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Act 1
34. 「〇◆▽※★*……」
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かなり踏み込んだ荒々しい表現に皓一は衝撃を受けた。
「一つになりたい」という意味からしてそうだろうと予想はしていたし、真也がそれを吐露するよう導いたのは皓一自身だ。
それでもやはり、まるで驚かないということはなかった。
5年も付き合っていて、真也は一度も、皓一の“後ろ”に触れてきたことがなかったのだから。
「どうして……今まで、言わなかった……そんな素振り、少しも……」
「言えばおまえは怯えるだろう……俺から、逃げるかもしれない……。おまえの想像通りの、バニラセックスで満足な男でいた方が……おまえを失わずに、済む。そのために己の性衝動を抑えることなど、俺にはたやすいことだった」
そこまで愛されていたのか、という思いが、心地良い疼きを伴って皓一の体を熱くさせる。
悩んだことが嘘のように、自然と、答えは出ていた。
「……しても、いいぞ……。いや……俺も、したい……かも…………」
「!!」
真也は驚いて目を見開いた。その驚きの中には、明らかに歓喜が混ざっている。
「皓一……本当に? 男女が誓い合って結婚するように、俺と結ばれてくれるのか? 俺の愛は、一生褪せない。おまえも、俺に永遠の愛を、誓ってくれるか?」
こく、と皓一は頷いた。
「いいよ……おまえが、俺でいいなら……。俺は……俺はさ……おまえと一緒にいると、幸せだと感じる……怖いくらいに……」
皓一は真也への想いを確かめるように、自分の中にある真也への愛を取り出して、手の中で磨くような気持ちで、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「もし、男同士で結婚できるなら、おまえとしたいと……思う」
そう言った直後にハッとして、言葉を続ける。
「で、でもっ、痛いのは嫌だ。俺、血が苦手なんだ。だから、血が出るようなことは勘弁してくれ……。それに……お、おまえの、でか過ぎだから、入らないぞ……多分…………」
「大丈夫、いきなりコレを入れたりしない。おまえの体を痛めつけたり、おまえが恐怖を感じるようなことは、一切しない」
「でも、おまえ、俺の体を縛りたいんだろ……。てことは、おまえサド…………」
「違う!」
憤慨を色濃くにじませた、強い否定。思いがけない真也の激高に、皓一はビクッと体を震わせた。それを見て真也は途端に大声を上げたことを後悔し、優しく皓一の肩を抱き寄せると言った。
「大声を上げてすまない、皓一。違うんだ、俺は確かに変態だという自覚があるが、それはおまえを痛めつける類のものじゃない。おまえへの愛情度がもう変態レベルというか……執着の仕方が異常とうか……障壁など軽く飛び越えてしまうところが変態というか…………クソッ、この言語の語彙(ごい)には、ぴったりな言葉がない! 〇◆▽※★*!!」
「何……今の、なんて言った? 何語?」
真也が最後に発した言葉の不可思議な発音に、皓一は大笑いした。戸惑いより、その音が醸し出すユニークさが、ツボに入ったのだ。
「さっきのもう一回、もう一回言ってくれ!」
「…………。……〇◆▽※★*…………」
不承不承という顔をしてアンコールに応えた真也は、身をよじって笑っている皓一に呆れながら言った。
「そんなに……おかしいか……今の言葉……」
「なんかっ、なんか! 音でコチョコチョされてるみたいな、そんな感じ!」
「…………なるほど……」
真也は舌なめずりすると、皓一の耳元で同じ言葉を囁いた。途端に、皓一が湯の中で手足をばたつかせて奇声じみた笑い声をあげる。お返しとばかりに、皓一は真也の胸を叩いたり脇腹をコチョコチョさせたりして反撃し、湯を跳ね飛ばした。
そうやって二人はバカップルよろしく、しばらくバスタブの中でじゃれあっていたが、やがて皓一はぐったりして真也の体に身を預けてきた。
「どうした……皓一……?」
「なんか……酸欠……? のぼせ……? 気持ち悪い……。おまえは……大丈夫か……?」
「!!」
バタン!と派手な音がして、バスルームの扉が勢いよく開く。同時に換気扇の回る音がして、皓一はフラフラする頭で「あれ……?」と疑問に思った。真也はすぐ傍にいて、皓一の体をしっかり抱きしめてくれている。それなのになぜ、離れた場所にある扉が全開したり、バスルームの外にある換気扇のスイッチが押されたのだろう?
