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休息と仕事
【昼】愛されキャラクター@モエ
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“えーっと……モエは……”
ホールを歩きながら、キョロキョロと辺りを見渡す。
“あっ、いた!”
キッチンから、パンケーキを持って出てくるモエがいた。ウチのお店はパンケーキが人気で、オープンすぐの時間でもよく出る。僕も何度か食べているが、甘すぎない山盛りクリームに、沢山のフルーツが乗っている、フルーツのパンケーキが特に好きだ。
“……見てたらなんだか食べたくなってきたな”
危なげなくお客さんの元まで運んだモエは、まだ硬い表情ではあったが、笑顔でお客さんにパンケーキを提供していた。
もしかしたら、あまり心配は要らないのかもしれない。
「……モエ、大丈夫?」
テーブルから戻るモエに声をかける。
「アヤさん。はい、大丈夫です」
僕に気付いたモエは、硬い表情のまま答えた。
「……緊張してる? よね……?」
「まぁ……少し」
ポリポリと、照れた笑いを見せながら頬を掻いている。フイ、と目線を逸らしているのは、恥ずかしいからだろうか。
“……何か分かる気がするな。懐かしいような、不思議な感じ……”
危なげなく配膳しているが、あのことは忘れられないだろうし、このお店にいる限り、程度は違えどすぐにまたやってくる。メンタルケア、なんて言葉にするのは烏滸がましいかもしれないが、少しでもお昼の仕事が楽しいものになれば。
「……ねぇ、甘いもの、好き?」
「えっ? ……えぇ。……実は、ちょっとさっき運んでいたパンケーキ見て、『食べたいな』って思っていて……」
口元が緩んでいる。それに気が付いたのか、一度はこちらに視線を合わせたものの、また逸らされてしまった。
「……あのね、賄い、パンケーキも選べるんだよ」
「えっ!? そうなんですか!?」
嬉しそうにこちらを向く。
「うん。賄いの話、聞いた?」
「……いえ、まだ聞いていなくて」
「あがるのが早い子は、結構みんな食べてるの。普通に、ご飯もの選ぶことの方が多いんだけどね。大体が、運んでると時に『美味しそう! 食べたい!』って思って、お願いするんだよね」
「そうなんですか……」
「僕も、モエが運んでるの見て、パンケーキ食べたくなっちゃった。今日はお願いしちゃおうかな。良かったら、モエもどう?」
「じゃ、じゃあボクも……」
「ふわふわで美味しいんだよ! 楽しみだね!」
にっこり笑って見せると、モエも微笑んでくれた。
「もう少し、頑張ろうね。……パンケーキ目指してさ」
「はい、頑張ります!」
「困ったことがあったら、すぐに教えて。一人で悩んだり、抱え込んじゃダメだよ? ……それなりに、長いから。多分、少しは力になれるからさ」
「……ありがとうございます」
昼とも夜とも、どちらともない言い方でモエに伝えた。……昼でも夜でも、困ったら頼って欲しい。僕だって、沢山悩んで、今でも悩むことはあるのだから。
「じゃあ、戻ろうか」
「はい、何かあったら、言いますね」
ペコリ、と頭を下げて、モエは空いたお皿を下げるべく、テーブルを周りに行った。
“さぁ、僕も仕事仕事!”
お客さんを笑顔にするべく、仕事へとアヤも戻った。
ホールを歩きながら、キョロキョロと辺りを見渡す。
“あっ、いた!”
キッチンから、パンケーキを持って出てくるモエがいた。ウチのお店はパンケーキが人気で、オープンすぐの時間でもよく出る。僕も何度か食べているが、甘すぎない山盛りクリームに、沢山のフルーツが乗っている、フルーツのパンケーキが特に好きだ。
“……見てたらなんだか食べたくなってきたな”
危なげなくお客さんの元まで運んだモエは、まだ硬い表情ではあったが、笑顔でお客さんにパンケーキを提供していた。
もしかしたら、あまり心配は要らないのかもしれない。
「……モエ、大丈夫?」
テーブルから戻るモエに声をかける。
「アヤさん。はい、大丈夫です」
僕に気付いたモエは、硬い表情のまま答えた。
「……緊張してる? よね……?」
「まぁ……少し」
ポリポリと、照れた笑いを見せながら頬を掻いている。フイ、と目線を逸らしているのは、恥ずかしいからだろうか。
“……何か分かる気がするな。懐かしいような、不思議な感じ……”
危なげなく配膳しているが、あのことは忘れられないだろうし、このお店にいる限り、程度は違えどすぐにまたやってくる。メンタルケア、なんて言葉にするのは烏滸がましいかもしれないが、少しでもお昼の仕事が楽しいものになれば。
「……ねぇ、甘いもの、好き?」
「えっ? ……えぇ。……実は、ちょっとさっき運んでいたパンケーキ見て、『食べたいな』って思っていて……」
口元が緩んでいる。それに気が付いたのか、一度はこちらに視線を合わせたものの、また逸らされてしまった。
「……あのね、賄い、パンケーキも選べるんだよ」
「えっ!? そうなんですか!?」
嬉しそうにこちらを向く。
「うん。賄いの話、聞いた?」
「……いえ、まだ聞いていなくて」
「あがるのが早い子は、結構みんな食べてるの。普通に、ご飯もの選ぶことの方が多いんだけどね。大体が、運んでると時に『美味しそう! 食べたい!』って思って、お願いするんだよね」
「そうなんですか……」
「僕も、モエが運んでるの見て、パンケーキ食べたくなっちゃった。今日はお願いしちゃおうかな。良かったら、モエもどう?」
「じゃ、じゃあボクも……」
「ふわふわで美味しいんだよ! 楽しみだね!」
にっこり笑って見せると、モエも微笑んでくれた。
「もう少し、頑張ろうね。……パンケーキ目指してさ」
「はい、頑張ります!」
「困ったことがあったら、すぐに教えて。一人で悩んだり、抱え込んじゃダメだよ? ……それなりに、長いから。多分、少しは力になれるからさ」
「……ありがとうございます」
昼とも夜とも、どちらともない言い方でモエに伝えた。……昼でも夜でも、困ったら頼って欲しい。僕だって、沢山悩んで、今でも悩むことはあるのだから。
「じゃあ、戻ろうか」
「はい、何かあったら、言いますね」
ペコリ、と頭を下げて、モエは空いたお皿を下げるべく、テーブルを周りに行った。
“さぁ、僕も仕事仕事!”
お客さんを笑顔にするべく、仕事へとアヤも戻った。
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