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黄色
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この世界は色の世界。
色はその個性を表現し、なおかつ存在を表現する。
その中でも、黄色は好奇心を表した。
川辺に打ち上げられたその、両腕を回しても手がつかないほど巨大な、横たわる木の幹にストンと座り、地面に着かない両足をプラプラ遊ばせる。
『あ~あ、何か面白い物はないかな~』
足が濡れるのを構わず川との境に立ち、むにゃむにゃと、流れのせいで形を変える自分の顔が映った水面を見ていた。
そこでふと、川の中ほどまで行くとどうなるかと考えた。
黄色の驚くべきは、その行動力。
飛び込むと、姿が見えなくなった。
そんな様子をなんとはなしに見ていたのは、兄貴肌の青。青色の多いこの道は、青のお気に入りの散歩コースである。
『バカか、あいつは!!』
バカだバカだとは思っていたが、まさかここまでバカだとは思わない。
色持ちである自分達はその特徴が思考の基準として、行動に現れる。
この世界の川は深い。美しいグラデーションが現れるように、この世の神が、深く、広く、この世界を創ったのだ。
『だぁー‼言わんこっちゃない!浮いてこねえし‼‼』
川に飛び込み、深く潜った。青にとって、水の中はとても心地よい。
青の源、青が生まれた場所。
そうして浸っていたが、すぐにすべき事を思い出し、大きな手で、ガッと黄色を捕まえて水面から顔を出し、思いっきり新鮮な空気を一気に吸い込んだ。
咳き込む黄色を叱りつつ、その襟首を掴み、岸へと引きずり上げた。そこで、自分達のいるこの岸にそれ以外の存在が佇んでいるのを知った。
無色透明だ。
そいつは、ただ一言、『....馬鹿じゃないの?ね、黄色』と、呟くように言った。
『本当にそうだ、馬鹿かお前は!奥まで行けば、俺達色はは溶けてなくなる‼』
そうなのだ。深淵は何もかもを溶かして混ぜ、己の糧としてしまうのだ。
そうなれば最期、自分が何だったかも分からなくなる。
『……ゲホッ、ゴホッ、え、そうなの?』
なんとも魔の抜けた返事のせいで、青はため息を付き、無色透明は目を細め、黙ったまま、睨む様に黄色を見ていた。
黄色の長所は好奇心。ただその一方で、''無知"
でもあるのだ。
さっと考えてからすぐに、白は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。その様子から、どうやらこれらの状況に興味を無くしたようだった。
何にも支配されず、何者にも染まらない無色透明は、考えも、行動も、どうも一つの事に落ち着くのが苦手である。
さっと、その場からいなくなってしまった。
おそらく、黄色の危機に反応して側にやってきたのだろう。
『あれは、色々とほっとけない質だからなぁ』
青はぼやき、頭をポリポリかいた。
『はぁ、黄色、学習したろ?これで…』
はて、襟首を掴んでいた筈だが、いつの間にか黄色は手の中からいなくなっていた。
『はぁ、これもまぁ、いつもの事か』
青がまたぼやき、自身も趣味の散歩に戻ることにする。
皆いても、皆混ざらず、濁らず、ともに生きる、この世界の理は、今日も変らず、現在を作り続ける。
はてさて、他には誰に会いましょう?
色はその個性を表現し、なおかつ存在を表現する。
その中でも、黄色は好奇心を表した。
川辺に打ち上げられたその、両腕を回しても手がつかないほど巨大な、横たわる木の幹にストンと座り、地面に着かない両足をプラプラ遊ばせる。
『あ~あ、何か面白い物はないかな~』
足が濡れるのを構わず川との境に立ち、むにゃむにゃと、流れのせいで形を変える自分の顔が映った水面を見ていた。
そこでふと、川の中ほどまで行くとどうなるかと考えた。
黄色の驚くべきは、その行動力。
飛び込むと、姿が見えなくなった。
そんな様子をなんとはなしに見ていたのは、兄貴肌の青。青色の多いこの道は、青のお気に入りの散歩コースである。
『バカか、あいつは!!』
バカだバカだとは思っていたが、まさかここまでバカだとは思わない。
色持ちである自分達はその特徴が思考の基準として、行動に現れる。
この世界の川は深い。美しいグラデーションが現れるように、この世の神が、深く、広く、この世界を創ったのだ。
『だぁー‼言わんこっちゃない!浮いてこねえし‼‼』
川に飛び込み、深く潜った。青にとって、水の中はとても心地よい。
青の源、青が生まれた場所。
そうして浸っていたが、すぐにすべき事を思い出し、大きな手で、ガッと黄色を捕まえて水面から顔を出し、思いっきり新鮮な空気を一気に吸い込んだ。
咳き込む黄色を叱りつつ、その襟首を掴み、岸へと引きずり上げた。そこで、自分達のいるこの岸にそれ以外の存在が佇んでいるのを知った。
無色透明だ。
そいつは、ただ一言、『....馬鹿じゃないの?ね、黄色』と、呟くように言った。
『本当にそうだ、馬鹿かお前は!奥まで行けば、俺達色はは溶けてなくなる‼』
そうなのだ。深淵は何もかもを溶かして混ぜ、己の糧としてしまうのだ。
そうなれば最期、自分が何だったかも分からなくなる。
『……ゲホッ、ゴホッ、え、そうなの?』
なんとも魔の抜けた返事のせいで、青はため息を付き、無色透明は目を細め、黙ったまま、睨む様に黄色を見ていた。
黄色の長所は好奇心。ただその一方で、''無知"
でもあるのだ。
さっと考えてからすぐに、白は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。その様子から、どうやらこれらの状況に興味を無くしたようだった。
何にも支配されず、何者にも染まらない無色透明は、考えも、行動も、どうも一つの事に落ち着くのが苦手である。
さっと、その場からいなくなってしまった。
おそらく、黄色の危機に反応して側にやってきたのだろう。
『あれは、色々とほっとけない質だからなぁ』
青はぼやき、頭をポリポリかいた。
『はぁ、黄色、学習したろ?これで…』
はて、襟首を掴んでいた筈だが、いつの間にか黄色は手の中からいなくなっていた。
『はぁ、これもまぁ、いつもの事か』
青がまたぼやき、自身も趣味の散歩に戻ることにする。
皆いても、皆混ざらず、濁らず、ともに生きる、この世界の理は、今日も変らず、現在を作り続ける。
はてさて、他には誰に会いましょう?
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