妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

文字の大きさ
上 下
27 / 309
妄想編

27話【off duty】岡林 幸太郎:電話(藍原編)

しおりを挟む
 ふう。新條くんの一件で、すっかり酔いが醒めちゃった。とりあえずシャワー浴びて……もう一回、飲みなおそうかしら。

 タオルで髪を拭きながら、冷蔵庫にあった缶チューハイを開ける。静かにしていると、ふいに、今まで気にならなかったお隣さんの物音が気になる。……ちらっと見えたあの間取りだと、うちのテレビを寄せてある壁の真裏に、新條くんのベッド……。今の物音、ベッドのきしむ音かしら……。そんな音、今まで聞こえたことあったかな? あたしのベッドは反対側のお部屋に面してるから、あたしがベッドで何してようが、新條くんにバレることはなさそうね。でも……シャワーの音は、たぶん新條くんちのキッチンの裏側あたり……。いつシャワー浴びてるのかとかは、バレてそう……? ……だめだめ、気にしちゃ。大丈夫よ、新條くん、今時のわりには真面目そうな青年だったし。

 缶チューハイをハイペースで空にして、いい気分でベッドに潜りこもうとしたところで、突然携帯電話が鳴った。うそっ、病院からの呼び出しかしら? お酒飲んじゃったし、もうだいぶ眠いんだけど……。
 と、思いつつ、着信を見ると。『岡林先生』だって。うわ、やっぱり、入院患者さんのことで何か病棟から連絡があって、その相談の電話かしら?

「はい、藍原です。どうしたの?」
『あ、先生、よかった。まだ起きてたんですね?』
「ちょうど寝ようと思ってたところ。どうしたの? 病棟から連絡でもあった?」
『あ、いや、そういうわけじゃなくて……』

 ? 岡林くんが、珍しくいいづらそうにしている。

『あの、さっき別れたとき、藍原先生が結構酔っ払ってたから、大丈夫かな、と思って』

 え、あたしの心配をしてわざわざ電話をくれたの? うひゃあ、やさしいのね。……え、でも、待って。そういえば、楓ちゃんは?

「あたしは無事帰宅したわよ。ちゃんとシャワーも浴びて、さらに一杯飲んで、いい気分になってたところ。そっちこそ、楓ちゃんは? 大丈夫だったのかしら」
『はい、佐々木さんもちゃんと送り届けましたよ』
「……それで終わり?」
『ええ、もちろん。襲ったりしてませんよ』

 電話越しに岡林くんが笑ってる。えーっ、襲ってほしかったのに。作戦失敗かしら……。楓ちゃん、へこんでないといいけど……。

『すみません先生、心配したつもりが、寝るところ邪魔しちゃったみたいですね』
「いいのよ。わざわざ気を遣ってくれてありがとう」
『ははは、気遣ったわけじゃないです。……わかるでしょ』

 ? わかるでしょって、何がかしら。

『先生、じゃあ……今、ベッドの中なの?』
「そうよ、あなたも早く寝なさい」
『……先生の声を聞いてたら、目が覚めてきちゃった』
「え?」
『ほら、先生の声が、直接耳に入ってくるでしょ? 今まで、そんな近くで先生の声聞いたことなかったし。……あ、一回あったかな。最初に先生に連れて行ってもらったイタリアンレストランで』

 ……? そんなに接近して話したこと、あったかしら?

『覚えてないんですか? 俺が先生のピアス直したとき。……先生のあのときの声、俺、覚えてますよ』

 ……! うわっ、思い出してきた! 岡林くんが突然あたしの耳たぶを触るもんだから、びっくりして、うっかり声が出ちゃったのよね。……うそ、ばっちり聞かれてたうえに、しっかり覚えてるなんて!

