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お店の裏側
【夜】愛想笑い@ウミ
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「……大丈夫?」
本当に小さな声で呟く。そう呟いたのはアヤで、相手はウミだ。
「だっ……大丈夫! ……です!」
明らかに疲れた顔をしている。それに、視線がキョロキョロと忙しない。
「……でも、全然、大丈夫そうに見えない、けど」
「うっ……じ、実は……あのお客様が、少し苦手で……」
ジッとアヤを見つめた後、ある一点へと視線をずらした。その先にいたのは、一人の青年。
“あぁ――あの人――”
アヤも見たことがあるし、そして接客もしたことのある相手。
「……わかる気がする……」
「アヤさんも、ですか?」
「あの人、新人が好きなんだよね。ボクも、お店に入った当初は何度か指名されたよ」
「そうなんですね……」
「……うん。なんというか、ちょっと、独特、だよね」
「はい……」
この店に来る客は、みんな個性的でどこか影があったり、癖のある人が多い。ユキトのように一直線で優しさのある男性は珍しく、アヤをキープしていなければ場の男の子達が取り合うくらいには人気の出るタイプだ。――つまり、圧倒的にそうではない客が多い。リピート客も多いが、単発の客も多いこの店で、独特、と言われるにはそれなりの理由がある。
「ウミちゃーん! ご指名入りました!」
「あっ……は、はい……!」
「ウミ、いってらっしゃい」
「行ってきます!」
バイバイ、と手を振ってウミを見送る。黒服に案内されウミが向かったのは……。
“あの人、か……”
今、アヤとウミが話していた、独特な人。彼の元へとウミは向かい、ペコリ、と頭を下げて横に座った。
「……あ……あのっ……!」
「ん? アヤ、どうした?」
近くへやってきた店長を呼び止める。
「ボクも、ウミの席に一緒に着けませんか……?」
「トリカイ様のところか? アヤも分かってるだろ? あの人新人しか隣に座らせないの」
「それは……わ、わかってます。でも……」
「心配か?」
「……はい」
「まぁ、気持ちはわかるよ。ただ、店長だって分かってるし、客は大事とはいえ、ルールは明確化してキャストを守るつもりもある」
「でも……」
「……大丈夫だ。トリカイ様はなぁ……。ちょっと、色々やらかしてくれてるから」
「え、そうなんですか? ……あれ? 大丈夫、なのに、やらかしてる……って?」
「あー……えーっと……」
歯切れの悪い返事をしながら、ポリポリと頭を掻いた。店長は、キョロキョロと辺りを見渡すと、今まで以上にアヤに近づく。
「ま、アヤなら良いだろ。これはまだ内緒の話なんだが……」
ほとんど面積の無い衣装を直すフリをしながら、店長はアヤへこっそりと耳打ちした。
「あの人、ちょっとこの業界で評判が悪くてね。出禁になってる店も多いんだと」
「……そうなんですね」
「で、だ。お前、うちの系列店、知ってるか?」
「あ、っと……。もっと、大人の人達がお仕事しているお店、ですよね……?」
「そうだ。こっちが少年なら、あっちは青年。でもな、それ以外に、こっちの店と全然違う店の内容があってだなぁ……」
「そ、それは聞いても大丈夫なんですか……?」
「知る機会がないだけで、内部に隠してるわけじゃない。構わねぇけど、聞くと……まぁ、お前も共犯だな」
「なっ……なんのですか!?」
「冗談だよ」
くくく、と意味ありげな笑いを見せて、店長はニヤリと口元を歪めた。
本当に小さな声で呟く。そう呟いたのはアヤで、相手はウミだ。
「だっ……大丈夫! ……です!」
明らかに疲れた顔をしている。それに、視線がキョロキョロと忙しない。
「……でも、全然、大丈夫そうに見えない、けど」
「うっ……じ、実は……あのお客様が、少し苦手で……」
ジッとアヤを見つめた後、ある一点へと視線をずらした。その先にいたのは、一人の青年。
“あぁ――あの人――”
アヤも見たことがあるし、そして接客もしたことのある相手。
「……わかる気がする……」
「アヤさんも、ですか?」
「あの人、新人が好きなんだよね。ボクも、お店に入った当初は何度か指名されたよ」
「そうなんですね……」
「……うん。なんというか、ちょっと、独特、だよね」
「はい……」
この店に来る客は、みんな個性的でどこか影があったり、癖のある人が多い。ユキトのように一直線で優しさのある男性は珍しく、アヤをキープしていなければ場の男の子達が取り合うくらいには人気の出るタイプだ。――つまり、圧倒的にそうではない客が多い。リピート客も多いが、単発の客も多いこの店で、独特、と言われるにはそれなりの理由がある。
「ウミちゃーん! ご指名入りました!」
「あっ……は、はい……!」
「ウミ、いってらっしゃい」
「行ってきます!」
バイバイ、と手を振ってウミを見送る。黒服に案内されウミが向かったのは……。
“あの人、か……”
今、アヤとウミが話していた、独特な人。彼の元へとウミは向かい、ペコリ、と頭を下げて横に座った。
「……あ……あのっ……!」
「ん? アヤ、どうした?」
近くへやってきた店長を呼び止める。
「ボクも、ウミの席に一緒に着けませんか……?」
「トリカイ様のところか? アヤも分かってるだろ? あの人新人しか隣に座らせないの」
「それは……わ、わかってます。でも……」
「心配か?」
「……はい」
「まぁ、気持ちはわかるよ。ただ、店長だって分かってるし、客は大事とはいえ、ルールは明確化してキャストを守るつもりもある」
「でも……」
「……大丈夫だ。トリカイ様はなぁ……。ちょっと、色々やらかしてくれてるから」
「え、そうなんですか? ……あれ? 大丈夫、なのに、やらかしてる……って?」
「あー……えーっと……」
歯切れの悪い返事をしながら、ポリポリと頭を掻いた。店長は、キョロキョロと辺りを見渡すと、今まで以上にアヤに近づく。
「ま、アヤなら良いだろ。これはまだ内緒の話なんだが……」
ほとんど面積の無い衣装を直すフリをしながら、店長はアヤへこっそりと耳打ちした。
「あの人、ちょっとこの業界で評判が悪くてね。出禁になってる店も多いんだと」
「……そうなんですね」
「で、だ。お前、うちの系列店、知ってるか?」
「あ、っと……。もっと、大人の人達がお仕事しているお店、ですよね……?」
「そうだ。こっちが少年なら、あっちは青年。でもな、それ以外に、こっちの店と全然違う店の内容があってだなぁ……」
「そ、それは聞いても大丈夫なんですか……?」
「知る機会がないだけで、内部に隠してるわけじゃない。構わねぇけど、聞くと……まぁ、お前も共犯だな」
「なっ……なんのですか!?」
「冗談だよ」
くくく、と意味ありげな笑いを見せて、店長はニヤリと口元を歪めた。
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