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お店の裏側
【夜】知らなかったこと@答え
しおりを挟む「そ、それは……。だ、だって、『トラブルを起こしたり、問題のある子が入る』って……。さっき、『間違ってない』って、店長が……」
「強ち、な? 強ち。強ち間違ってはないんだよ」
「それじゃあ……」
「今のところ。子猫のキャストは入ってねぇし、調教部屋にいたやつが系列店に入ってる。だから、あっちの人間でもない。他に、この店にいるのは誰だ?」
「え……と……」
「……ちなみに、黒服はこの話は知ってるからな。……だから、ウミは大丈夫、なんだ」
“――っ! そ、そんなこと言ったら、残りは一つしか――!”
――わかった気がする。きっとこれが正解だ。アヤはほぼ確信に至っていた。……だが、それを口にしても良いのだろうか。少しだけ開けた唇に、本能的なストップがかかる。
「……『分かった』って顔してんな? ……な? 闇だろ?」
「……」
知ってはいけないこと、確かにそうだ。知ってしまったら、ボクは――。
「ホラ、分かったってんなら、その可愛い口で言ってみろよ」
店長が煽る。呆れたような、楽しむような、蔑むような。……何とも言えない笑みを浮かべながら。
「……お客様、ですか……?」
震えた声で、それでもアヤはゆっくりハッキリとそう告げた。
「正解だ。……トリカイ……様も要らねぇな。……やつは、あと一回何か問題を起こしたら、あの部屋に入ることになっている。これは、系列店も含むウチじゃあ暗黙の了解で既に決定事項だ。ルールが守れないやつは、うちの店じゃそうなるんだ」
「……調教、部屋……」
「実際に入ったやつの話は上がってこないからな。……都市伝説かなんかの類かと思っただろ?」
「正直、怖がらせる……ルールを守らせるための方便で、実際はないんじゃないかな……なんて思ってました……」
「……だろうな。ま、俺達だって別に使いたくて使ってるわけじゃねぇ。向こうはこっち以上にアングラだ。キャストが増えるのは嬉しいが、キャストの配属方法がバレた時のリスクもデカい」
「普通、じゃないですよね……」
「……俺達のこの世界に、普通、なんてモンは存在しねぇよ」
ポン、とアヤの頭に手を置くと、店長は優しくそのまま撫でた。
「とにかく、俺の勘じゃあトリカイは今日にもアノ部屋行きになる。今店に出てる新人キャストはウミだけだ。……フォロー、頼んだぞ」
「……はい」
「あと、今の話は誰にも言うな。……黒服にもな」
「分かってます」
「よし、それで良い。……それじゃ、向こうに戻るぞ」
「は、はい……!」
バタン――!
勢いよく部屋のドアが開かれた。
「――っ店長! あぁもう! ここにいたんですか!?」
「お? どうしたそんなに焦って」
「トリカイ様が……」
飛び込んできた黒服は、苦虫を嚙み潰したような、そんな厳しい表情をしている。その表情と態度を見て、店長はすべてを察したようだった。
「――そうか。すぐに行く。……ウミはどうした?」
「すぐに引き離して、今は空いている個室に」
「アヤをその部屋まで連れていけ。そうすりゃあとはコイツがなんとかしてくれるだろう。――ちょっと辛い思いをした、後輩のケアだ。言わなくても大体わかるだろ? 行けるな? アヤ」
「は、はい! すぐに!」
「分かりました! アヤ、こっちに。店長は、すぐにホールまで」
「わーってるよ」
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