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お祝いはみんなで
【夜】優しさ
しおりを挟む「――皆様、王様ゲームは如何でしたでしょうか? 本日は当店キャストのナオの誕生日。普段はお目にかかれないフードやドリンクもございますので、是非一度ご覧ください。ナオ宛のプレゼントも、ありがとうございます。後日、本人からお礼の手紙と、ささやかではありますがお返しもご用意させていただきます。どうか、どなたからいただいたものか分かるように、ご確認をお願いいたします」
ホールの中央で、黒服がそう告げた。
この内容に誤りはなく、誰からもらったものか分かるプレゼントに対して、キャストはそのお返しを渡す。手紙は簡単ながらも直筆だし、お返しの品はキャスト本人が客に合うものは……と、直接選んだものだ。費用は店が出すため、例え何を渡しても全員似たような価格帯で統一しており、それは予め客に通達しているため、今のところ特にトラブルもない。金額は関係なく、『自分が推しているキャストが、自らの言葉で筆を持って文字を書き、自ら自分のことを考えながら選んだプレゼント』がお返しとしてやってくる。客にとって、それはかけた金額などどうでも良いほどに、非常に付加価値の高いアイテムだった。
そのために、客はみな普段から自分を知ってもらおうと売り込む。優しくて甘い言葉をもらうために、キャストに嫌なことはしない。トリカイのように例外はいつでも出てくるが、都合により淘汰されていくことも珍しくない。
「本当に、終わったな」
「なんとなく、空気で分かるんです。なんとなく、ですけど」
「いや、これなら無理に個室に連れていく必要もない……と思ったが、着るものは渡したい、な。待ってろ」
何度も大きなモノを咥えたアヤの身を案じ、せめてもと服を取り寄せる。下着だけでは逆に気になるだろうと思い、オーソドックスな短パンTシャツのセットと共に、ボクサータイプのパンツも一緒に頼んだ。
届けられた服を身に着けながら、思い出したようにアヤはユキトに声をかける。
「あの、そういえば。……オオダカさんに、会っていただいても良い、ですか?」
「あぁ、そうだったな。危ない、言われなきゃ忘れて帰るところだった」
「さっき、まだ席に座っているのを見たので。向こうです。……行っても大丈夫ですか?」
「構わない。行こうか」
アヤに連れられてユキトは足を進めた。
「――オオダカさん。モエ」
名前を呼ばれたことに気が付き、男性と少年がアヤの方へと目を向けた。
「アヤ君。……隣の彼がそうかい?」
「はい」
「……初めまして。ユキトと申します」
「初めまして。みんなにはオオダカと呼ばれているよ。すまないね、急に会ってみたい、なんて言って。我ながら、無粋なことをしてしまったよ。すまない」
「いえ、自分は別に。アヤから話を聞いて、会うと判断したのは私なので」
“……あ。ユキトさん、自分のこと私って言ってる……。なんだかお仕事みたい”
オオダカに対して警戒心がないわけではない。が、自分の愛する人の紹介で、その評価も良いとなれば、会うという選択肢を取るのも悪くない。ユキトはそう思っていた。この店に来ていることを知られたくないのはお互い様だろうし、店に通う者同士、いつかは店内で鉢合わせることはあるだろう。一回まともに顔を合わせたところで、今後の生活に支障が出るとは考えにくい。
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