幻想彼氏

たいよう一花

文字の大きさ
上 下
57 / 84
Act 2

14. 真也の独り言

しおりを挟む
真也の目の中には燃え盛るような怒りと嫉妬が宿り、その奥には不安がくすぶっている。それを見た皓一は、怖気付きながらも途端に後悔した。軽率な自分の行動が、真也の怒りを招いたのだ。そして、後悔すると同時に痺れるような甘い喜びを感じた。
こんなに嫉妬されるほど、深く愛されているのだ。
皓一は震える息を吐き出し、喉の奥から絞り出すように、声を発した。

「ああ……真也、悪かった。二度と健斗にハグしない。触れさせない。ごめんな……俺、大事なお守りを拾ってもらって……お礼しなきゃって、そればっかり頭にあって……おまえに対して、無神経だった。ごめん……」

皓一は頬に触れている真也の手に自分の手を重ね、さすり、なだめるような視線を送りながら言葉を続けた。

「だけどさ……真也、何も不安になんか、ならなくて大丈夫だ。俺は、おまえのものだ。心も体も、全部……おまえだけのものだ」

皓一は両腕を真也の背中に回し、ギュッと抱きしめた。
フッと、真也の怒りが和らぐ。
真也は皓一を抱きしめ返すと、胸元にすり寄ってくる皓一の頭を愛し気に撫でた。優しい愛撫を受け、皓一は嵐のような真也の怒りが収まったことを感じ、甘えた口調で囁いた。

「ああ……真也、愛してるよ……。この間、楽しかったな……海辺のデート……」

「ああ。とても、幸せなひと時だった。皓一……今度は、どこに行く? 次も泊りにするか?」

「う~ん……当分連休は無理かもしれない。学校が春休み期間に入るからパートさんたちが休みを多めに取るし……ゴールデンウイークも控えてるしな……。でも、どこにも出かけず、ゆっくりするのもいいよな。明日は、そうしようぜ……」

「そうだな、そうしよう。どのみち明日は、昼過ぎまで寝てることになるだろう。……今夜は、一晩中、おまえを抱きたい……いいな?」

真也の低い声が艶を帯び、ねっとりと絡みつくように皓一の耳元に繰り出される。
皓一はぞくぞくと背筋に甘い戦慄が走るのを感じて、真也の声を聞いているだけで勃起しそうな興奮に襲われた。それと同時に、海辺のホテルで初めて真也を後ろに受け入れたときの快感が甦り、体が疼きだす。あれ以来何度か真也と会っているが、仕事で疲れている皓一を気遣って、真也は皓一の体を求めはしなった。二人とも一週間、お預け状態だったのだ。

「うん……俺も、おまえが欲しい……。ああ……なんか……ドキドキしてきた……。やばい、口から心臓が出そうだ」

頬を染め、色っぽい声で冗談を飛ばす皓一の唇に、真也はたまらずかぶりついた。激しく唇を蹂躙し、もみしだき、舌を絡ませ、吸い、互いの唾液を交換する。皓一の息が上がり、苦しそうに喘ぎ出しても、真也は唇を解放しなかった。それどころかますます激しく、舌と唇で皓一をなぶり続ける。

「はあっ、はあっ、……んんぅ……真也……っ……苦し……」

「皓一……少し、眠れ」

やっと唇を離した真也が、皓一のとろんと潤んだ目を覗きながらそう囁く。皓一は途端に眠気に襲われ、脱力して目を閉じた。
眠ってしまった皓一の体をしっかり抱きかかえ、真也は皓一を浴室の床にうつ伏せに寝かせた。そして皓一の後孔にセックスのための準備を施してゆく。
指で入り口付近をもみほぐし、ワセリンをすりこみながら孔を広げ、中を洗浄するために道具を挿入する。
皓一の尻をなぶるうちに、興奮が高まってきた真也の息遣いが、荒くなってゆく。

「しっかり……奥まで、きれいにしてやるからな……皓一。二度目の交接だな……皓一。一度目よりも深く、激しく愛し合おう」

何度も愛しい相手の名前を囁き、卑猥な響きに酔いしれるように淫語を舌に乗せ、真也は一人でその行為を楽しんだ。
洗浄した皓一の直腸内に細い触手を忍ばせ、ねっとりと中を潤わせてゆく。

「今夜はもっと……もっと奥まで、繋がろう、皓一……。一度目より、更に深いところを、えぐってやる……。ヒィヒィ泣かせて、よがらせてやる……おまえが何回イクか、数えておいてやるからな……」

真也の触手が、ぐり、と中を刺激すると、眠ったままの皓一の体がビクンと反応した。

「ここ……イイのか? 皓一……? よし、後でたっぷり可愛がってやる……」

皓一が眠っていることを知りながら、問いかけるように耳元で囁く。そうしながらも、真也は皓一の後孔が十分に濡れて痛みなく受け入れられるよう、ぐちゅぐちゅと粘膜に汁をこすりつけた。

「ああ……可愛い皓一。早くおまえの中に、俺の交接器をねじこみたい……」

真也の下半身が徐々に変化し、うぞうぞと無数の触手が現れはじめる。
真也は前回と同様、上半身の擬態は解かずに、下半身のみ本来の姿を晒した。その方が皓一に気付かれずにセックスできる、というのが一番の理由だが、真也にはもう一つ、思うところがあった。

「キス、というのはなかなかイイな……。精神が高揚し、結びつきが強くなり、絆が深まる行為だ……」

真也の種族には、愛する者同士口づけを交わすという行為はない。だいたい、地球人の口と同じような飲食物を取り入れる器官は、彼らの場合、人目に晒す部分には付いていないのだ。
だから真也は、地球人のキスという行為に少なからず衝撃を受けた。
体に必要な、栄養と大気を取り込む大事な部分を、重ね合わせてお互いの唾液を交換する――その行為に、真也はエロティックな興奮を覚えていた。恐らくその興奮は、地球人が感じるよりも、強く、深く、激しいものだ。真也はキスがすっかり気に入り、人間の姿に擬態した上半身を、快く思うようになっていた。最初はかなり、違和感だったのだが。

「ククッ……。おかしなものだな。あれほど珍妙に感じていたものを、好きになるとは……。皓一、おまえのせいだ。覚悟しろ……唇が腫れ上がるくらい……何度も、何度も……おまえの唇に食らいついて、吸い続けてやる……一晩中……」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

わるいむし

おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。 しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。 「恋人ができたんだ」 恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...