虹の月 貝殻の雲

たいよう一花

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Ⅱ 幽閉

24. シルファの異変(1)

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居間の机の上で、レイは紙の上に印を付け、溜息をついた。
この<最果ての間>に閉じ込められてから、いったいどれくらい、溜息をついただろう。

「もう、十二日目か……」

外は雨が降っているらしく、内庭に面した居間でさえ、昼とは思えないほど薄暗い。

机の上に置かれた一枚の紙は、レイが自分で作った暦だった。
隔離された空間に閉じ込められていると、時間や日数の感覚が薄れてくる。危機感を覚えたレイは、過ぎた日々に斜線を引き、忘れないよう、書きとめていた。

幽閉生活が始まったばかりの頃、すぐにでも脱出するつもりで意気込んでいたのが、なつかしい。今では万策尽き、日中のほとんどを筋力作りと魔道の鍛錬にいそしんでいる。
温存した甲斐あって魔力は完全に満ち、鍛錬に使う余裕も出ていた。
今なら存分に、大技も繰り出せるだろう。

「サライヤに……会ってみるか……」

もう恥ずかしいなどと、言ってる場合ではない。
脱出するために出来ることなら、何でも試してみるべきだ……レイがそんな風に考え込んでいるとき、厨房から大きな音が響いた。

「何だ!?」

レイはすぐさま駆けつけ、厨房の引き戸を開けると、鍋や食器の散乱した床の上にシルファが倒れていた。

「シルファ!?」

助け起こそうと、慌てて近づいて来たレイを、シルファは思いがけず、強い口調で静止した。

「なりません! 私に、近付いては、なりません、レイ様!……どうか、わたシ……ニ、お触れニ……ならなイ……デ、くださ……イ……」

声が、おかしい。滑らかさに欠け、ぎこちない。

「どうしたんだ、シルファ! 教えてくれ、何があった!? 怪我をしたのか? 落ちてきた鍋に当たって、どこか痛めたのか!?」

シルファは力なく笑った。

――この主は、どんなときでも、私を物として扱うことをしない。

「違イ……ます。私……は人形……。ケが、は、シま……セん。レイ……さま……どうか、おシあわセニ……」

目を閉じようとしたシルファに、レイは慌てて近づき、構わずその体に触れた。

「っ!うあっ……!」

シルファに触れた途端、強い力で魔力を吸い取られるのを感じ、レイは反射的に身を引こうとしたが、突然の衝撃に体は制御を失い、人形の上にくずおれた。

「あ……ああっ、レイ様……レイ様!」

人形の悲痛な叫び声に、心の中で「大丈夫」と答えながらも、レイはそのまま、意識を失った。
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