転職方法が失われた世界で【遊び人】になった俺は【賢者】にはなれないのだろうか

rasen

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4章 ノースビーストリム

4-28 拠点の整備とフォースリムへの道中

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 無事拠点を手に入れたカイト達は、拠点となる家の整備をしていた。
 整備というより家具の配置だろうか。

 元々共同生活をしていた人たちの家なのか、その間取りはカイト達に適していた。

 中央に階段から繋がるダイニングキッチンがあり、その両端に2部屋ずつ個室がある形だ。

 片方にルナとレナが、もう片方にカイトとフェリアが部屋を構えることになった。

 「カイト!カイト!」
 「唐揚げ!」

 ルナとレナははしゃいでいる。

 「まずは部屋に必要なものを揃えてからな?」

 とりあえず4人は各自の部屋を少なくとも寝泊まりできるようにしようと、買い物に出かけるのだった。

ー▼ー▼ー▼ー

 「まずはベッドだな。」

 そうして訪れたのは木工店。

 カイトからしてみればその場で買えると思っていたのだが、生憎この世界は受注生産が主だった。

 まぁ大体のサイズは把握していたので問題はなかったが。

 ついでにチェストやテーブルなども注文してその場を後にする。

 「どうせこうなるならノースアクアリムに行ってガルドさんに紹介してもらっても良かったな。」

 「ん。」
 「次はそうする。」

 「次っていくつ家を買うつもりなの?」

 「んー。宵闇の森?」
 「ダンジョン攻略?」

 「なるほどな。そうなったらガルドさんに頼もうか。」

 「ん!」
 「ん!」

ー▼ー▼ー▼ー

 完成するのを待っていても仕方ないし、完成予定日には【リターンポイント】で帰ってこればいいので、宿を引き払い、フォースリムに向けて出発することにした。

 旅程としてはまずはこの地方の中核都市、ビーストリム。
 その次にフェリアの実家があるフォレストリア。
 そこを経由して目的地であるフォースリムだ。

 それぞれ1日、3日、3日かかる予定だ。

 カイトだけで行ってもいいのだが、せっかく旅の支度もしたのだからと、全員で向かうことにする。

 ちなみにアルマリアはすでにフォレストリアに向けて旅立っている。
 こっそりと迎える準備を整えるそうだ。
 カイト達はフォレストリアは通過するだけの予定なのだが。

 この世界の街は徒歩で1日、30km間隔で存在している。
 街はダンジョンを中心に作られるので大きなダンジョンが30km間隔で存在していると言えるのだが。

 と言っても全てのダンジョンが同一直線上にあるわけではないので、街道を無視して進めば多少の旅程は短縮できる。

 小さなダンジョンはそこかしこに存在するし、全て国の管理下にあるので魔物は出現しない。

 野盗などもカオスジョブが存在するので普通は現れたりはしない。

 この世界の旅は比較的、というかかなり安全だ。

 国を移動したりしない限り護衛なども雇わない。
 まぁ成長すればほぼ全員が3次職のレベル50になるので、護衛を必要とする人もそんなにいないのだが。

 カイト達はレベルが高いおかげで、移動速度も速いし休憩もほぼ必要としない。
 街道沿いを歩きながら、街道から近いランク1やランク2のダンジョンを訪れ、【ダンジョンワープ】の対象にしたり、近くに【セットポイント】しながら移動していた。

 そうして寄り道しながらも3時間。
 予定していたビーストリムに到着した。

 「うーん。予定より大分早いけどどうする?」

 夜が明けてから出発したにも関わらず、まだ太陽は南中していない。

 「どうせすることないんだし、マーキングだけして次の街まで進んじゃいましょ。」

 「ん!」
 「夜営でもいい。」

 マーキングとはカイトが使い始めた言葉で、【ダンジョンワープ】の対象にする、とか、【セットポイント】でポイントを作る、とかを思わずそう言ったところ定着してしまった。

