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第1章

初めての討伐

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「んで、次は討伐だったよな。」
「ああ。」
「討伐はな…言っちまえばただのセンスだ。」
「まあ、だよな。」
「努力すれば身を守る程度はできるからな。まあ、討伐は一回探索して、見つけるところからだな。」
「わかった。」
 うん。これは、危険なんてほとんど自分に関係のない日本人からしたら気配を感じるなんて難しいだろうな。
 う~ん…。
 あ、そうだ。
 神力をごく少量を放出すれば、そこになにかあるかわかるんじゃないか?
そうと決まれば即実践。
少量の神力を伸ばすようにひろげていく────
「おっ出来た出来た。」
それはどこに何があるのかどのような人、動物がいるのかが分かる。
「……なあ、何ができたんだ?」
「ん……まあいいか。どこにどんなのがあるのか探知で分かるようになったんだ。」
「……?」
「つまり気配察知ができたってこと。」
「なる…ほど?早くないか?」
「才能があったんだよ。」
「そういうものなのか?」
疑問に目を向けてくるが神力も俺の才能のようなものだと思って、罪悪感に目を背ける。
「まあいいか。じゃ、次は見つけたやつを倒せればいいな。」
「わかった。」
「獲物に逃げられないコツは、静かに近づいて、相手に気づかれないようにするんだ。」
「なるほどな。静かに、ね。」
「そうだ。静かに、だ。」
俺は少しの間目を閉じて、神力を集中させた。
少量の神力を放出し、周囲の魂を感じ取る。
すると、近くの茂みに何かが潜んでいるのを察知した。
「そこだ!」
草木をあまり音を立てずに進み、一気に茂みに向かって飛び込む。
そこには目の前には獲物が驚いた表情でこちらを見ていた。
「あれ、リスだな。」
「最初に小動物を当てるなんてすごいな。なかなか、音が小さいし見つけづらいだがな。だが重要なのは練習を重ねて的中率を上げることだ。小動物を見つけれたからって油断すんなよ?一発目はあたったが全部当たるとは思わないようにな。」
「わかった。」
「一応こんな感じの魔物もいるし、こいつも倒すか?」
「いや、いいだろ。それより、次はもう少し大きな獲物を狙いたいな。」
「デケーやつ狙いすぎて自分か倒せないやつに近づくなよ?まずは基礎をしっかり固めることが大事だからな。」
「ああ。わかった。」
そう言いながら、俺は再び神力を集中させた。周囲の気配を感じ取り、少しずつ範囲を広げていく。
「今度はこっちだな。」
新しく見つけたやつの近くに行く。
俺たちは静かに、その気配に向かって進んでいった。
少しずつ距離を縮め、茂みの中から様子をうかがう。
そこには、大きなイノシシがいた。
「おっ、なかなかの大物だな。」
「うん。これなら十分な練習になりそうだ。」
冷静に答えたが、心の中では神力でイノシシの動きを確認する。
神力って便利だな。
一度使って見るとわかるが、他に使い方がないか考えて見たらそれが出来てしまう。
神力って万能だな。
 「あとは、静かに近づいて仕留めるだけだな。」
デクルが軽く頷き、獲物に向かって慎重に一歩を踏み出した。
デクルの足音はほとんど聞こえず、草むらをささやかに揺らすだけだった。イノシシはまだこちらに気づいていない。
「すごいな…」
俺は再び神力を集中させ、周囲の状況を把握しつつ、デクルの動きに合わせて進む。
デクルの背後を支えるように、神力でイノシシの気配を包み込み、わずかな音でも察知されないように工夫を凝らす。
「この距離ならお前でも倒せるだろう。イノシシは腹あたりと関節が弱い狙えるなら底を狙ってみたらどうだ?」
「わかった」
後ろから近づく。
神力を使って再度集中し、イノシシの動きを正確に捉える。
デクルが教えてくれた通り、狙うべきは腹か関節だ。
そして、イノシシはまだ気づいていない。
その瞬間が訪れるまで、全神経を集中させる。
イノシシの体が一瞬、微かに動く。
今だ。
俺は一気に踏み込むと、持っていた短剣で後ろの関節を切る。
体勢を崩したイノシシの腹に向けてもう一度短剣で突き刺した。
刃は深く食い込み、イノシシは驚愕の叫び声を上げる。
しかし、短剣を通じて感じた確かな手応えと神力から見える、これは正しい場所を突いたと確信する。
イノシシが力を失い、その巨体が地面に崩れ落ちるのを見届けると、俺は息をつく。
初めてのの動物の討伐に成功したのだ。
「やったな。」
デクルが静かに微笑んでいる。
「初めてにしては上出来すぎる出来だ。」
「ありがとう。でも、デクルが弱点やコツを教えてくれたからだよ。」
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