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第一部 六章 月の魔術師。そして太陽の、
96話 お誘い
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モンスターハウスの核石を回収し終えた後、今までの経験上これだけ何度も雷を鳴らせばモンスターが来ないと分かっているが、とりあえずさっさと移動することにする。
”いいもん見れたわ”
”今まで食わず嫌いで見てこなかったけど、どれだけ損していたのか分かったわ”
”新規眷属諸君へ、ようこそ、ぽんこつ可愛い美琴ちゃんの沼へ”
”困惑する新規からしか得られない栄養がある”
”そしてそんな困惑する新規を見て、愉悦ってる俺らに困惑する美琴ちゃんからしか得られない栄養がある”
”どうして時々ここに愉悦部が湧くんだよw”
”可愛くて強いとか最高じゃないですか。登録してベルマーク着けときました”
”ミニ丈着物いいね、ルナちゃんも色違いのおそろ衣装着てほしい”
”その考え、いいね!”
「わ、私なんかが美琴様とお揃いだなんて、おこがましいよ!」
「ルナちゃん、あまりそういう扱いはやめてほしいんだけど……」
つい先ほど、神様扱いをするのはやめると言っておきながら、ほぼ無意識なのか単純に崇めることが癖になっているのか、自分のことを卑下して美琴のことを持ち上げている。
『やめろと言われてすぐに態度を改めることは、そう容易なことではないのでしょうね』
「灯里ちゃんはすぐに順応してくれたけど」
『彼女はルナ様ほど狂信者ではなかったからでしょう。あくまで一般的な視聴者程度だったのでしょうね』
「ルナちゃんが普通じゃないような言い方はやめてって言いたいけど、あのリアクションを見ちゃうとね」
ものすごく興奮していたルナの姿を思い出し、苦笑を浮かべる。
しかしもし、美琴が同じように自分の推しに会うことができたら、同じように興奮するだろう。程度は別として。
そんなルナは今、後ろの方で自分の配信アーカイブを遡って何かしている。
顔がやけにうっとりとしているので、もしかしたら美琴が戦っているシーンを見返しているのかもしれない。
それよりも、彼女と組んでその能力の異端さがよく分かった。
広範囲にかける敵の行動を阻害するデバフ。自分を含めた味方に、下層モンスターを楽に倒せるようになる強力なバフ。そして、強力な攻撃魔術。
既存の魔術ではなく、彼女の一族の中で受け継がれ続けてきた月魔術だけで、下層のモンスターをやすやすと倒せている。
元々ブラッククロスのパーティーにいたこともあって実力は確かだし、相変わらず視聴者がおかしい数になっている美琴の配信に映り、臨時パーティーを組んだことで彼女の有用性が広まった。
ここからまた、灯里の時のようにたくさんの探索者達や企業、クランから勧誘の声がかかるだろう。
「ねえ、ルナちゃん」
「はい、なんですか?」
「もしよかったらだけど、私と灯里ちゃんのパーティーに入らない? 三人いれば、灯里ちゃんもルナちゃんも、より安全に下層で活動できるし」
「いいんですか!?」
もしかしたら、自分のせいでルナが今まで通りの活動がやりづらくなってしまう可能性が出てきてしまった。
ならば、弱小パーティーやクラン、ブラッククロスのようなブラッククランや企業などに目を付けられて、しつこく勧誘される前に保護する形で自分のパーティーに迎え入れてしまおうと考え、それを本人に提案した。
少しは考えるのかと思ったが、大きなお目目をきらっきらさせて速攻で食い付いてきた。
「さ、流石に灯里ちゃんとの相談にはなるけど、もしあの子がいいよって言ったら、改めて誘ってみようかなって」
「ぜひ! ぜひ加入させてください!」
”ルナちゃんまで美琴ちゃんパーティーに加入かよwww”
”どんどん戦力がおかしくなっていくってぇ……”
”ぶっちゃけ美琴ちゃん一人でもぶっ壊れなのに、成長性無限小柄ロリと、異次元バフデバフロリが加わったら、手が付けられなくなる”
”ルナちゃんよかったね! 夢が叶ったじゃん!”
”前々からずーっと、美琴ちゃんのパーティーに入りたいって言ってたもんね”
”灯里ちゃんとほとんど同じルート辿ってないこの子?”
