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お祝いはみんなで
【夜】誕生会@ケーキカット
しおりを挟む「……ん」
「お、目ぇ覚めたか?」
「……ユキト……さん……」
「急に動くなよ? 頭クラっとすんぞ?」
「あ……はい……。……あの、どれくらい寝てたんでしょう……?」
「十五分くらいだな。長いこと寝てたわけじゃないから、気にしなくて良いぞ?」
「ありがとうございます」
「落ち着いたら準備して、店に戻ろうか」
アヤが目を覚ますと、優しい笑みでアヤを見つめているユキトと目が合った。ずっと、隣で横になっていただろうユキトは、そっとアヤの頬を撫でると、キスをして抱き締めた。
“……夢みたい、だな”
まだ眠たい目を擦り、ユキトの腕に頬を擦り寄せる。頭を撫でられたアヤは、『もっと、もっと』とせがむように、頭を撫でる手に頭を押し付けた。
「……よしよし」
「……えへへ」
口元を緩ませ、自然と笑顔を見せた。その顔を見て、ユキトも微笑む。
「……早く、これを当たり前にしたいな」
「あ……ユキトさんと、一緒に……。想像したら、にやけちゃいます……」
「俺もそうだから、出来るだけ想像しないようにしてる」
「えっ、見たいです!」
「やめてくれ……。見るに堪えんぞ?」
「ユキトさんのそういう姿、見たいですもん……」
「ダメだダメだ、俺が恥ずかしい」
「なんだかずるいです」
「そんなことないぞ? ……そもそも、俺を知ってる人間からしたら……いや、何でもない」
「気になるじゃないですか!」
「あー……。まぁ、今の俺でも十分ビックリするだろうな、って話だ」
「そういう姿が見られて、凄く嬉しいです」
「……恥ずかしいな、言うんじゃなかった……」
「なんでですか!? どんどん言ってください!」
キラキラした目でユキトを見つめるアヤ。期待に満ちており、その視線が眩しい。
「……落ち着いたなら、行くぞ?」
「はぁい……」
残念そうに返事をしたが、ある程度落ち着いてはきたのだろう。水を飲んで喉を潤すと、自分の身体を拭いてユキトの身なりも整えた。
「戻ろうか。……誕生会、間に合うかな?」
「……忘れてました」
「祝えるところから祝ってやれ。折角の誕生日だからな」
「そうします」
個室を後にし店へと戻った二人を迎えたのは、誕生会の音楽だった。
「……間に合ったみたい、ですね」
「あぁ。……なんだあのケーキ。めちゃめちゃデカいな?」
「みんなで切り分けますし、希望があれば持ち帰れるようにしているので……。祝われる子のリクエストにもよりますけどね」
大きな誕生日ケーキは、真っ白なクリームと大粒の葡萄に苺で彩られていた。中央に飾られたチョコレートのプレートには、【ナオくんおたんじょうびおめでとう】の文字が書かれている。
客もキャストも黒服も、揃ってグラスを持つと盛大に乾杯した。
「お誕生日おめでとう!」
「おめでとうナオ君!」
「おめでとー!!」
「あっ……ありがとうございます!」
一人の男の子が恥ずかしそうにお礼を言った。
彼の周りには花と恐らく貰ったであろうプレゼントが置かれており、ひと際目立っていた。持っていたグラスの飲み物を一気に飲み干すと、黒服から大きなナイフを受け取り、ケーキへと突き刺す。そして一部を切り取ると、皿に盛って大きなスプーンですくった分を頬張った。
「凄く美味しいので! ぜひ皆さんも食べてくださいね!」
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