28 / 84
Act 1
28. 海辺の豪華なホテル
しおりを挟む
辿り着いたホテルは、外国の建物のような豪華で優美な高級リゾートホテルだった。
駐車場に車をとめ、真也と共にホテルのスタッフの誘導でエントランスへと足を運んだ皓一は、まさに「非日常的空間」のキラキラした眩しさに、目眩がしてきた。
ロビーに足を踏み入れると、皓一は真也の勧めでソファに腰かけ、荷物を預けに行った真也を待った。
皓一は呆けた顔のまま、ひょっとして自分はまだ真也の車の中で眠っていて、夢を見ているんじゃないかと思い、手の甲をつねってみる。
「……痛い……」
しかし皓一の不安は払拭されはしなかった。
これは痛み付きの夢かもしれない……などと思い始めた皓一は、今度は身に着けたボディバッグからスマホを取り出し、自分の知識外の情報などを探し始めた。夢じゃなければ、自分の知らないことが出てくるはずだ、と思って。そこへ真也が戻って来て言った。
「おいおい……そんなに、退屈か? スマホはしまえ。この世の粋(すい)を集めたような素晴らしい男が目の前にいるのに、必要ないだろ? さあ、俺を食い入るように見つめていいんだぞ? いくらでも」
パチン、と、真也がウインクしてきた。まるで映画かドラマの中のワンシーンを切り取ったかのように、甘くスマートな仕草だった。皓一は息が止まるのを感じ、真っ赤な顔で周囲を見渡した。まばらとはいえ、ロビーには何人か客がいるし、ホテルスタッフもいる。幸い、誰もこちらを窺っている様子はない。安堵した皓一は早くこの煌びやかな空間から離れようと、出入り口に向かって歩き始める。慌てて追いかけてきた真也は、外に出て二人っきりになると悲し気な声で言った。
「皓一、怒っているのか? 気に入らなかったか? すまん……」
「ちがっ、違うよ、怒ってないし、気に入らないわけじゃない。すごく素敵なところだ、連れてきてもらえて嬉しいよ、本当に。……ただ、俺には贅沢すぎて……。あのホテル、恐ろしく高そうだろ……。……い、いくらした?」
「全部俺が払うから心配するな」
「……だからさ……そういうの、だめだと……」
「何だ? 恋人からの誕生日プレゼントを受け取らないとか言うんじゃないだろうな?」
「誕生日……俺、9月だからまだ先だけど……今、3月だし」
「もちろん知っている。今日のはプレゼント第1弾だ。第100弾まであるから、今から小出しにしていかないと間に合わないだろ。常に先を見据えて行動する男だぞ、俺は!」
「どやぁ!」とばかりに鼻息を噴出させながら真也がいばる。その様子が可笑しくて、皓一は思わず笑ってしまった。
皓一の態度が軟化した気配を見計らって、真也はすかさず皓一の手を握りしめた。男同士で手を繋ぐ、というハードルの高い行為に、皓一が焦って周囲を見回す。幸い、辺りは静かで、車通りもなく歩道を歩いている人もいない。
「いいだろ……。こんなところ、知り合いもいない。この観光地は今、比較的シーズンオフだし、ひと気もあまりない。俺はずっと、おまえと手を繋いで歩きたいと思っていた……。頼む、振り解かないでくれ……」
真也の大きな手が、熱を伴って皓一の手を包み込む。その温もりと共に真也の愛情をひしひしと感じた皓一は、ギュッと手を握り返して言った。
「俺も……おまえと手を繋いで歩きたいと、ずっと思ってた……」
顔を真っ赤にして、皓一はチラッ、と真也を仰ぎ見る。さぞかし嬉しそうに笑っているだろうと想像したのに、真也は泣いていた。
「おまっ……! 何で、泣くんだよ?!」
「……泣いてない。目にゴミが入ったため、洗浄作用が発動しただけだ」
「ゴミ……。どれ、見せてみろ、取ってやる」
皓一が真也のシャツの胸元を掴んで引き寄せようとしたとき、いきなり足が地面から浮き上がった。何が起こったのか考える間もなく、真也によって抱き上げられた皓一は狭い路地に押し込まれ、いきなり唇を奪われた。
「んっ……ふ……」
「皓一、愛してる……」
「ばか……。おまえ、いきなり過ぎ……」
バカップル丸出しだな、と皓一は真也の腕の中でクスクス笑いだした。
「勃つからこれ以上やめろ……海辺、散歩するんだろ?」