”多分、他の企業やクラン、パーティーからしつこく勧誘されるのを防ぐために誘ったんだろうな”
”美琴ちゃん優しい”
”そのやさしさの勢いのまま、もっと我らにサービスシーンを提供してくれ”
「はーい、変態コメントは消していくからねー。じゃあとりあえず、一旦は保留ってことでいいかしら?」
「もちろんです! もし灯里さんが断ったら潔く諦めますけど、その時はコラボをたくさんしましょうね!」
「……ふふっ。そうね、たくさんコラボしましょう。何だったら、彩音先輩とかも誘っちゃおうかしら」
「おぉ! 豪華なコラボになりそうですね!」
まだ決まったわけじゃないのに、まるで組むことが決まっているようなテンションでいるルナ。
ここまで楽しみにされていると断りづらいので、灯里が渋ったらどうにかして説得しようと心に決める。
「よーし! やる気が漲ってきたし、ガンガンモンスターを殲滅していきましょう!」
「ほどほどにね。あまり暴れすぎたって、魔力がなくなったら何もできなくなるんだから」
モンスターハウスで戦ったばかりだというのに、その前よりもやる気と元気に満ち溢れるルナを見て、相当なムードメーカーだなと微笑みを浮かべる。
美琴も灯里もそこまで口数が多いわけではないので、もしこの子がパーティーに入ったら、賑やかになって楽しくなるだろうなと考え、軽い足取りで進んでいくルナの後をついて行く。
♢
「いやー、今日は最高にいい思い出になりました! 本当にありがとうございます!」
「こっちこそ。いきなり臨時を組もうって言ってOKしてくれてありがとうね」
あの後から美琴とルナは、次々と下層のモンスターと遭遇しては、行動阻害デバフをかけてから美琴とルナの近接と魔術の、絶対に逃がさない戦法で核石に変えて行った。
灯里と二人だけだったら、二時間の配信の間に三、四十体と遭遇すればいい方だったのだが、ルナの月魔術はモンスターの位置を割り出すこともできるようで、そこまで長い時間彷徨うことなく遭遇しては核石となってくれた。
そのおかげもあって、かなりたくさんの核石を手に入れた。
途中で少しレアなモンスター素材も落ちたが、揃って未成年であるため後ろ髪を引かれながらも放置して先に進んだ。
現在、二人は上層の方まで戻ってきており、少し進めば外に出られる。
ルナは少し疲れを感じさせる表情をしているが、非常に満ち足りているのが見て取れる。
『ところでルナ様。一つ気になることがあるのですが』
「何ですか?」
出口まであと数分というところで、アイリがルナに一つ質問をする。
『失礼ですが、ルナ様の家名であるエトルソスは、太陽を意味する言葉が語源ではないでしょうか?』
「よく分かりましたね。そうですよ。太陽の光の騎士をラテン語にして、もじったものだそうです。それがなにか?」
『太陽の光の騎士というのに、どうして一族の使う魔術は月なのでしょうか? どうしても、そこが引っかかるのです』
「AIなのに引っかかるって変な感じね」
ルナの家名が何を意味するのかなんて全く考えていなかったが、言われてみれば太陽なのに月とはおかしいと感じる。
「うーん、お父さん曰く、月の光って結局は太陽の光じゃないですか? だから下手に月の騎士って名乗るより、意外性を突いて太陽の光の騎士って名乗るようになったんじゃないかって言ってました」
『……そうですか。これで一つ、疑問が拭えました。ありがとうございます』
「いえいえー。ちゃんと答えられてよかったです」
ほんの一瞬だけ、ルナが言い淀んだように聞こえた。
しかしそれはほんの一瞬だし、それこそ気のせいだって言えるほどのものだ。
ルナの言う通り、月光も月に当たって反射してきた太陽の光だ。なので、そのまま月を家名に入れるよりも思い切って太陽を入れたって、少し違和感はあるかもしれないが不思議ではない。
しかし、よく彼女の名字から語源になった言葉を導き出したなと、ますます進化していっているアイリに少しだけ恐怖を覚える。
本当にこのまま進化していってあの映画のような世界になってしまうのではないかと思い、このことについて龍博に相談することにする。
「み゛ごどお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!! だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」
「うわぁ!? ま、マラブさん? どうしたのよ急に」
ダンジョンの入り口を過ぎて、少し進んだところで配信を終わらせる挨拶を言おうとした瞬間、全部に濁点が付いた声で誰かが飛びついてきた。
驚いて声を上げて、飛びついてきた人の正体を見て、これまた少し驚く。
飛びついてきたのは知者の魔神バラム、現在名前をマラブとして、琴音の芸能事務所のI&Mでグラビアモデルとして活動を始めている。
今日も撮影が入っていて、この時間はまだ撮影している時間だというのに、どうしてこんなところにいるのだろうか。
