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彼氏と彼女
私が話したい人_4
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ゆあは思い出していた。あのマッチングアプリでのイベントの日、お酒を飲みながら会社の愚痴を話したことを。すっかり忘れていたのだが、そんな話を少しだけした気がする。
「……なんなら、男性陣のセクハラの話もした気がしてる」
「それはいい仕事してるよゆあ。……あー、そうだわ。男性陣もそういうことしてる人たち居るからさ、認められないってのもあるかもね。自分が言ったこともこうやってNG食らうんじゃないかって思ったら、言われている人間にはそのまま誰にも相談できない相手でいて欲しいんだよきっと」
「えー、それは最悪……」
「でも、酔っぱらっていたとはいえ、社長に話したんでしょ? 少なくとも形はどうであれ伝わってるんだから、きっとなにかしらのアクションは起こしてくれると思うよ?」
「……それはそうかも。……実はね……」
思い切ってゆあは、先日倉庫に閉じ込められたこと、その場で先に社長が作業をしており守衛に連絡して鍵を開けてもらったこと、そのことに対してハルトがなにかしら対応をしようとしていたことを栞に話した。栞は話すに足りる相手だろう。きっと、話してもハルトは怒らない。それに自分も、話すことで楽になりたい。こんな内緒話を持ち合わせたくない。ハルトにとって守衛のヤスがゆあとの関係を離せる相手であったように、ゆあにとっては栞がハルトとの関係を話せる相手なのだ。
第三者の誰かに話すことで少しスッキリはしたものの、告げ口をしているようで、そして話したことが巡り巡って自分を閉じ込めた本人に伝わったらと、思っていたよりもあまり良い気分にはなれなかった。が、そもそも『人を悪意を持って出られない場所に閉じ込める』という行動がまったく褒められたものではないのだからと、間違っていないことをしたと自分を納得させた。
「……うわぁ。私が飲み会に連れていかれた日だよね? そんなことあったの? え、本当に大丈夫だった?」
「うん。たまたま社長がいたから外に出られたけど、スマホもないしカードキーも効かないし、私一人だったら絶対出られなかったと思う」
「運よく守衛さんが見に来てくれるとか、出られるならそんなレベルだよね。無事で良かったぁ」
「私もホッとしてる。社長、もう調べてると思うんだよね。誰が犯人かわかってると思うんだ。私が気にすると思って、なにも言わないでいるけど」
「あの日倉庫での仕事頼んだの春川さんじゃん? ……あの人だったりして」
「え!? そんなまさか!」
「あからさま過ぎる? でも、倉庫行くってわかってるか、あそこにいるって知らなきゃ無理だよね」
「……そう、だよね」
たとえ春川ではなかったとしても、同じ会社の人間だということは間違いない。何度考えてもその事実を覆すことはできず、ゆあの心に陰を落としていた。
「ま、わかってるならあとはなんとかしてくれるでしょ! 気を取り直して旅行のこと考えよ!」
「うん、そうする!」
栞の気を遣った切り替えに、2人は改めて船旅について話し始めた。その時間はいくら使えど足りないもので、この日だけに留まらずゆあや栞の近況を交えながら何回も何日でもその旅行を迎えるまで続いていった。
――そんな栞とゆあの二人が、全ての旅行準備を終わらせたころ、ハルトとゆあはゆあの家で食事をしながら社員旅行の話をしていた。社内で何か所か分かれている旅先すべてに、ハルトが同行するわけではない。だが船旅は友人たっての希望でハルトも参加することになっている。
「早く社員旅行の日来ないかな?」
「凄く楽しみにしてくれているみたいでなによりだよ」
「だって、あんなにおっきな客船で船旅なんで、一生することないと思ってたんだもん……」
「ゆあが気に入ってくれるなら、いくらでもこの先一緒に行けるよ?」
「うっ。ハルトさんが言うと、まったく冗談に聞こえない……」
「冗談じゃないからね? 今回の社員旅行は友人にモニターも含めてお願いされたからね。みんなにはその辺も気にしてもらいながらにはなってしまうけど。それが終わってからなら、存分に楽しめるはずだよ」
「モニターってちょっと緊張する。忖度なんかしないけど、自分の意見がその先を左右するかもしれないって思うと、一言一言気をつけなきゃいけないなぁって」
「そんなに畏まらなくて良いのに。そのほうがきっと正当な評価もできるはずだよ」
「わかってるんだけど、やっぱりね、ついつい」
「まぁ、ゆあはとにかく楽しむことに重点を置いて? 僕は相手方との話もあるし、みんなほど見て回れはしないだろうから。美味しいお店があったら教えてほしいな?」
「それはもちろん!」
「他にも、見てみたいショーに挑戦したいアクティビティも。少しぐらい、僕と一緒に回ってほしいな?」
