虹の月 貝殻の雲

たいよう一花

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Ⅲ 誓約

13. 告白

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魔王は強い快感に溺れそうになるのを必死でこらえ、次第に動きを早めていった。
寝台が軋み、天蓋てんがいが揺れる。
繋がった箇所から、グチュグチュと卑猥な音が醸し出され、レイの喘ぎ声と共に魔王の興奮を掻き立てる。

「ああっ……あっ!……はぁっ、はっ……ん、くっ!」

レイはもう何も考えられず、激しい快楽に身を委ねた。

魔王の<従根>に内側を摩擦される快感に加え、外に張り出た<主根>が、レイの睾丸と竿の裏側をぐちゅぐちゅと擦り上げる。<主根>はぬめった糸を引きながら、寄り添うようにぴったりと、レイの昂ぶりを弄り続けた。溢れ出る二人分の先走りが、レイの股間と腹を湿らせ、肌を濡らしてゆく。レイは前と後ろを同時に、魔王の二振りの巨根で責められ、気が狂いそうなほどの激しい快感に翻弄された。

魔王も同様に、この激しい交合に今にも正気を失いそうになるのを、必死でこらえていた。

(くっ……! まさかこれほどとは……)

――少しでも気を抜けば、たちまち快楽の大波に攫われそうだ。

<従根>でレイを穿ち、<主根>でレイの性器と絡み合い、互いに刺激を受けながら昇りつめてゆく――その一体感に、頭の芯が心地良く痺れ、目眩がする。

額が燃えるように熱い。

歓喜と陶酔に涙が滲み、激しい呼吸に肺が破れそうだ。

まるで体中を巡る血が、沸騰しているかのようだった。

魔王の逞しい体躯の下で、レイは両脚を極限まで折り曲げられ、荒波にもまれるように揺さぶられた。
その姿勢の苦しさよりも、魔王の上半身が離れていることに苛立ち、レイは夢中で魔王の首に手を回し、引き寄せようとした。

「はっ……ああっ! んんっ……ま……魔王っ……魔王!」

レイの求めに応じ、魔王がぎりぎりまで上体を密着させる。
下半身で繋がったまま、レイの体を潰さないように抱き締めるのは難しかった。しかし縋りついてきたレイの甘えた態度が愛しく、魔王は肘で上体を支えながら、いくらか体重を乗せて抽送を続けた。
レイの喘ぎ声が、一層高まる。

「ああっ……あっ、んんっ……ああっあっ……はぁっあっ……魔王……俺……もう……きそ……ううっ……」

できれば一緒に達きたかったが、もう我慢できそうになかった。

「そうか……構わぬぞ……達け……いつでも……」

荒い息の合間にそう言うと、魔王は動きを更に早めた。

「んっ!……くっ、んあああああ!!」

魔王の<従根>にズン、と一突きされた瞬間、<主根>がレイのそそり勃たった男根の裏筋から亀頭までを一気に弄り上げ、とどめとばかりに強い刺激を見舞う。
レイは喉を反らせて高く鳴き、絶頂を迎えた。
びゅくびゅくと自分の腹に勢いよく精を放つたび、レイの後ろに力が込められる。魔王は抜き差しを繰り返しながら、強く引き絞られ、快感に呻いた。

「ああっ……レイ……レイ! くうっ!」

レイの体の中で、魔王の巨根が跳ね、熱いほとばしりが湧き出る。それと同時に外に張り出たもう一振りからも、勢いよく精が放たれ、レイの体を濡らしてゆく。その放出はなかなか止まず、レイはあっというまに魔王の大量の精液で内側も外側もびしょびしょになった。

「はっ……ああ……あっ……ん……」

激しい行為に疲れ果てたレイの声が、小さくしぼんでゆく。
魔王はやっと欲望のすべてを注ぎ終えたが、二振りの巨根はまだ硬さを保ったまま、しつこく反り返っている。

(一度では……足らぬか……)

できることなら夜が明けるまで、何度もレイを抱きたかった。
しかしレイは、魔王の体の下で、ぐったりと目を閉じている。

<従根>を使った性行為は、<主根>よりも体力を使う。しかもレイは<従根>による性行為は、初めても同然だ。たとえ今度は<主根>を使っても、レイは間違いなく途中で気絶するだろう。

(……無理か……)

魔王は名残惜しげに<従根>を引き抜くと、レイの上に覆いかぶさった。
ぴったりと肌を密着させ、腕の中に強く抱きこむ。

「ん……ああ……」

レイはうっすらと目を開けると、魔王の抱擁に応えた。
レイの腕が魔王の脇から背中へと回され、脚が淫らに絡み付いてくる。魔王はたまらずに、一層強くレイを抱き締めた。

「ああ……レイ……愛してる……愛してる……私のレイ……」

重低音の甘い囁きが、レイの耳元を弄る。
至福に浸され、レイは自然に言葉を返した。

「魔王……俺も、愛してるよ……」

(ああ……やっと言えた……)

レイは頭を魔王の胸に擦りつけ、目を閉じた。
想いを告げられたことにホッとして、満足の吐息をつく。
魔王の反応が何もないのが気になるが、何もかもが満たされ、最高に気持ちが良く……ものすごく、眠かった。

「レイ……もう一度……言ってくれ」

魔王の反応は、じれったいほど鈍かった。震える声で懇願される頃には、レイはもう半分眠りかけていた。

「レイ……頼む。もう一度……」

「……ん……」

レイの肩を揺さぶり、魔王がほえた。

「まだ寝るな! レイ! 頼む! もう一度言ってくれ!」

びっくりしたレイが、不機嫌そうに目を開ける。

「ん……何だよ……?」

魔王はレイの機嫌を取るように、両手で優しく黒い髪を梳き、首筋を愛撫しながら囁いた。

「レイ、愛してる……私はおまえを、愛してる! おまえは……どうなのだ?」

「ん……ああ……俺も、愛してるよ……魔王……愛してる」

レイは魔王の顔を引き寄せると、軽く唇を合わせ、何度も言った。
一度堰を切ってしまえば、言葉が自然に溢れ出してくる。

「愛してる……魔王……愛してる……」

魔王の全身に震えが走り、鳥肌が立つ。
体中の血が沸き立ち、毛穴から噴出しそうだった。

「ああ……レイ……レイ、やっと言ってくれたな! 待っていた……私はずっと、この瞬間を、待っていた!」

折れそうなほどきつく抱き締められ、レイは悲鳴を上げた。

「ああ……すまない、レイ…………レイ?」

魔王がレイの顔を覗き込み、何度も名前を呼ぶ。返事はなく、背中に回されていた腕がだらりと垂れ、安らかな寝息が聞こえてきた。

「レイ……寝てしまったのか?」

がっかりしてシーツに沈みこむ魔王の腕の中で、レイはあっというまに、深い眠りに落ちていった。
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