ゆあは向きになって反論した。お互い、真に思っていることは口にしない。
(……前みたいなことがないと良いけど)
「まだまだ時間あるから、集合時間になるまで遊びに行かない? あ、そういえば飲み物飲み切った? 液体はちゃんと……」
「もう! 栞ちゃんお母さんみたい。ちゃんと調べてます!」
「あはは、ついつい」
「確認はちゃんとできてる、ってことで、空港内ゆっくり見よう?」
「はーい」
参加者の集合時刻までまだ余裕がある。チェックインと預け荷物の手続きを先に済ませ、2人は思い思いに空港の中を探索すると、休憩のためにカフェへ入る。
「ふあぁー! まだ出発してないのにちょっと疲れちゃった。ゆあ平気?」
「うん。普段空港ってそんなに来ることもないしさ。新鮮でこれはこれで楽しめてるし。栞ちゃんは?」
「私も! 空港だとちょっと雰囲気違うお店もあって面白いよね」
「外観とかメニューとか」
「そうそう! ……なんだけど、私達、もしかして集合するの早過ぎた?」
「そうかも? でも、このタイミングなら、機内に持ち込めるものなら忘れ物してても買えるし、行く前にゆっくりカフェで気持ち落ち着けることもできるし、私は早く来て良かったって思ってるよ」
「私もポジティブに考えよ! ……ねぇ英語話せないけど大丈夫かな」
「船内ならなんとかなるんじゃない? スマホあるし翻訳機能使えば大丈夫だと思ってる!」
集合時刻までカフェで過ごすと、早めに出て2人は集合場所へと向かった。2人以外にも既に他の社員が到着しており、時間が経つにつれてチラホラとその人数も増えていく。しばらく順に増えていったその中には、春川とその周囲の人間の姿もあった。
13
お気に入りに追加
256
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる