たったの五文字

──……その五文字の中に、彼は何かを隠していて、私は何かを忘れている。


 物語の中のような錬金術師になることを夢見て、名門魔法学園に通う純真な少女、シェルタ。ひょんなことから騎士科の先輩である剣の天才、レクスと知り合い、彼が時折見せる寂し気な表情に惹かれていく。

「綺麗だとか、見え透いたお世辞はいーよ。魔法科の連中が見たら鼻で笑うようなもんでしょ。……言っとくけど、俺は騎士科で本分は剣だし、さっきのは気まぐれでやっただけだから。俺にとって魔法なんて、……何にも価値のあるものじゃ、ないし」

「え? ま、魔法、大好きなんじゃないんですか?」

「──、……なんで、」
 
 やがて念願叶い、レクスの恋人になることができたシェルタ。夢心地な日々を過ごしていたけれど、どうして彼が自分を選んでくれたのか分からず、徐々に不安が降り積もっていく。

「レ、レクス先輩……ぁ、あい、してる」

「ふ、耳まで真っ赤。すげぇ可愛い、……俺のシェルタ」

 レクスはシェルタにばかり言葉を求めるけれど、決して好きだとも、愛してるとも言ってはくれないし、触れようともしない。彼からの言葉が欲しいと、作戦を立てたシェルタは奮闘する。けれどそんなシェルタに、彼の様子は徐々におかしくなって──……

「……シェルちゃんに、触んないで」

「嫌だ、シェルちゃん……言ってよ、いつもみたいに、お願いだから……っ」

 たったの五文字を巡って、二人の想いはすれ違い、やがてその恋は思いもしない方向に転がり落ちていく。


「俺さ、ほんとの魔法使いには、なれなかったけど。……でも、俺だって、シェルちゃんのこと……ちゃんと、守れるよ。……だから」


 叶った恋と、置いてきた夢と、その裏側の誰かの痛みの話。

小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。
 
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