転職方法が失われた世界で【遊び人】になった俺は【賢者】にはなれないのだろうか

rasen

文字の大きさ
上 下
79 / 92
5章 フォースリム

5-10 レッサードラゴンの群れ

しおりを挟む
 第31波はレッサードラゴン10体。

 その最大の特徴である【マジックブレス】には肝を冷やしたが、オーガレザーのおかげか、そこまで大きなダメージを受けることはなかった。

 「最初は焦ったけど、意外に何とかなりそうだな。【ダンジョンウォーク】での移動も有効そうだし。」

 「ん。アンデッドより弱い。」
 「ブレスも弱い。」

 「【リフレクション】も効果的みたいだし、囲まれさえしなければ大丈夫そうね。火力も足りるから、消耗も少なそうだわ。」

 そう、【マジックブレス】は魔法攻撃だ。
 そうなれば当然【リフレクション】で跳ね返すことが出来る。

 「今までのパターンから行くと次は数が増えるか種類が増える。計算上からすると倍の20体ってところかな?」

 カイトはこれまでの傾向からフォースリムダンジョンの出現法則に当たりを付けていた。
 鍵となるのはマナゴールドで、全て倒した時のマナゴールドがほぼ比例的に増えていることに気付いたのだ。

 第1波から第10波は50×ウェーブ数。ただし第10波だけは2倍。
 第11波から第20波は500×ウェーブ数。ただし、第11波からの計算で、さらにここも第20波だけは2倍。
 第21波からも同様でベースになる数値が5,000になった。
 そうであれば第31波はベース50,000にウェーブ数をかけることとなるはずだ。

 つまり第31波はレッサードラゴン10体で50,000。第32波は100,000になるはずなのでレッサードラゴン20体相当。

 「ん。焦らなければ大丈夫。」
 「斬れるから大丈夫。」

 「まぁ角に移動すれば2体か3体相手にするだけだし大丈夫でしょ。」

 ちなみにウェーブが終わると必ず部屋の中央に転移させられる。
 角に陣取って開始することは出来ない。

 「図体は大きいから、場所を考えれば同時に攻撃されなくて楽だな。それじゃこのまま行くとしようか。」

 そして出現したのは案の定レッサードラゴン20体。

 四方八方を囲まれたら危険だが、【ダンジョンウォーク】で移動することで包囲されることは防ぐ。

 そして角に到着したら、カイトが正面を受け持ち、左にルナ、右にレナ、後ろにフェリアという陣形を作る。
 フェリアは精霊達を顕現し、様々なバフ効果をパーティに与える。
 
 カイトは【スキルスロット】で【ダークイロージョン】を使用したあと、【職業体験】に設定している【ジェネラリスト】で【重戦士】の【挑発】を使用する。

 【挑発】に釣られて3体のレッサードラゴンが接敵してきた。

 バフ全開のカイトはそれらの突進をしっかりと受け止めて、【マジックウェポン】で強化した竜鋼剣で中央のドラゴンを攻撃しつつ【テイクスキル】で【スキルスロット】に【マジックブレス】をセットする。

 ルナは左のドラゴンの側方から斬りかかり、レナは右のドラゴンに同様に側方から斬りかかる。
 劣竜小剣による【パワーアタック】と劣竜短剣による【シャープアタック】は、レッサードラゴンに効果的なダメージを与え、追撃の【マジックボール】はダメージこそほぼないものの、レッサードラゴンの反撃の目を摘む。
 そして二人はすぐに離脱し、カイトの後ろに戻った。

 そこにフェリアのコンデンスレーザー3本がそれぞれのレッサードラゴンに襲い掛かり、左右のドラゴンを消滅させる。

 中央のドラゴンはまだ生きてはいるものの、かなりのダメージを受けている。
 そこにカイトのテイクした【マジックブレス】が襲い掛かり、残ったドラゴンの他にもかなりの数のレッサードラゴンを巻き込んだ。

 「よし、みんな消耗は?!」

 「ほぼなし。」
 「大丈夫。」

 「全く問題ないわ!」

 「了解!それならこのままこのパターンを維持!【ダークイロージョン】と【マジックブレス】でダメージが蓄積するはずだから、フェリアは少しずつ威力の調整を頼む!」

 「「了解。」」

 「了解!カイトの消耗は?!」

 「問題なし!」

 会話している間にもレッサードラゴンは次々と攻め立ててきていたが、カイトにダメージを与えるほどではなかった。

 そうして次々と屠られていくレッサードラゴン達。
 たまに左右のレッサードラゴンが【マジックブレス】を放つが、カイトの【ものまね】に設定された【リフレクション】で跳ね返され、さらにレッサードラゴンにダメージを蓄積させた。