なんか体がぶるぶる震えていて、切れ長な目元には涙がたっぷり浮かんでいる。
「……何があったのよ」
「事情は後で話すから! だから今はとにかく、どこか安全な場所に連れて行って! じゃないと、じゃないと───」
「みーつーけたー♪」
びっくう!! とマラブの体が大きく跳ねる。ゆっくりと顔を後ろに向けて、「ひぃっ!?」と短い悲鳴を上げて、美琴の背後に隠れる。
「お母さん? もしかして、マラブさんを追いかけてきたの?」
声の主は、美琴の母親の琴音だった。
美琴より若干背が低い程度で、二十代だと言っても信じられるほど若々しくそっくりな顔立ちをしている琴音は、並べば確実に姉妹と間違われる。
そんな琴音は今、にっこりと笑みを浮かべているが、綺麗とか可憐と感じるよりも怖いと感じる。
「そうよお。まだ撮影のお仕事残っているのに、次の水着を着たくないからって逃げ出したのよ。苦労したわよ? その子、どこをどう逃げれば私を撒けるのか権能で見えるから、何度も何度も見失っちゃって」
「その権能持ちの魔神を何度も再捕捉するお母さんの方がすごいんだけど。で、どうしてマラブさんは逃げたの」
背中に張り付くように隠れているマラブに、呆れたように尋ねる。
「だ、だって、だって! あ、あんなえっちな水着、着られるわけないじゃない! 私、まだ活動始めたばかりの新人よ!?」
「知らないわよ。新人だろうが何だろうが、あなたは瞬く間に人気を獲得したうちの看板になり得る逸材なの。さあ、早く戻りましょう。みーんな、あなたの帰りを待っているわよ」
「い、嫌だ! 嫌だあ! 私、マイクロビキニなんて着たくない!」
「マイッ!?」
”マイクロビキニだとぅ!?”
”それを着ているマラブさんの雑誌はいつ出ますか!?”
”今すぐに次号の電子版を予約せねば!”
”やばすぎんだろwww マラブさん超でっかいんだし、絶対こぼれるってwww”
”今想像しただけでワイの息子がビッグになったぜ”
”先週の週刊雑誌のアダルティー水着もエロかったけど、マイクロは予想外過ぎる”
”金髪超ボイン美女の水着ってだけで最高なのに、マイクロビキニは男を殺しにかかってる”
”次号の紙の雑誌の奪い合いすごいことになりそうだなwww”
”マラブさん、デビュー前の評判だけでかなり人気えぐかったから、デビューしてから大爆発したよな。デビューした号の雑誌、あちこちの書店やコンビニからなくなってたし”
”電子版もアクセスめっっっっっっっちゃ集中してサイト落ちてたしな”
”腐れ十字抜けたのに、結局不憫な目に遭ってんのマジ草”
とんでもないものがマラブの口から飛び出てきて、それに驚愕する美琴。そして急加速するコメント欄。
「ダメよ、着なさい。これは社長命令よ」
「しゃ、社長命令でも無理なものは無理! あんなにちっちゃい布で、見せちゃいけないところ隠せるわけないでしょお!?」
「大丈夫大丈夫。ギリギリ見えないように特注した奴だから」
「余計に不安だってえ!?」
なんてものを着させようとしているんだと、美琴は頬を赤くして視線を少し彷徨わせる。
ルナも、美琴以上のグラマラス美女なマラブがそんなものを着ているところを想像したのか、顔を真っ赤にして両手で口元を隠している。
一応、理解できないことはない。
マラブほどグラマラスな体型であれば、かなり大胆に攻めた水着とかを着させることができる。外国人ともなればなおさらだ。
デビューしてまだ一か月も経っていない新人であるうちに、初動で大量の読者を確保しようとしていることは、少し前に琴音が帰宅した時に聞いていた。
でもまさか、そんなものを着させようとしているなんて思いもしなかった。
「美琴、早くマラブさんをこっちに寄こしなさい。さもないと」
「さ、さもないと?」
「美琴が販売しようとしているグッズの一つのシチュボ、超が十個くらいつく甘々なものにするわよ」
それを聞いた瞬間、触れているマラブに電流を流して脳から発せられる信号を一時的に遮断して、体の動きを一定時間封じる。
「ど、どうして……!?」
「ごめんなさい、マラブさん。私も譲れないものがあるの。はい、お母さん」
「ありがとう美琴。それじゃ、戻りましょう」
「み゛ごどの゛裏切者お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!?」
琴音に引き渡されたマラブが、半泣きになりながらずるずると引きずられて事務所の方に向かって連行されて行った。
「……なんか、台風が過ぎ去った後みたいな気分」
「ですね。……マイクロって……」
”いい情報聞けてラッキーだわ”
”あんな公衆の面前で何叫んでんだよマラブさんwwwww”
”どこに行っても不憫属性なのは変わらなかったよ……”
”サクッと美琴ちゃんに見捨てられるの草草の草”
”容赦ねえwww”
”今からマラブさんのマイクロビキニが楽しみだぜ!”