「大丈夫だ、皓一、少し眠っているといい。目が覚めたら、気分が良くなっている」
真也の低い美声が、優しい愛撫のように皓一の耳に届く。真也に任せていればすべて大丈夫、と言う気がして、心地よい眠気に誘われた皓一は、うっとりと目を閉じた。
「一つになりたい」という意味からしてそうだろうと予想はしていたし、真也がそれを吐露するよう導いたのは皓一自身だ。
それでもやはり、まるで驚かないということはなかった。
5年も付き合っていて、真也は一度も、皓一の“後ろ”に触れてきたことがなかったのだから。
「どうして……今まで、言わなかった……そんな素振り、少しも……」
「言えばおまえは怯えるだろう……俺から、逃げるかもしれない……。おまえの想像通りの、バニラセックスで満足な男でいた方が……おまえを失わずに、済む。そのために己の性衝動を抑えることなど、俺にはたやすいことだった」
そこまで愛されていたのか、という思いが、心地良い疼きを伴って皓一の体を熱くさせる。
悩んだことが嘘のように、自然と、答えは出ていた。
「……しても、いいぞ……。いや……俺も、したい……かも…………」
「!!」
真也は驚いて目を見開いた。その驚きの中には、明らかに歓喜が混ざっている。
「皓一……本当に? 男女が誓い合って結婚するように、俺と結ばれてくれるのか? 俺の愛は、一生褪せない。おまえも、俺に永遠の愛を、誓ってくれるか?」
こく、と皓一は頷いた。
「いいよ……おまえが、俺でいいなら……。俺は……俺はさ……おまえと一緒にいると、幸せだと感じる……怖いくらいに……」
皓一は真也への想いを確かめるように、自分の中にある真也への愛を取り出して、手の中で磨くような気持ちで、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「もし、男同士で結婚できるなら、おまえとしたいと……思う」
そう言った直後にハッとして、言葉を続ける。
「で、でもっ、痛いのは嫌だ。俺、血が苦手なんだ。だから、血が出るようなことは勘弁してくれ……。それに……お、おまえの、でか過ぎだから、入らないぞ……多分…………」
「大丈夫、いきなりコレを入れたりしない。おまえの体を痛めつけたり、おまえが恐怖を感じるようなことは、一切しない」
「でも、おまえ、俺の体を縛りたいんだろ……。てことは、おまえサド…………」
「違う!」
憤慨を色濃くにじませた、強い否定。思いがけない真也の激高に、皓一はビクッと体を震わせた。それを見て真也は途端に大声を上げたことを後悔し、優しく皓一の肩を抱き寄せると言った。
「大声を上げてすまない、皓一。違うんだ、俺は確かに変態だという自覚があるが、それはおまえを痛めつける類のものじゃない。おまえへの愛情度がもう変態レベルというか……執着の仕方が異常とうか……障壁など軽く飛び越えてしまうところが変態というか…………クソッ、この言語の語彙(ごい)には、ぴったりな言葉がない! 〇◆▽※★*!!」
「何……今の、なんて言った? 何語?」
真也が最後に発した言葉の不可思議な発音に、皓一は大笑いした。戸惑いより、その音が醸し出すユニークさが、ツボに入ったのだ。
「さっきのもう一回、もう一回言ってくれ!」
「…………。……〇◆▽※★*…………」
不承不承という顔をしてアンコールに応えた真也は、身をよじって笑っている皓一に呆れながら言った。
「そんなに……おかしいか……今の言葉……」
「なんかっ、なんか! 音でコチョコチョされてるみたいな、そんな感じ!」
「…………なるほど……」
真也は舌なめずりすると、皓一の耳元で同じ言葉を囁いた。途端に、皓一が湯の中で手足をばたつかせて奇声じみた笑い声をあげる。お返しとばかりに、皓一は真也の胸を叩いたり脇腹をコチョコチョさせたりして反撃し、湯を跳ね飛ばした。
そうやって二人はバカップルよろしく、しばらくバスタブの中でじゃれあっていたが、やがて皓一はぐったりして真也の体に身を預けてきた。
「どうした……皓一……?」
「なんか……酸欠……? のぼせ……? 気持ち悪い……。おまえは……大丈夫か……?」
「!!」
バタン!と派手な音がして、バスルームの扉が勢いよく開く。同時に換気扇の回る音がして、皓一はフラフラする頭で「あれ……?」と疑問に思った。真也はすぐ傍にいて、皓一の体をしっかり抱きしめてくれている。それなのになぜ、離れた場所にある扉が全開したり、バスルームの外にある換気扇のスイッチが押されたのだろう?
「大丈夫だ、皓一、少し眠っているといい。目が覚めたら、気分が良くなっている」
真也の低い美声が、優しい愛撫のように皓一の耳に届く。真也に任せていればすべて大丈夫、と言う気がして、心地よい眠気に誘われた皓一は、うっとりと目を閉じた。
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