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休息と仕事
【昼】いらっしゃいませ!
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アヤはキープされた三日後、昼のカフェの仕事をした。
夜の仕事は体力の消耗が大きく、ストレスや疲れも溜まりやすい。精神面でも休息させるために、休みを多めに挟んでから、昼の仕事へと戻ることを徹底していた。夜に出勤するキャストが多い日は、数日間はそれなりの人数昼のカフェに出勤することはない。それでもお店が正常に回るのは、キャストの男の子達が多く在籍しているからである。――もっとも、夜ばかりに出ている子もいない訳ではなく、偏りはあるようだがお店が機能する分には全く問題は無かった。
「いらっしゃいませ!」
「お……あ……」
「!」
"――わぁ! ユキトさんだ!"
「お兄ちゃん! 一人かな? 席に座って待っててね!」
「あ、あぁ……」
「どうしたの? あっ、もしかして、緊張してる? ……初めて、だよね?」
「……そうなんだ。その、案内……? を頼む」
「任せて! まずは、空いている席にどうぞ。 メニューは持って行くからね、待っててね?」
ユキトが昼のカフェへと来店した。あの日、終わりにアヤと約束したのである。
【夜】だけでなく、【昼】でも話をしようと。影の部分だけではなく、陽の当たる部分でも顔を合わせよう、と。
“嬉しいな、ちゃんと来てくれたんだ。きちんと僕が、接客しなきゃ!”
男一人での来店は目立つ。が、特段珍しいことではない。女性の方が多いためどうしても目立つことは目立つが、時々うっかり間違えて入ってくる人もいるし、好んで来店する人はみんな、ショタ好きと言うこともあり、だからといってどうこう訝しんだり、好奇の目で見ることはなかった。赤の他人の互いの趣味に、口を出したりしないのだ。
「アヤ、君?」
「なぁに? お兄ちゃん! 今、このパフェが新作でお勧めだよ!」
ニッコリと見せる笑顔は、【夜】とは違う、元気の良いものだった。
それに、相手はユキトである。営業スマイルではない、心からの笑顔。
「じ、じゃあ、そのパフェひとつ。あと、アイスティーを、ストレートで」
「かしこまりました! ちょっと待っててね」
手をヒラヒラとさせ、軽く挨拶をする。今日の制服も、セーラーに短パンだ。
アヤが接客担当になったのはたまたまだった。確かに今か今かと待ち続けてはいたが、百パーセント店内で話ができる保証はなかった。
ユキトは考える。ここで働いている子達は、ほとんどがあの【夜】の店でも働いているらしい。
ユキトはアヤ目当てで行ったため、誰が他に働いているかは知らないが。どれだけお互いがお互いのことに関与しているのかもわからない。よって、アヤに他の子について聞くこともなかった。
ただ、こうやって実際に来店して、時々元気のなさそうな子を見たり、薄っすらと残る痣の跡が見える子を見ると、【愛玩部屋】以外にもうひとつあると言われている、【調教部屋】の存在を思い出す。同行者からちらっと聞いた、物騒な名前。――愛玩という名前も、それなりに物騒なのかもしれないが。
アヤに少しだけ聞いたが、自分は入ったことがないから、詳しい内容は分からないらしい。だが、名前からして、普通ではないだろうことが伺える。
まぁ、【愛玩部屋】の方も、相当なネーミングではあるが。その差を明確にする部分では、ピッタリな分け方なのかもしれない。
夜の仕事は体力の消耗が大きく、ストレスや疲れも溜まりやすい。精神面でも休息させるために、休みを多めに挟んでから、昼の仕事へと戻ることを徹底していた。夜に出勤するキャストが多い日は、数日間はそれなりの人数昼のカフェに出勤することはない。それでもお店が正常に回るのは、キャストの男の子達が多く在籍しているからである。――もっとも、夜ばかりに出ている子もいない訳ではなく、偏りはあるようだがお店が機能する分には全く問題は無かった。
「いらっしゃいませ!」
「お……あ……」
「!」
"――わぁ! ユキトさんだ!"
「お兄ちゃん! 一人かな? 席に座って待っててね!」
「あ、あぁ……」
「どうしたの? あっ、もしかして、緊張してる? ……初めて、だよね?」
「……そうなんだ。その、案内……? を頼む」
「任せて! まずは、空いている席にどうぞ。 メニューは持って行くからね、待っててね?」
ユキトが昼のカフェへと来店した。あの日、終わりにアヤと約束したのである。
【夜】だけでなく、【昼】でも話をしようと。影の部分だけではなく、陽の当たる部分でも顔を合わせよう、と。
“嬉しいな、ちゃんと来てくれたんだ。きちんと僕が、接客しなきゃ!”
男一人での来店は目立つ。が、特段珍しいことではない。女性の方が多いためどうしても目立つことは目立つが、時々うっかり間違えて入ってくる人もいるし、好んで来店する人はみんな、ショタ好きと言うこともあり、だからといってどうこう訝しんだり、好奇の目で見ることはなかった。赤の他人の互いの趣味に、口を出したりしないのだ。
「アヤ、君?」
「なぁに? お兄ちゃん! 今、このパフェが新作でお勧めだよ!」
ニッコリと見せる笑顔は、【夜】とは違う、元気の良いものだった。
それに、相手はユキトである。営業スマイルではない、心からの笑顔。
「じ、じゃあ、そのパフェひとつ。あと、アイスティーを、ストレートで」
「かしこまりました! ちょっと待っててね」
手をヒラヒラとさせ、軽く挨拶をする。今日の制服も、セーラーに短パンだ。
アヤが接客担当になったのはたまたまだった。確かに今か今かと待ち続けてはいたが、百パーセント店内で話ができる保証はなかった。
ユキトは考える。ここで働いている子達は、ほとんどがあの【夜】の店でも働いているらしい。
ユキトはアヤ目当てで行ったため、誰が他に働いているかは知らないが。どれだけお互いがお互いのことに関与しているのかもわからない。よって、アヤに他の子について聞くこともなかった。
ただ、こうやって実際に来店して、時々元気のなさそうな子を見たり、薄っすらと残る痣の跡が見える子を見ると、【愛玩部屋】以外にもうひとつあると言われている、【調教部屋】の存在を思い出す。同行者からちらっと聞いた、物騒な名前。――愛玩という名前も、それなりに物騒なのかもしれないが。
アヤに少しだけ聞いたが、自分は入ったことがないから、詳しい内容は分からないらしい。だが、名前からして、普通ではないだろうことが伺える。
まぁ、【愛玩部屋】の方も、相当なネーミングではあるが。その差を明確にする部分では、ピッタリな分け方なのかもしれない。
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