”しばらくは電子版を毎回予約するようだな”
”紙雑誌の争奪戦に勝てる気がしないから、俺も電子版で我慢するわ”
コメント欄はマラブの水着のことでいっぱいになっており、男性視聴者が多いのでそういうのに興味を持つのは理解できるが、やはり他の女性に興味を示されてちょっぴり不機嫌になり、頬を膨らませる。
それを見逃さずに即アイリによるいじりが始まり、視聴者達もそれに悪乗りしてきた。
すぐに収めようとするが中々収まらず、余計に不機嫌になったのでやけになったように適当な終わりの文言を言ってから配信を切った。
その後、ルナの方も配信を終わらせたので軽く言葉を交わしてから解散し、自宅に戻った。
帰宅後、ツウィーターを開いたら美琴の名前などがトレンドに入っていたが、一位と二位がマラブとマイクロビキニだったため、ふてくされてベッドにダイブしてふて寝した。
”いいもん見れたわ”
”今まで食わず嫌いで見てこなかったけど、どれだけ損していたのか分かったわ”
”新規眷属諸君へ、ようこそ、ぽんこつ可愛い美琴ちゃんの沼へ”
”困惑する新規からしか得られない栄養がある”
”そしてそんな困惑する新規を見て、愉悦ってる俺らに困惑する美琴ちゃんからしか得られない栄養がある”
”どうして時々ここに愉悦部が湧くんだよw”
”可愛くて強いとか最高じゃないですか。登録してベルマーク着けときました”
”ミニ丈着物いいね、ルナちゃんも色違いのおそろ衣装着てほしい”
”その考え、いいね!”
「わ、私なんかが美琴様とお揃いだなんて、おこがましいよ!」
「ルナちゃん、あまりそういう扱いはやめてほしいんだけど……」
つい先ほど、神様扱いをするのはやめると言っておきながら、ほぼ無意識なのか単純に崇めることが癖になっているのか、自分のことを卑下して美琴のことを持ち上げている。
『やめろと言われてすぐに態度を改めることは、そう容易なことではないのでしょうね』
「灯里ちゃんはすぐに順応してくれたけど」
『彼女はルナ様ほど狂信者ではなかったからでしょう。あくまで一般的な視聴者程度だったのでしょうね』
「ルナちゃんが普通じゃないような言い方はやめてって言いたいけど、あのリアクションを見ちゃうとね」
ものすごく興奮していたルナの姿を思い出し、苦笑を浮かべる。
しかしもし、美琴が同じように自分の推しに会うことができたら、同じように興奮するだろう。程度は別として。
そんなルナは今、後ろの方で自分の配信アーカイブを遡って何かしている。
顔がやけにうっとりとしているので、もしかしたら美琴が戦っているシーンを見返しているのかもしれない。
それよりも、彼女と組んでその能力の異端さがよく分かった。
広範囲にかける敵の行動を阻害するデバフ。自分を含めた味方に、下層モンスターを楽に倒せるようになる強力なバフ。そして、強力な攻撃魔術。
既存の魔術ではなく、彼女の一族の中で受け継がれ続けてきた月魔術だけで、下層のモンスターをやすやすと倒せている。
元々ブラッククロスのパーティーにいたこともあって実力は確かだし、相変わらず視聴者がおかしい数になっている美琴の配信に映り、臨時パーティーを組んだことで彼女の有用性が広まった。
ここからまた、灯里の時のようにたくさんの探索者達や企業、クランから勧誘の声がかかるだろう。
「ねえ、ルナちゃん」
「はい、なんですか?」
「もしよかったらだけど、私と灯里ちゃんのパーティーに入らない? 三人いれば、灯里ちゃんもルナちゃんも、より安全に下層で活動できるし」
「いいんですか!?」