 結果的に20体のレッサードラゴンを倒すのにかかった時間は10分弱。

 「いくら個体が強力でも、地の利が無ければ意味がないってことだな。」

 「最後の方なんてほとんど瀕死だったもんね・・・。」

 【ダークイロージョン】の持続ダメージと盲目付与は対策がなければほとんど反則だ。
 そして見えないところからの【マジックブレス】さえ封じれば、後の危険はほとんどない。
 カイトの【ダークイロージョン】や【シャイニングレイン】のようにフレンドリーファイアがない可能性があるので、闇雲な【マジックブレス】だけは脅威である。

 そして続く第33波から第35波まではレッサードラゴンの数が10ずつ増えるだけだった、
 流石に50体ともなると密集と言った様相で、カイト達も困惑せざるを得なかったが。

 それでもそれぞれのウェーブを倒し切るのに時間はそれほど変わらなかった。
 20体を超える分は範囲攻撃の余波でほとんどが倒されるからだ。

 「なんかダンジョン設計のミスを感じる・・・。」

 「ん。アホっぽい。」
 「まともに戦うはずがないのにね?」

 「でも4人でここまで多様性のある戦いが出来るのも珍しいんじゃない?普通なら囲まれたまま倒しても倒しても押し寄せてくるレッサードラゴンに押し潰されても不思議じゃないわよ?」

 「まぁそれもそうか。」

 例え【ダンジョンウォーク】を使えたとしても、【冒険者】では火力を出せるスキルはない。
 他のジョブでも使えるかも知れないが、それでもカイトほどの攻撃力は持たないだろう。

 ここまでにかかった時間は、およそ2時間。
 稼いだマナゴールドは1,000,000を超えた。

 レベルは4次職が【スキルテイカー】は50となり、それ以外は51となった。
 サードジョブの【重戦士】はマスターし、続く【軽戦士】がレベル38まで上がった。
 
 3次職のマスターまでに稼いだマナゴールドはおよそ2,000,000ほどで、第1波から第35波を2周すれば1つのジョブをマスターできる計算になる。
 この計算は経験値とマナゴールドが連動していれば、他のダンジョンへ移ったとしても有用だろう。

 「ルナとレナは武器には慣れたか?」

 「ん。最高。」
 「スパスパいける。」

 「後ろから見ててもそんな感じだったわ。カイトはどうなの?」

 「俺も大分慣れたかな。欲を言えばもう少し攻撃回数は増やしたいけど。」

 「防御担当だからそうも行かないわよね。【軽戦士】が終わったらいよいよ不明な4次職も分かってくるから、いいジョブがあることに期待ってとこかしら?」

 「まぁそうだな。あとはレベル60が見えて来たから、そこで戦略がどう変わるか、かな?とは言っても【リクルーター】と【ジェネラリスト】は特に変化なさそうだけど。」

 「不明なのは【精霊器召喚】とミスリルの使い方ね。」

 スキルは習得しないと細かいことが分からないので仕方がないとしても、ミスリルはまだインゴットのままである。

 『ミスリルはねー。武器の形がいいの!』

 そこに不思議な声が響いた。

 『うんー。出来ればみんなの分?』

 謎の声は誰かと話しているようだ。

 「なぁ。今聞こえてるのは誰の声なんだ?」

 「え?今はフェルムと話してるけど・・・、聞こえたの?!」

 『成長したから声が届くようになったみたいー!』
 『ほんとー?』
 『聞こえるー?』
 
 話していたのは精霊のようで、成長した結果、声が届くようになったようだ。
 全ての精霊が顕現し、順番に話している。
 声が聞こえたのは最初に契約したフェルム、リルム、アルムだけのようだが。

 「おう、聞こえてるぞ。誰が誰かは分からないから話す時は少し動いてくれると助かるけど。」

 「ん。聞こえる。」
 「けど声はほとんど一緒?」

 精霊の声は頭に直接響くような形で聞こえ、その声はどの精霊もほとんど同じだった。

 『『『わかったー!!』』』

 「ところで、この声は誰にでも聞こえるのか?」

 無制限に聞こえるようではかなりまずいだろう。

 『選んだ人だけー?』
 『カイトとルナとレナー!』
 『もちろんフェリアもー!』

 「それならいいか。さっきのはミスリルのことだよな?また後でじっくり聞かせてくれないか?」

 『はーい!』
 『分かったー!』
 『後でねー!』

 「とりあえず今日はあと一周と少しやって【軽戦士】がマスターできるか試してみたいけどいいか?」

 「そうね。レッサードラゴン戦ももうちょっと慣れたいし、私は賛成。」

 「ん。問題ない。」
 「ドラゴンもサクサク?」

 そんな訳で、第35波までをさらに1回と、第31波までやったところで、4次職は全てレベル53となり、【軽戦士】はマスターすることが出来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...