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迷走編
62話【off duty】戸野倉 凛太郎 18歳:二丁目(藍原編)①
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来週は新條くんの誕生日。プレゼント、何がいいか一生懸命考えたんだけど……。ダメだ、全然気の利いたもの、思いつかない! 仕事のあと、デパートに何軒も寄って、結局買ったのは、洋服。新條くんに似合いそうな、半袖のシャツ。新條くん、いつもファッションとか気にしてなさそうな、同じようなモノクロの服ばかり着てるから、自分じゃ買わなそうな、ちょっとおしゃれな明るい青系のシャツを買った。……なんだか、普通過ぎて申し訳ない気もするけど……。来週まではまだ時間があるから、ほかにもいろいろ探してみよう。
デパートで閉店まで粘って、そのあと食事して帰ろうとしたら、結構遅くなっちゃった。にぎわい始めた新宿の繁華街を通り抜けて、駅に向かう……つもりが、ちょっと道を間違えたみたいで、何やら怪しげな路地裏に来てしまった……。ネオンの光る看板を見ると……うひゃ、ここ……二丁目?
二丁目ならまだ問題ないかしら。いわゆる、ゲイの町でしょ。なら、女のあたしがひとりで歩いていても、安全よね?
なんともいえない独特の雰囲気の路地を抜けて、大通りを目指していたら。……道端に、男の人が何人か固まって不穏な雰囲気。なんだろう、誰か口説いてるのかな……か、カツアゲとかだったら怖いなあ……やだなあ、通り抜けるのに、ちょっと肩が触れ合いそうになる。さっさと通り過ぎよう――と思いながらちらりと見やると。2,3人の男性の隙間から、取り囲まれるように壁際に座り込んでいる人の姿が見えた。うなだれて顔は見えないけど、そのクリクリふわふわの茶色の頭に何だか見覚えがあって……
「おい兄ちゃん、こんなところで潰れてたら危ないよ~?」
「ねえ、君、襲われ待ち?」
「おかま掘っちゃうよ~、ふふ~」
男性のひとりが、座り込んだその人の顎をくいっと持ち上げて。あたしは思わず、あっと叫んでしまった。
「凛太郎くん!」
通り過ぎざまについ声を上げてしまい、一斉に男たちが振り返る。その目は怒りにぎらついていて……まずい! これは、まずいわ! いろいろと、まずい……!
「ちょっと、女はすっこんでなさいよ!」
「ひゃあっ」
サラリーマン風の男の人が妙に高い声ですごんでくる。こ、怖い……怖いけど、凛太郎くん、どうしてこんなところで……どう見ても、この人たちと知り合いじゃないわよね?
「あっ、あの、この子、あたしの知り合いなんですっ! 具合悪そうなんで、つ、連れて帰ります!」
怖いけど、このまま置いて帰るなんてできない。
「凛太郎くん。凛太郎くん!?」
屈んで声をかけるけど、凛太郎くんは真っ赤な顔をして少しだけとろんとした目を上げると、またすぐうなだれてしまった。うわあ、酔ってるのかな? とりあえず、ここから連れ出さないと……。
「凛太郎くん! 帰るわよっ!?」
男の人たちの足の間から、ぐいぐいと凛太郎くんを引っ張り出す。細身とはいえ、背も高いし男の人だし、かなり重い……。
「ちょっとお姉さん、その子置いていきなさいよ!」
「邪魔すんじゃねえよ!?」
うわあ、怖すぎる! いつ手を出されてもおかしくないような状況で、とりあえずあたしは凛太郎くんを引きずるようにして路地から脱出。幸い、大通りのすぐ近くで、一本出れば人通りもある。すぐにタクシーを掴まえると、あたしは凛太郎くんを押し込んだ。一緒に乗って、もう一度凛太郎くんに話しかける。
「凛太郎くん! しっかりして! おうちはどこ?」
「うう……」
凛太郎くんがまた、少しだけ目を開けた。うわ、お酒臭い。やっぱり酔っぱらってるんだ。凛太郎くんの目が少しだけあたしの顔を見て。
「……香織、さん……?」
よかった、あたしだってわかるくらいにはしっかりしてる。
「ね、おうちどこ?」
聞いてみたけど、凛太郎くんはまた目を閉じて、黙ってしまった。仕方ない、持ち物を見させてもらって、住所を調べるしか……って。あ、あれ……? 凛太郎くん、何も持ってない。財布もないわよ!? いったいどうやって飲んでたのかしら……って、いや、ひょっとして、さっきの……。あれ、単に口説いてたんじゃなくて、カツアゲも兼ねてたのかしら!? 凛太郎くん、持ち物全部、持ってかれてるわよ!?
