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お店の裏側
【夜】知らなかったこと@オトナの威厳
しおりを挟む「……なるほど。教育的指導、と――」
「そうそう。今時の子は、そういうの知らないでしょ? 大人のこと舐めてるし。だから、こういう時にガツンと――あ――?」
一瞬、トリカイが大きく目を見開いた。
「……う……気持ち、わる……」
「トリカイ様!? 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫、なわけ……あ、る……」
「トリカイ様!?」
「あ――」
ガタン、と前のテーブルに突っ伏す形でトリカイが倒れ込む。
「……トリカイ様」
店長は声をかけた。しかし、トリカイの返事はない。身体を揺すってみたが、同じようになんの反応もなかった。
「……すー……すー……すー……すー……」
静かに寝息を立てている。
「……つったく。失礼なのはどっちなんだか」
店長は呆れた顔をしてトリカイを見た。
「誰がやる? 部屋送り」
「あ、オレ良いっすか?」
「お、ハヤトがやりたいなんて珍しいな」
ハヤトと呼ばれた、オレンジ色の短髪で筋肉質な青年が、ポリポリと頬を掻きながら笑った。
「いやー、ウミは弟みたいで。放っておけないんすよね。だから、今日のは結構腹が立ったって言うか」
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「なので、自分も良いですかね? 店長」
「あぁ、構わねぇよ」
もう一人、手を挙げた男性。サラサラしたクレーがかった少し長めの髪の毛を、後ろで一つにまとめている。どちらかといえば細身に見える彼は、名をキナリと言った。
「……お前らコンビか。えげつねぇな」
「そんなことないですよ!?」
「……まぁ、否定はしない……」
「しろよ!?」
トリカイの扱いを楽しむかのように、二人は言葉を重ねた。
「……あ。そういや、今回ってリクエストあるんすか? 先に挙手制だったから、ないかなって思ったんすけど」
「流石にまだ、リクエストがくるには早くないか?」
「いやーでも、トリカイ結構早めに調教部屋の話挙がってたからさ。有り得るかなと思って」
「……鋭いなハヤト。あるにはある。『生意気さを残したまま、快楽を叩き込んでほしい。意識の状態は問わない』そうだ」
「うへー、悪趣味ー。アレ使って良いって意味だろ?」
「……トリカイもご愁傷様、だな」
「群がってきそうだもんなぁ、その設定」
「自分もそう思う」
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「ついつい」
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「いつからやれば良いんす?」
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店長の言葉に三人は頷くと、トリカイを抱えて部屋を出て行った。
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