「そそそそんなこと、さっさと忘れて、寝なさい!」

 そういって慌てて電話を切ろうとするあたしの耳元で、岡林くんが。

『待ってよ、先生。……もう少し、先生の声、聞いていたい』

 ! ……うう、不覚にもドキッとしたわ。そんなこと耳元で囁かれると、うっかりあたしの中のスイッチが、押されちゃうじゃないの……! ダメダメ、すでに岡林くんはあたしの脳内で大暴れ済みだから! これ以上はダメよ。

「岡林くん、やっぱり酔ってるでしょ。明日も勤務なんだから、もう寝なさいってば」
『無理。先生の声、色っぽいから、俺からは切れそうにない』

 なんとか電話を切ろうとするけど、岡林くんが話し続けるから、申し訳なくてなかなか切れない。だいたい、岡林くんの声だって、充分色っぽい。……電話って、情欲をそそるアイテムだったのね。知らなかったわ。
『ねえ、先生の、こないだみたいな声、また聞きたい』岡林くんが、耳元で囁く。……目を閉じると、本当に彼がそばにいるみたい。『シャワー浴びたあとの先生の匂い、嗅ぎたいな……先生の首筋に、顔をうずめて、さ……ねえ、想像してみてよ』その言葉で、イタリアンレストランでの出来事が蘇る。岡林くんが、あたしの耳たぶを撫でるように触って、耳元で囁いて……『……っ』やだ、思い出しただけで、体がぞくっとする。『……先生? 息が、荒いよ?』うそ、電話って、そんなことまでバレちゃうの? 『ねえ、もっと想像してよ。俺の手が、先生の寝巻の下に潜りこんで、先生の大きな胸を、触ってるとこ。……先生の胸、柔らかいよね。乳首はきっとピンク色で……俺が、きゅってつまんだら、先生、どんな声出すのかな……ね、つまんでみて?』岡林くんの声は甘くて、あたしに不思議な魔法をかける。自分の手に、岡林くんの手が乗り移ったみたいに、勝手に動いて……『ん……っ! あっ、はあ……っ』胸の先っぽをつまむと、電流みたいなしびれが体を駆け抜けて、思わず声が出る。『ふふ、キモチいいんだね、先生……先生、かわいい』うそ……自分で触ってこんなに気持ちいいなんて、おかしすぎる。『先生、感じてるの? 俺、先生の下のほうも触りたい。ね、いいでしょ? 先生の太ももを、ゆっくり開いてさ……下着の中に、手を入れるの。……ほら、触ってごらん? もう、ぐしょぐしょに濡れてるじゃん……』『あっ……うぅ、い、いわないで……っ』あたしの指先は、岡林くんにいわれるがまま、自分の大事な部分に伸びて……『ね、いじってごらん? キモチいいんでしょ? 俺に、先生の声、聞かせてよ……』指先が、ぬるっとした秘裂をまさぐり、それからその上にある、大事な突起を――『あっ、あああ……っ、んっ、く……っ、はっ、あ、岡林くん……ッ』『先生……すごく可愛い声。俺も感じちゃう。もっと……もっと聞かせて……ッ』電話越しに、岡林くんの息遣いが聞こえる。浅く速く、熱っぽい息遣い。『ね、先生、俺、挿れたい……先生に、挿れたい。先生の中、もっと感じさせて……?』切なげなその声がたまらない。岡林くんの熱い声に刺激されて、あたしの指の動きが速くなる。『あっ、はっ、い……い……ッ、岡林くん、キモチ、いいの……もう、中が……っ、ああ、おかしくなりそう……んんっ、あああ……ッ!』『先生、もっと、俺、イキそう……っ』『はあっ、あっ、ダメ、あたしもっ、……んあっ、あっ、も、イク――!!』体がビクビクとわななき、快感が頭のてっぺんまで突き抜ける。……どうしよう、こんなの初めて……。自分の指で、イッちゃうなんて。達したあとの、心地よい体の重さに、意識が遠くなる。『先生……先生?』耳元で聞こえる岡林くんの声も、心地よくて、そして遠くなって……。
しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

処理中です...