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Chapter 2.優雅なペット生活が始まるのかと思いきや、一波乱

2-02 お風呂タイムと見ちゃった狼人間のアレ

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その夜。
シフォンちゃんが「ユート様専用のお風呂です」と言って用意してくれたのは、大きな浴槽にたっぷり張られたお湯だった。

「うおっ、風呂じゃん!! やったぁ、風呂、風呂、お風呂久しぶりぃっ!」

あの鬼畜研究所では、シャワーはもちろん、一度も風呂に入らせてもらえなかった。何故か目が覚めると体がスッキリしていたから、俺が寝ている間に洗われていたのかもしれないけど。
とにかく、風呂に入れるのは嬉しい。

寝室の奥にある浴室はとても広くて、プールみたいなでかい浴槽と、シャワー設備も整っていた。
この世界に電気やガス、というものはないみたいなので、どういう仕組みになっているのかわからないけど、シャワーの形状に関しては俺の暮らしていた現代日本のものとほとんど同じだったので、難なく使いこなすことができた。
シフォンちゃんが俺の体を洗う気満々だったので、俺は手振り身振りで必死に「自分一人で大丈夫」と伝え、彼女に浴室から出て行ってもらった。
俺はさっそく、「ユート様専用のお手入れセットです」とシフォンちゃんからもらったスポンジやボディソープを使い、体を隅々まで洗ってから、お湯に浸かった。

「はああああ~……気持ちぃ……これこれぇ……やっぱ日本人は風呂無しには生きてけないぜぇ……」

まあ、風呂というか、小ぶりなプールみたいで、泳げるぐらい大きいんだけど。
とにかく満足。リラックス。
しかし、さっきから何か、浴室の外でヴァルが騒いでるな。
まさかえんちょうとかいう化け物が出たのか?! と不安に思っていたら、いきなり浴室のドアが開いて、ヴァルが乱入してきた。

「無事かっ、ユート?! 溺れているんじゃないか?!」

「ぎゃああああっ!!!!」

俺はびっくりして、奇声と共に立ち上がろうとして足を滑らせ、派手に水しぶきを上げてしまった。それを見て溺れていると勘違いしたらしいヴァルが、慌てた様子で俺を抱き上げ、風呂から引き上げる。

「もう大丈夫だっ! どこか苦しいところは?! シフォン、タオルを取ってくれ!」

「やめろ、違う、俺は風呂を楽しんでたんだ、離せこのっ、やめろぉっ!! 痛いっ、痛いぃっ!!」

「旦那様、そんなに強く掴んじゃだめです! ニンゲンの骨はもろいんですよ!」

駆けつけてきたシフォンちゃんが、ヴァルにそう叫ぶ。

「ハッ!! そうだった!! すまない、ユート!!」

ヴァルの力がゆるみ、俺は床にそっと下ろされた。そのすきに、俺はダッシュで浴槽に戻り、隅っこに引っ込む。そしてすぐさま、大事な部分を隠せるように、湯の中に三角座りした。シフォンちゃんに、俺のお粗末なナニを見せるわけにはいかない。あそこは死守だ。
そうして、ヴァルに向かって歯をむき出し、犬っぽく威嚇してみる。

「ガルルルルルルゥ……」

通じるかな? 俺は今、怒ってるんだぞ、と。近づくな、と。

「もう、旦那さまったら。だから言ったのに。ニンゲンはお湯に浸かるのが大好きなんですよ。ユート様に合わせてお湯のかさは低く抑えてありますし、ユート様は賢いから、浴槽で溺れたりしませんよ。ねえ、ユート様?」

うんうんと、俺は頷く。さすがシフォンちゃん。わかってる。わからずやでとんちんかんな旦那様を、こてんぱんにやっつけてくれ。そしてそいつを浴室から追い出してくれ。
俺のその期待は、次の瞬間、見事に打ち砕かれた――シフォンちゃんが、ヴァルに向かってこんなことを言ったために。

「そんなにご心配なら、旦那様も一緒にお湯の中に入ったらいかがです? たまには清浄魔法や清潔スライムだけでなく、原始的かつ伝統的な洗浄方法で体を洗ってくださいな。ちょうどお召し物もびしょ濡れになっちゃいましたし、今すぐ脱いじゃってください。全部洗濯に回します。はい、旦那様用のお風呂セット。こうなるんじゃないかって、用意しておいて正解でした」

そう言って彼女は、浴室から出て行った。

え……うそ……。
なんで……。
まさかの、一緒風呂。
悲劇の、同伴入浴。

俺はもうさっさと風呂から上がろうとしたが、それにはヴァルの横を通らなければならない。素っ裸で。いやいやいやいやいや、ないわ。それ、ないわ。
既にあの淫乱椅子で隅々まで見られているが、あの時は不可抗力だった。
できればもう二度と、裸体を晒したくない。

俺のその焦りまくりの心境を知ってか知らずか、ヴァルの方はいそいそと服を脱ぐと、大きなブラシで体を洗い始めた。
……え、ちょい待ち。
狼人間の、裸体、すごい。
首の後ろから肩、背中の一部、上腕、胸のあたりまで、ふさふさの毛で覆われている。今までヴァルは襟の高い服をきっちり着込んでいたので、全然知らなった。こいつってば、こんなにモフモフだったんだ。それに尻尾はもちろん、その周囲の尻部分にも、毛が生えている。ふさふさだ。
しかも筋肉すごい。腹は6つに割れてるし、体毛に覆われていない前腕や脚には、盛り上がった筋肉がこれでもかってぐらい、見える。
どうやら彼は着やせするタイプのようで、服の上からは想像できないほど、逞しい体つきをしていた。身長が高く均整が取れているので、ほれぼれするほど見事なプロポーションだ。まるでどこぞやのジムのCMで「パンパカパーン!」と派手な効果音と共に登場しそうな雰囲気だ。

それに……それに……それに……。

――でかい。

湯煙で霞む浴室内で、5メートルほど離れた場所からチラ見しているということもあり、はっきりとは見えないが、股の間にぶら下がっているそれは、明らかに男性器だろう。
ヴァルは、すごく背が高い。240㎝はあるんじゃないかと思う。その高身長に比例して、あそこも立派な大きさを誇っていた。
勃起していない状態で、あれほどということは、あれがあれしたらあれよあれよとあれ以上になるということで……。

…………。

もう、考えるのやめよ。
頭おかしくなって、のぼせそうだ。
だいたい、俺には関係ないよな?
だってシフォンちゃんが言うには、ヴァルはストイックな紳士で、俺を買ったのはそれ目的じゃないらしいから。
――だったら、あいつのあれの大きさがどんなだって、俺には関係ない。

うん……関係ない……よな?

よな?!

その時、ヴァルが話しかけてきて、俺はビクッと体を震わせた。

「ユート、頼む、このブラシで俺の背中をこすってくれないか?」

嫌だ。
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