 「夜営するかはおいといて、とりあえずサウスビーストリムに向けて移動するかー。」

 そうして再び移動を開始するのだった。

ー▼ー▼ー▼ー

 同じような移動を繰り返して再び3時間後。

 カイト達はサウスビーストリムに到着していた。

 「ここのダンジョンってどんなやつなの?」

 「アンデッドダンジョンだよ。ランク3だから最後のボスはエンシェントレイスかもな。」

 「アンデッドはしばらくいいわ。」

 「ん。同感。」
 「骨は見たくない。」

 アンデッドは骨だけではないのだが。

 その日はそんな話をしながら宿を取り、一夜を明かした。

ー▼ー▼ー▼ー

 次の日、またも同じように日が昇ってから出発。
 サウスビーストリムの次はフォレストリアになる。
 同じ道程であれば、午前中にはフォレストリアに到着できるはずだ。

 ランク4ダンジョンの周辺にはランク3ダンジョンが3つ存在し、ランク5ダンジョンの周辺にはランク4ダンジョンが3つ存在するというのが、この世界のダンジョンの分布だ。

 ランク6とランク5のダンジョン間は大体4日分離れていて、ランク5とランク4の間は2日程度だ。
 そしてランク4以上のダンジョンから、大体1日程度の所にランク3以上のダンジョンが配置されているという形になる。
 すべてランク6ダンジョンを中心として見た場合なので、ランク5同士、ランク4同士はもっと近かったり離れていたりすることはあるが。

 それぞれのランク3以上のダンジョンについては、現状分かっていることであれば大体資料が存在している。
 カイトがダンジョンに詳しいのは、【遊び人】のレベルが上がらなくて苦労していた時にひたすら調べていたからだ。
 万が一レベル1のままでも生きていけるように。
 
 同様にモンスターについてもそれなりに詳しい。
 とは言っても、この世界の図鑑の情報に、前世の世界のゲーム知識を加えた程度のものだが。

 エンシェントレイスに光属性を選択した理由もここにある。
 現在のこの世界では光属性と闇属性は幻の属性だからだ。

 光属性っぽいものは【生活魔法】の【ライト】しかない。
 稀にマジックアイテムで見つかることもあるようだが。

 そうしているうちに3時間。

 午前中のうちにフォレストリアに辿り着いた。

 今はまだフェリアの実家に行くつもりはない。
 アルマリアに繋ぎを取らなくても良いだろう。

 「やっぱ大きい街だなぁ。流石北都。」

 フォレストリアはこれまで見たどの街よりも当然大きかった。

 「私もあんまり街の様子を見たことないのよね。」

 軟禁に近い状態だったから当たり前ではあるが。

 「あ、そういえばここのダンジョンって転移型か。」

 「そうよ?そういえば今までに転移型ってなかったわね。」

 転移型とはダンジョンの入り口にある転移石に触れてダンジョンに侵入するタイプのことを言う。
 通常は洞窟のような入り口があり、その先にある階段を降りて移動するが。

 「転移型なら【ダンジョンワープ】で飛んでも不審がられないかな?」

 【ダンジョンワープ】はダンジョンから違うダンジョンに移動する転移の一種なので、転移先のダンジョンの1階層入り口に到着する。
 通常型であれば階段を降りた少し先だ。

 転移型であれば転移石を使用したところと同じ場所に移動して、【ダンジョンワープ】と区別がつかないかも知れないと考えたのだ。

 「うーん。ここはそこそこ混むし、待ち時間が発生することもあるみたいだから、順番飛ばして出現したら怪しいんじゃない?それに移動の時の見た目も一緒か分からないし。」

 見た目に関してはここで確認できることであるが、順番飛ばしに思われるのはよろしくないだろう。

 「そう簡単には行かないか。先を急ぎたいところだけど、今日はとりあえずマーキングだけはして、宿を取ろうか。」

 流石に大きい都市だけあって、半日ではあまり多くのことは把握できないため、今日の移動はここまでとした。
 実際宿の数も多く、値段の幅も広かった。
 折角なので、とそれなりに高級な宿に泊まり、一夜を明かしたのだった。

ー▼ー▼ー▼ー

 次の日から移動を再開。
 フォレストリアの街の散策は、午前中だけで切り上げ、次回以降に回すことにする。
 万が一フェリアを知っている者がいても困るからだ。

 そうして2日後の正午に差し掛かろうと言う時間。
 一行はフォースリムの街に到着したのだった。

 そこまでの道中に差し当たって話題にするようなことは何もなかった。
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