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Act 1
12. 現実化した幻想彼氏「高羽真也」2
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真也は皓一の唇を解放すると、挑発的な瞳を健斗に注ぎ、濡れた唇を舐めまわしつつ言った。
「ただの友達が、演技でここまでするかよ? 俺は高羽真也、皓一の恋人だ。俺たちは愛し合ってる。おまえの入る隙は1ヨクトメートルもないぜ。諦めろ」
「………………」
普通は「1ミリもない」と表現するところを、わざわざ極小単位のヨクトに言い変えているところが、嫌みったらしい。健斗はそう思いながら、不敵な笑みを浮かべ余裕しゃくしゃくの真也を、苛烈な視線を注いで睨み付けている。
二人の男が火花を散らす中、皓一は息を乱しながら、へばりついてくる真也に肘鉄を食らわせていた。そして酸素不足と羞恥で顔を真っ赤に染めながら、苦しい息の合間に真也を怒鳴りつける。
「このっ、何てことするんだ、バカやろう! 離れろよっ! だいたいなんでおまえ、俺がここにいるって知ってるんだ?!」
「おまえが今夜の俺との約束をキャンセルする電話を寄越したとき、俺はすでに和友スーパーの外でおまえが出てくるのを待ってたんだよ……。なんか嫌な予感がしたんでな、そのまま帰らずにこっそり様子を見てたら……おまえがそこの学生君と出てきたもんで、あとを尾(つ)けた。皓一、おまえ、そこの学生君に告白でもされたんだろう?」
皓一はいぶかしげに眉をひそめた。真也と健斗は、面識がない。お互いを知らないはずなのに、真也はどうして健斗が皓一に告白することを知ったのだろう?! その皓一の疑問に答えるように、真也は続けて言った。
「俺は皓一が働いている姿を見るのが好きで、時々スーパーに来てはこっそり見てた……仕事の邪魔しちゃ悪いから、おまえに気付かれないようにな。そのうち、皓一の周りをいつもウロチョロしてる若造に気付いたわけだ……そいつが、皓一に気があるのもすぐに分かった」
真也は視線を皓一から健斗に移すと続けた。
「おい学生、俺は親切だからな、告白する時間を与えてやったぞ、感謝しろ。良かったな、見事に玉砕できて、スッキリしたろ。皓一のことはすっぱり諦めて、他をあたれ。それだけ見てくれがいいんだ、すぐに相手が見つかるさ」
皓一は、真也の乱暴な言い方を諫(いさ)めようと口を開きかけた。しかし皓一が言葉を発する前に、健斗の声が個室に響く。
「……あんた、誰なんだ?」
その声は静かだったが、ひやっとするほど冷たく、僅かに困惑の混じった怒りが込められていた。健斗は眉をひそめ、見えない何かに目を凝らし、相手の正体を見極めようとしているようだった。
「あんた……変だ。……おかしい……。意識を集中させてあんたを見ると、姿がブレる。……化けてるのか……?! 正体を、現せよ。皓一さんを、どうするつもりだ?!」
健斗からの苛烈な視線を真っ向から受け止めながら、真也は器用に片眉だけを上げ、皮肉気に唇を歪ませた。
「おいおい、どんだけ飲んだんだよ? 往生際の悪い奴だな。俺は高羽真也。皓一の恋人だ。おまえ、日本語理解できないのか?」
そう答えた真也に、健斗はなおも問いかける。
暑くもないのに、健斗の額には汗が浮かんでいた。
「あんた、誰なんだ……。皓一さんを騙して、どうするつもりだ。皓一さんに危害を加えるつもりなら、俺は逃げずに戦う!」
「ただの友達が、演技でここまでするかよ? 俺は高羽真也、皓一の恋人だ。俺たちは愛し合ってる。おまえの入る隙は1ヨクトメートルもないぜ。諦めろ」
「………………」
普通は「1ミリもない」と表現するところを、わざわざ極小単位のヨクトに言い変えているところが、嫌みったらしい。健斗はそう思いながら、不敵な笑みを浮かべ余裕しゃくしゃくの真也を、苛烈な視線を注いで睨み付けている。
二人の男が火花を散らす中、皓一は息を乱しながら、へばりついてくる真也に肘鉄を食らわせていた。そして酸素不足と羞恥で顔を真っ赤に染めながら、苦しい息の合間に真也を怒鳴りつける。
「このっ、何てことするんだ、バカやろう! 離れろよっ! だいたいなんでおまえ、俺がここにいるって知ってるんだ?!」
「おまえが今夜の俺との約束をキャンセルする電話を寄越したとき、俺はすでに和友スーパーの外でおまえが出てくるのを待ってたんだよ……。なんか嫌な予感がしたんでな、そのまま帰らずにこっそり様子を見てたら……おまえがそこの学生君と出てきたもんで、あとを尾(つ)けた。皓一、おまえ、そこの学生君に告白でもされたんだろう?」
皓一はいぶかしげに眉をひそめた。真也と健斗は、面識がない。お互いを知らないはずなのに、真也はどうして健斗が皓一に告白することを知ったのだろう?! その皓一の疑問に答えるように、真也は続けて言った。
「俺は皓一が働いている姿を見るのが好きで、時々スーパーに来てはこっそり見てた……仕事の邪魔しちゃ悪いから、おまえに気付かれないようにな。そのうち、皓一の周りをいつもウロチョロしてる若造に気付いたわけだ……そいつが、皓一に気があるのもすぐに分かった」
真也は視線を皓一から健斗に移すと続けた。
「おい学生、俺は親切だからな、告白する時間を与えてやったぞ、感謝しろ。良かったな、見事に玉砕できて、スッキリしたろ。皓一のことはすっぱり諦めて、他をあたれ。それだけ見てくれがいいんだ、すぐに相手が見つかるさ」
皓一は、真也の乱暴な言い方を諫(いさ)めようと口を開きかけた。しかし皓一が言葉を発する前に、健斗の声が個室に響く。
「……あんた、誰なんだ?」
その声は静かだったが、ひやっとするほど冷たく、僅かに困惑の混じった怒りが込められていた。健斗は眉をひそめ、見えない何かに目を凝らし、相手の正体を見極めようとしているようだった。
「あんた……変だ。……おかしい……。意識を集中させてあんたを見ると、姿がブレる。……化けてるのか……?! 正体を、現せよ。皓一さんを、どうするつもりだ?!」
健斗からの苛烈な視線を真っ向から受け止めながら、真也は器用に片眉だけを上げ、皮肉気に唇を歪ませた。
「おいおい、どんだけ飲んだんだよ? 往生際の悪い奴だな。俺は高羽真也。皓一の恋人だ。おまえ、日本語理解できないのか?」
そう答えた真也に、健斗はなおも問いかける。
暑くもないのに、健斗の額には汗が浮かんでいた。
「あんた、誰なんだ……。皓一さんを騙して、どうするつもりだ。皓一さんに危害を加えるつもりなら、俺は逃げずに戦う!」
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