駐車場に車をとめ、真也と共にホテルのスタッフの誘導でエントランスへと足を運んだ皓一は、まさに「非日常的空間」のキラキラした眩しさに、目眩がしてきた。
ロビーに足を踏み入れると、皓一は真也の勧めでソファに腰かけ、荷物を預けに行った真也を待った。
皓一は呆けた顔のまま、ひょっとして自分はまだ真也の車の中で眠っていて、夢を見ているんじゃないかと思い、手の甲をつねってみる。
「……痛い……」
しかし皓一の不安は払拭されはしなかった。
これは痛み付きの夢かもしれない……などと思い始めた皓一は、今度は身に着けたボディバッグからスマホを取り出し、自分の知識外の情報などを探し始めた。夢じゃなければ、自分の知らないことが出てくるはずだ、と思って。そこへ真也が戻って来て言った。
「おいおい……そんなに、退屈か? スマホはしまえ。この世の粋(すい)を集めたような素晴らしい男が目の前にいるのに、必要ないだろ? さあ、俺を食い入るように見つめていいんだぞ? いくらでも」
パチン、と、真也がウインクしてきた。まるで映画かドラマの中のワンシーンを切り取ったかのように、甘くスマートな仕草だった。皓一は息が止まるのを感じ、真っ赤な顔で周囲を見渡した。まばらとはいえ、ロビーには何人か客がいるし、ホテルスタッフもいる。幸い、誰もこちらを窺っている様子はない。安堵した皓一は早くこの煌びやかな空間から離れようと、出入り口に向かって歩き始める。慌てて追いかけてきた真也は、外に出て二人っきりになると悲し気な声で言った。
「皓一、怒っているのか? 気に入らなかったか? すまん……」
「ちがっ、違うよ、怒ってないし、気に入らないわけじゃない。すごく素敵なところだ、連れてきてもらえて嬉しいよ、本当に。……ただ、俺には贅沢すぎて……。あのホテル、恐ろしく高そうだろ……。……い、いくらした?」
「全部俺が払うから心配するな」
「……だからさ……そういうの、だめだと……」
「何だ? 恋人からの誕生日プレゼントを受け取らないとか言うんじゃないだろうな?」
「誕生日……俺、9月だからまだ先だけど……今、3月だし」
「もちろん知っている。今日のはプレゼント第1弾だ。第100弾まであるから、今から小出しにしていかないと間に合わないだろ。常に先を見据えて行動する男だぞ、俺は!」
「どやぁ!」とばかりに鼻息を噴出させながら真也がいばる。その様子が可笑しくて、皓一は思わず笑ってしまった。
皓一の態度が軟化した気配を見計らって、真也はすかさず皓一の手を握りしめた。男同士で手を繋ぐ、というハードルの高い行為に、皓一が焦って周囲を見回す。幸い、辺りは静かで、車通りもなく歩道を歩いている人もいない。
「いいだろ……。こんなところ、知り合いもいない。この観光地は今、比較的シーズンオフだし、ひと気もあまりない。俺はずっと、おまえと手を繋いで歩きたいと思っていた……。頼む、振り解かないでくれ……」
真也の大きな手が、熱を伴って皓一の手を包み込む。その温もりと共に真也の愛情をひしひしと感じた皓一は、ギュッと手を握り返して言った。
「俺も……おまえと手を繋いで歩きたいと、ずっと思ってた……」
顔を真っ赤にして、皓一はチラッ、と真也を仰ぎ見る。さぞかし嬉しそうに笑っているだろうと想像したのに、真也は泣いていた。
「おまっ……! 何で、泣くんだよ?!」
「……泣いてない。目にゴミが入ったため、洗浄作用が発動しただけだ」
「ゴミ……。どれ、見せてみろ、取ってやる」
皓一が真也のシャツの胸元を掴んで引き寄せようとしたとき、いきなり足が地面から浮き上がった。何が起こったのか考える間もなく、真也によって抱き上げられた皓一は狭い路地に押し込まれ、いきなり唇を奪われた。
「んっ……ふ……」
「皓一、愛してる……」
「ばか……。おまえ、いきなり過ぎ……」
バカップル丸出しだな、と皓一は真也の腕の中でクスクス笑いだした。
「勃つからこれ以上やめろ……海辺、散歩するんだろ?」
19
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる