虹の月 貝殻の雲

たいよう一花

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Ⅲ 誓約

26. 愛を確かめ合う(2)

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腕の中にあるすべてが愛しくてたまらず、魔王は後ろからレイの体をひしと抱き締めた。

「んっ……あ!」

小さく声を上げたレイの腰に、弾力を伴った硬い肉の塊が押し当てられる。
すでに何度も絶頂に達し、レイの中で暴れまわっていた二振りの巨根は、まだ足りないと言わんばかりに天を突く勢いで反り返っていた。

「レイ……レイ……ああ……愛してる……」

(私のものだ……すべて。この体も、魂も、そして――心も)

どれほど強く、欲したことか。
レイから拒絶の言葉を聞くたびに、臓腑ぞうふをえぐるような苦しみに襲われた。
<最果ての間>に閉じ込め、その肉体を得ても、虚しさはいっそう募るばかりだった。

それが今は――すべて、手の内にある。
狂おしいほどに求めた、たった一人の、運命の相手。

「ああ……レイ、愛してる。私を呼び、私を求め、私を愛していると言ってくれ!」

魔王は心を昂ぶらせ、レイの首筋にしゃぶりついた。
魔王の唇が、レイの耳の後ろから肩口まで、何度も何度も往復する。
上唇と下唇の間で、差し出された舌がねぶねぶとレイの肌をねぶり、弱いところを繰り返し刺激され、レイは反射的にビクビクと跳ね上がった。

「はあっ……あっ! んんっ、ん! ああ……魔王!」

レイの腰から背中にかけて、魔王のいきりたつ欲望がゴリゴリと押し付けられる。
後ろに当たるその硬い肉の塊が魔王の欲望と知り、レイの脳裏に、猛り狂った魔王の暴虐が生々しく甦る。レイは戦慄に襲われ、身をよじった。
逃れようとするその体を腕の中に捕らえながら、魔王はレイの怯えを感じ取り、優しく囁いた。

「レイ、怯えずともよい……。私の狂気はもう、去った。無理に体を繋げて、苦しめたりはせぬ。苦痛を与えた埋め合わせに、今はおまえに快楽を与えたいのだ。目眩と共に腰がくだけ、とろけてしまいそうなほどの……最高の快感を」

魔王の手が、再びレイの股間にのばされる。
レイはビクリと震えながら、大きく息を吐いた。

「魔王……なら何で……いじわるするんだよっ!」

拗ねた口調も表情も、たまらなく可愛い……そう思いながら、魔王は口元を綻ばせ、

「焦らされた方が、くときの快感が強くなると思ってな……」

と呟いた。
そして手の中でやんわりと締め付けながら、刺激を再開させる。

「はっ……ああっ……あっ……魔王っ! 俺の手……自由にしてくれよ!」

レイは魔道術によって拘束されたままの手首を差し出した。自分で解呪することもできたが、集中するために意識をさくのがわずらわしかった。
レイの懇願に、魔王は一瞬ためらったのち、口を開く。

「私におまえの声を聞かせてくれるか?」

「くっ……勝手に……しろっ……」

答えに満足した魔王は、速攻でレイの手首の拘束を解いた。
レイは自由になった手を魔王の腕に絡み付かせ、愛しげにさすり始めた。
その愛撫に感じ入り、魔王の心臓が高鳴る。

「レイ……ああ……レイ、愛してる……」

「んっ……はぁ……魔王……俺も、愛してる……」

「レイ!」

レイの欲望を握る魔王の手に力がこもり、摩擦の速度が速まる。

「ああっ……あっ! あっ! んんっ、ひっ……う、ぅああっ!」

腰に当たる魔王の欲望が、先走りでしとどに濡れ、レイの体にこすりつけられる。魔王の言葉を信じたレイは、もうそれを怖いとは思わなかった。
魔王に背中を預け、逞しい腕にしがみつきながら、レイは与えられる快感に夢中になって酔いしれた。
魔王は少しだけ刺激の手をゆるめ、レイの耳に息を吹きかけ囁いた。

「レイ……レイ……かせて欲しいか? 私の手で……達きたいか?」

重低音の渋い声音が、レイの頭を甘く痺れさせる。

「ああっ……くっ、んん……達きたい……! 魔王、達かせ……てくれ! もう、焦らさないでくれ!」

レイは後頭部をぐいぐいと魔王の肩に押し付け、強くなってゆく快感に羞恥を忘れて耽溺した。

「魔王っ……早く……おまえの手で……達かせてくれ!」

涙声の懇願に、魔王は即座に応じた。
とどめとばかりに強くこすりあげると、レイは遂に絶頂に達した。

「ああっ! あっ! ……ん、くうっ……!」

ガクガクと体を震わせ、レイは勢いよく欲望のたぎりをまき散らした。魔王はその一部を手で受けとめると、美酒でも味わうかのように恍惚として舐めとった。

「はぁっ……はぁっ……はぁ……」

息を弾ませたレイが、ぐったりと魔王の胸元に寄りかかる。甘えるように額を押し付け、上半身を捻って大きな体に抱きつく。
レイの抱擁を受け、魔王は叫び出したいほどの歓喜に全身を震わせた。怒涛のごとく押し寄せる幸福感に、息が詰まる。

魔王は快楽の余韻に浸るレイの体を抱きしめると、その髪に、耳に、額に、頬に、熱い唇を押し付けた。
そして最後に、貪るように唇を重ね合わせ、熱烈な口付けを交わしながら、遂に愛する者を手に入れた喜びを噛みしめた。
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