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Act 1
27. ドライブ
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皓一はゲイであることを隠してることもあって、今まで積極的に相手を探したことも無かったし、奇跡的に恋人関係になった真也とも挿入無しのバニラセックスしか経験がない。
今夜、もしかして真也は求めてくるかもしれない。
それにどう応じるべきか、皓一にはまるで分らなかった。相手が真也なら挿入を許してもよい、という気持ちがある反面、後ろを使うことに恐怖と抵抗も感じた。
車の揺れに誘発され、皓一の瞼がだんだん重くなってくる。高級車ならではの乗り心地の良さ、体を包み込むようなシートの快適さ、そして真也の運転テクニックの巧みさが合わさって、皓一はうとうとし始めた。あまりの気持ち良さに皓一はもう、昨夜の悩み事など、どうでもよくなってきた。
考えても分からないことは保留するに限る、と皓一は半ば投げやりな気分でなるようになるさ、と自分に言いきかせた。
だいたい、怯える必要など一切ないのだ。真也が皓一の嫌がることを無理強いしたことなど、今まで一度もなかったのだから。
もし真也が求めてきて、どうしても怖くなればそう言えばいいだけのことだ。いつだって、真也は皓一に優しい。そう――理想の恋人だ。
(そうさ、俺の理想……俺の考えた理想の……彼氏……だもんな……)
皓一の頭の片隅で、ちらりと「?」が浮かんだが、まもなく訪れた眠りにかき消されていった。
いつの間にかぐっすり眠りこんでいた皓一は、真也の呼ぶ声で目を覚ました。
「起きたか、皓一? もうすぐホテルに着く。まだチェックインの時間まで間があるから、ホテルに荷物を預けて辺りを散策に行こう」
「うん、分かった……ふわぁ……よく寝たぁ……真也、ありがとなぁ…………」
目をこすって車の窓から周囲を見渡し、皓一は口をあんぐり開けた。
「お……? え? ええっ? 外国? ここ、外国?! 何、どこ?!」
「落ち着け。日本だ」
美しく街路樹の並ぶ、ゆったりとした車道の先――そこには南欧で見られるような優美な白い建物がいくつも、一つの街を形作るように立ち並んでいた。そしてその向こう側には、チラチラと海が見える。今回の旅行のプランは真也にまかせっきりだったため、皓一は詳しい目的地も知らずにいたのだが、まさかこんな豪華なリゾート地だったとは。
「ほぇぇぇぇ……」
驚きのあまり素っ頓狂な声を上げた皓一の様子を、真也は面白そうに窺っていた。
「おまえを驚かそうと思って、伏せていた。たまには日常とかけ離れた場所でデートするのもいいだろう?」
どうりで行き先やホテルの場所を尋ねるたび、真也ははっきりと言わずにお茶をにごしていたわけだ――皓一はそう納得して、まるでサプライズデートみたいなシチュエーションに胸を躍らせた。
今夜、もしかして真也は求めてくるかもしれない。
それにどう応じるべきか、皓一にはまるで分らなかった。相手が真也なら挿入を許してもよい、という気持ちがある反面、後ろを使うことに恐怖と抵抗も感じた。
車の揺れに誘発され、皓一の瞼がだんだん重くなってくる。高級車ならではの乗り心地の良さ、体を包み込むようなシートの快適さ、そして真也の運転テクニックの巧みさが合わさって、皓一はうとうとし始めた。あまりの気持ち良さに皓一はもう、昨夜の悩み事など、どうでもよくなってきた。
考えても分からないことは保留するに限る、と皓一は半ば投げやりな気分でなるようになるさ、と自分に言いきかせた。
だいたい、怯える必要など一切ないのだ。真也が皓一の嫌がることを無理強いしたことなど、今まで一度もなかったのだから。
もし真也が求めてきて、どうしても怖くなればそう言えばいいだけのことだ。いつだって、真也は皓一に優しい。そう――理想の恋人だ。
(そうさ、俺の理想……俺の考えた理想の……彼氏……だもんな……)
皓一の頭の片隅で、ちらりと「?」が浮かんだが、まもなく訪れた眠りにかき消されていった。
いつの間にかぐっすり眠りこんでいた皓一は、真也の呼ぶ声で目を覚ました。
「起きたか、皓一? もうすぐホテルに着く。まだチェックインの時間まで間があるから、ホテルに荷物を預けて辺りを散策に行こう」
「うん、分かった……ふわぁ……よく寝たぁ……真也、ありがとなぁ…………」
目をこすって車の窓から周囲を見渡し、皓一は口をあんぐり開けた。
「お……? え? ええっ? 外国? ここ、外国?! 何、どこ?!」
「落ち着け。日本だ」
美しく街路樹の並ぶ、ゆったりとした車道の先――そこには南欧で見られるような優美な白い建物がいくつも、一つの街を形作るように立ち並んでいた。そしてその向こう側には、チラチラと海が見える。今回の旅行のプランは真也にまかせっきりだったため、皓一は詳しい目的地も知らずにいたのだが、まさかこんな豪華なリゾート地だったとは。
「ほぇぇぇぇ……」
驚きのあまり素っ頓狂な声を上げた皓一の様子を、真也は面白そうに窺っていた。
「おまえを驚かそうと思って、伏せていた。たまには日常とかけ離れた場所でデートするのもいいだろう?」
どうりで行き先やホテルの場所を尋ねるたび、真也ははっきりと言わずにお茶をにごしていたわけだ――皓一はそう納得して、まるでサプライズデートみたいなシチュエーションに胸を躍らせた。
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