2人で船内を歩くことは難しいだろう。だが少しでも、お互いに関係する時間を共有できれば、と双方考えていた。もしかしたら、停泊中の間であればこっそりと会えるかもしれない。それに、夜遅くや人のいない時間帯であれば、逢瀬を交わすこともできるだろう、と。偶然を装えば、アクティビティやショーで一緒になることは難しくないだろう。
「……なんなら、男性陣のセクハラの話もした気がしてる」
「それはいい仕事してるよゆあ。……あー、そうだわ。男性陣もそういうことしてる人たち居るからさ、認められないってのもあるかもね。自分が言ったこともこうやってNG食らうんじゃないかって思ったら、言われている人間にはそのまま誰にも相談できない相手でいて欲しいんだよきっと」
「えー、それは最悪……」
「でも、酔っぱらっていたとはいえ、社長に話したんでしょ? 少なくとも形はどうであれ伝わってるんだから、きっとなにかしらのアクションは起こしてくれると思うよ?」
「……それはそうかも。……実はね……」
思い切ってゆあは、先日倉庫に閉じ込められたこと、その場で先に社長が作業をしており守衛に連絡して鍵を開けてもらったこと、そのことに対してハルトがなにかしら対応をしようとしていたことを栞に話した。栞は話すに足りる相手だろう。きっと、話してもハルトは怒らない。それに自分も、話すことで楽になりたい。こんな内緒話を持ち合わせたくない。ハルトにとって守衛のヤスがゆあとの関係を離せる相手であったように、ゆあにとっては栞がハルトとの関係を話せる相手なのだ。
第三者の誰かに話すことで少しスッキリはしたものの、告げ口をしているようで、そして話したことが巡り巡って自分を閉じ込めた本人に伝わったらと、思っていたよりもあまり良い気分にはなれなかった。が、そもそも『人を悪意を持って出られない場所に閉じ込める』という行動がまったく褒められたものではないのだからと、間違っていないことをしたと自分を納得させた。
「……うわぁ。私が飲み会に連れていかれた日だよね? そんなことあったの? え、本当に大丈夫だった?」
「うん。たまたま社長がいたから外に出られたけど、スマホもないしカードキーも効かないし、私一人だったら絶対出られなかったと思う」
「運よく守衛さんが見に来てくれるとか、出られるならそんなレベルだよね。無事で良かったぁ」
「私もホッとしてる。社長、もう調べてると思うんだよね。誰が犯人かわかってると思うんだ。私が気にすると思って、なにも言わないでいるけど」
「あの日倉庫での仕事頼んだの春川さんじゃん? ……あの人だったりして」
「え!? そんなまさか!」
「あからさま過ぎる? でも、倉庫行くってわかってるか、あそこにいるって知らなきゃ無理だよね」
「……そう、だよね」
たとえ春川ではなかったとしても、同じ会社の人間だということは間違いない。何度考えてもその事実を覆すことはできず、ゆあの心に陰を落としていた。
「ま、わかってるならあとはなんとかしてくれるでしょ! 気を取り直して旅行のこと考えよ!」
「うん、そうする!」
栞の気を遣った切り替えに、2人は改めて船旅について話し始めた。その時間はいくら使えど足りないもので、この日だけに留まらずゆあや栞の近況を交えながら何回も何日でもその旅行を迎えるまで続いていった。
――そんな栞とゆあの二人が、全ての旅行準備を終わらせたころ、ハルトとゆあはゆあの家で食事をしながら社員旅行の話をしていた。社内で何か所か分かれている旅先すべてに、ハルトが同行するわけではない。だが船旅は友人たっての希望でハルトも参加することになっている。
「早く社員旅行の日来ないかな?」
「凄く楽しみにしてくれているみたいでなによりだよ」
「だって、あんなにおっきな客船で船旅なんで、一生することないと思ってたんだもん……」
「ゆあが気に入ってくれるなら、いくらでもこの先一緒に行けるよ?」
「うっ。ハルトさんが言うと、まったく冗談に聞こえない……」
「冗談じゃないからね? 今回の社員旅行は友人にモニターも含めてお願いされたからね。みんなにはその辺も気にしてもらいながらにはなってしまうけど。それが終わってからなら、存分に楽しめるはずだよ」
「モニターってちょっと緊張する。忖度なんかしないけど、自分の意見がその先を左右するかもしれないって思うと、一言一言気をつけなきゃいけないなぁって」
「そんなに畏まらなくて良いのに。そのほうがきっと正当な評価もできるはずだよ」
「わかってるんだけど、やっぱりね、ついつい」
「まぁ、ゆあはとにかく楽しむことに重点を置いて? 僕は相手方との話もあるし、みんなほど見て回れはしないだろうから。美味しいお店があったら教えてほしいな?」
「それはもちろん!」
「他にも、見てみたいショーに挑戦したいアクティビティも。少しぐらい、僕と一緒に回ってほしいな?」
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