「お客さーん。出るの、出ないの? お金あるの?」
運転手さんがイライラしてる。
「ああっ、大丈夫です。えっと、じゃあ、〇×まで……」
仕方ない。とりあえずあたしの部屋に連れて行って、休ませるしかないわね……。
今ではタクシーの後部座席で仰向けになって、ぐったりと目を閉じた凛太郎くんを見る。……酔ってても、お酒臭くても、やっぱり美形で素敵。ちょっとドキドキするけど、でも、大丈夫よね。だって凛太郎くんはゲイで、しかも林さんを心から愛してるんだもの。部屋に泊めても、問題、ないわよね……?
デパートで閉店まで粘って、そのあと食事して帰ろうとしたら、結構遅くなっちゃった。にぎわい始めた新宿の繁華街を通り抜けて、駅に向かう……つもりが、ちょっと道を間違えたみたいで、何やら怪しげな路地裏に来てしまった……。ネオンの光る看板を見ると……うひゃ、ここ……二丁目?
二丁目ならまだ問題ないかしら。いわゆる、ゲイの町でしょ。なら、女のあたしがひとりで歩いていても、安全よね?
なんともいえない独特の雰囲気の路地を抜けて、大通りを目指していたら。……道端に、男の人が何人か固まって不穏な雰囲気。なんだろう、誰か口説いてるのかな……か、カツアゲとかだったら怖いなあ……やだなあ、通り抜けるのに、ちょっと肩が触れ合いそうになる。さっさと通り過ぎよう――と思いながらちらりと見やると。2,3人の男性の隙間から、取り囲まれるように壁際に座り込んでいる人の姿が見えた。うなだれて顔は見えないけど、そのクリクリふわふわの茶色の頭に何だか見覚えがあって……
「おい兄ちゃん、こんなところで潰れてたら危ないよ~?」
「ねえ、君、襲われ待ち?」
「おかま掘っちゃうよ~、ふふ~」
男性のひとりが、座り込んだその人の顎をくいっと持ち上げて。あたしは思わず、あっと叫んでしまった。
「凛太郎くん!」
通り過ぎざまについ声を上げてしまい、一斉に男たちが振り返る。その目は怒りにぎらついていて……まずい! これは、まずいわ! いろいろと、まずい……!
「ちょっと、女はすっこんでなさいよ!」
「ひゃあっ」
サラリーマン風の男の人が妙に高い声ですごんでくる。こ、怖い……怖いけど、凛太郎くん、どうしてこんなところで……どう見ても、この人たちと知り合いじゃないわよね?
「あっ、あの、この子、あたしの知り合いなんですっ! 具合悪そうなんで、つ、連れて帰ります!」
怖いけど、このまま置いて帰るなんてできない。
「凛太郎くん。凛太郎くん!?」
屈んで声をかけるけど、凛太郎くんは真っ赤な顔をして少しだけとろんとした目を上げると、またすぐうなだれてしまった。うわあ、酔ってるのかな? とりあえず、ここから連れ出さないと……。
「凛太郎くん! 帰るわよっ!?」
男の人たちの足の間から、ぐいぐいと凛太郎くんを引っ張り出す。細身とはいえ、背も高いし男の人だし、かなり重い……。
「ちょっとお姉さん、その子置いていきなさいよ!」
「邪魔すんじゃねえよ!?」
うわあ、怖すぎる! いつ手を出されてもおかしくないような状況で、とりあえずあたしは凛太郎くんを引きずるようにして路地から脱出。幸い、大通りのすぐ近くで、一本出れば人通りもある。すぐにタクシーを掴まえると、あたしは凛太郎くんを押し込んだ。一緒に乗って、もう一度凛太郎くんに話しかける。
「凛太郎くん! しっかりして! おうちはどこ?」
「うう……」
凛太郎くんがまた、少しだけ目を開けた。うわ、お酒臭い。やっぱり酔っぱらってるんだ。凛太郎くんの目が少しだけあたしの顔を見て。
「……香織、さん……?」
よかった、あたしだってわかるくらいにはしっかりしてる。
「ね、おうちどこ?」
聞いてみたけど、凛太郎くんはまた目を閉じて、黙ってしまった。仕方ない、持ち物を見させてもらって、住所を調べるしか……って。あ、あれ……? 凛太郎くん、何も持ってない。財布もないわよ!? いったいどうやって飲んでたのかしら……って、いや、ひょっとして、さっきの……。あれ、単に口説いてたんじゃなくて、カツアゲも兼ねてたのかしら!? 凛太郎くん、持ち物全部、持ってかれてるわよ!?
「お客さーん。出るの、出ないの? お金あるの?」
運転手さんがイライラしてる。
「ああっ、大丈夫です。えっと、じゃあ、〇×まで……」
仕方ない。とりあえずあたしの部屋に連れて行って、休ませるしかないわね……。
今ではタクシーの後部座席で仰向けになって、ぐったりと目を閉じた凛太郎くんを見る。……酔ってても、お酒臭くても、やっぱり美形で素敵。ちょっとドキドキするけど、でも、大丈夫よね。だって凛太郎くんはゲイで、しかも林さんを心から愛してるんだもの。部屋に泊めても、問題、ないわよね……?
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