幻想彼氏

たいよう一花

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Act 1

28. 海辺の豪華なホテル

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辿り着いたホテルは、外国の建物のような豪華で優美な高級リゾートホテルだった。
駐車場に車をとめ、真也と共にホテルのスタッフの誘導でエントランスへと足を運んだ皓一は、まさに「非日常的空間」のキラキラした眩しさに、目眩がしてきた。

ロビーに足を踏み入れると、皓一は真也の勧めでソファに腰かけ、荷物を預けに行った真也を待った。
皓一は呆けた顔のまま、ひょっとして自分はまだ真也の車の中で眠っていて、夢を見ているんじゃないかと思い、手の甲をつねってみる。

「……痛い……」

しかし皓一の不安は払拭されはしなかった。
これは痛み付きの夢かもしれない……などと思い始めた皓一は、今度は身に着けたボディバッグからスマホを取り出し、自分の知識外の情報などを探し始めた。夢じゃなければ、自分の知らないことが出てくるはずだ、と思って。そこへ真也が戻って来て言った。

「おいおい……そんなに、退屈か? スマホはしまえ。この世の粋(すい)を集めたような素晴らしい男が目の前にいるのに、必要ないだろ? さあ、俺を食い入るように見つめていいんだぞ? いくらでも」

パチン、と、真也がウインクしてきた。まるで映画かドラマの中のワンシーンを切り取ったかのように、甘くスマートな仕草だった。皓一は息が止まるのを感じ、真っ赤な顔で周囲を見渡した。まばらとはいえ、ロビーには何人か客がいるし、ホテルスタッフもいる。幸い、誰もこちらを窺っている様子はない。安堵した皓一は早くこの煌びやかな空間から離れようと、出入り口に向かって歩き始める。慌てて追いかけてきた真也は、外に出て二人っきりになると悲し気な声で言った。

「皓一、怒っているのか? 気に入らなかったか? すまん……」

「ちがっ、違うよ、怒ってないし、気に入らないわけじゃない。すごく素敵なところだ、連れてきてもらえて嬉しいよ、本当に。……ただ、俺には贅沢すぎて……。あのホテル、恐ろしく高そうだろ……。……い、いくらした?」

「全部俺が払うから心配するな」

「……だからさ……そういうの、だめだと……」

「何だ? 恋人からの誕生日プレゼントを受け取らないとか言うんじゃないだろうな?」

「誕生日……俺、9月だからまだ先だけど……今、3月だし」

「もちろん知っている。今日のはプレゼント第1弾だ。第100弾まであるから、今から小出しにしていかないと間に合わないだろ。常に先を見据えて行動する男だぞ、俺は!」

「どやぁ!」とばかりに鼻息を噴出させながら真也がいばる。その様子が可笑しくて、皓一は思わず笑ってしまった。
皓一の態度が軟化した気配を見計らって、真也はすかさず皓一の手を握りしめた。男同士で手を繋ぐ、というハードルの高い行為に、皓一が焦って周囲を見回す。幸い、辺りは静かで、車通りもなく歩道を歩いている人もいない。

「いいだろ……。こんなところ、知り合いもいない。この観光地は今、比較的シーズンオフだし、ひと気もあまりない。俺はずっと、おまえと手を繋いで歩きたいと思っていた……。頼む、振り解かないでくれ……」

真也の大きな手が、熱を伴って皓一の手を包み込む。その温もりと共に真也の愛情をひしひしと感じた皓一は、ギュッと手を握り返して言った。

「俺も……おまえと手を繋いで歩きたいと、ずっと思ってた……」

顔を真っ赤にして、皓一はチラッ、と真也を仰ぎ見る。さぞかし嬉しそうに笑っているだろうと想像したのに、真也は泣いていた。

「おまっ……! 何で、泣くんだよ?!」

「……泣いてない。目にゴミが入ったため、洗浄作用が発動しただけだ」

「ゴミ……。どれ、見せてみろ、取ってやる」

皓一が真也のシャツの胸元を掴んで引き寄せようとしたとき、いきなり足が地面から浮き上がった。何が起こったのか考える間もなく、真也によって抱き上げられた皓一は狭い路地に押し込まれ、いきなり唇を奪われた。

「んっ……ふ……」

「皓一、愛してる……」

「ばか……。おまえ、いきなり過ぎ……」

バカップル丸出しだな、と皓一は真也の腕の中でクスクス笑いだした。

「勃つからこれ以上やめろ……海辺、散歩するんだろ?」
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感想 17

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