もしかしたら、自分のせいでルナが今まで通りの活動がやりづらくなってしまう可能性が出てきてしまった。
ならば、弱小パーティーやクラン、ブラッククロスのようなブラッククランや企業などに目を付けられて、しつこく勧誘される前に保護する形で自分のパーティーに迎え入れてしまおうと考え、それを本人に提案した。
少しは考えるのかと思ったが、大きなお目目をきらっきらさせて速攻で食い付いてきた。
「さ、流石に灯里ちゃんとの相談にはなるけど、もしあの子がいいよって言ったら、改めて誘ってみようかなって」
「ぜひ! ぜひ加入させてください!」
”ルナちゃんまで美琴ちゃんパーティーに加入かよwww”
”どんどん戦力がおかしくなっていくってぇ……”
”ぶっちゃけ美琴ちゃん一人でもぶっ壊れなのに、成長性無限小柄ロリと、異次元バフデバフロリが加わったら、手が付けられなくなる”
”ルナちゃんよかったね! 夢が叶ったじゃん!”
”前々からずーっと、美琴ちゃんのパーティーに入りたいって言ってたもんね”
”灯里ちゃんとほとんど同じルート辿ってないこの子?”
”多分、他の企業やクラン、パーティーからしつこく勧誘されるのを防ぐために誘ったんだろうな”
”美琴ちゃん優しい”
”そのやさしさの勢いのまま、もっと我らにサービスシーンを提供してくれ”
「はーい、変態コメントは消していくからねー。じゃあとりあえず、一旦は保留ってことでいいかしら?」
「もちろんです! もし灯里さんが断ったら潔く諦めますけど、その時はコラボをたくさんしましょうね!」
「……ふふっ。そうね、たくさんコラボしましょう。何だったら、彩音先輩とかも誘っちゃおうかしら」
「おぉ! 豪華なコラボになりそうですね!」
まだ決まったわけじゃないのに、まるで組むことが決まっているようなテンションでいるルナ。
ここまで楽しみにされていると断りづらいので、灯里が渋ったらどうにかして説得しようと心に決める。
「よーし! やる気が漲ってきたし、ガンガンモンスターを殲滅していきましょう!」
「ほどほどにね。あまり暴れすぎたって、魔力がなくなったら何もできなくなるんだから」
モンスターハウスで戦ったばかりだというのに、その前よりもやる気と元気に満ち溢れるルナを見て、相当なムードメーカーだなと微笑みを浮かべる。
美琴も灯里もそこまで口数が多いわけではないので、もしこの子がパーティーに入ったら、賑やかになって楽しくなるだろうなと考え、軽い足取りで進んでいくルナの後をついて行く。
♢
「いやー、今日は最高にいい思い出になりました! 本当にありがとうございます!」
「こっちこそ。いきなり臨時を組もうって言ってOKしてくれてありがとうね」
あの後から美琴とルナは、次々と下層のモンスターと遭遇しては、行動阻害デバフをかけてから美琴とルナの近接と魔術の、絶対に逃がさない戦法で核石に変えて行った。
灯里と二人だけだったら、二時間の配信の間に三、四十体と遭遇すればいい方だったのだが、ルナの月魔術はモンスターの位置を割り出すこともできるようで、そこまで長い時間彷徨うことなく遭遇しては核石となってくれた。
そのおかげもあって、かなりたくさんの核石を手に入れた。
途中で少しレアなモンスター素材も落ちたが、揃って未成年であるため後ろ髪を引かれながらも放置して先に進んだ。
現在、二人は上層の方まで戻ってきており、少し進めば外に出られる。
ルナは少し疲れを感じさせる表情をしているが、非常に満ち足りているのが見て取れる。
『ところでルナ様。一つ気になることがあるのですが』
「何ですか?」
出口まであと数分というところで、アイリがルナに一つ質問をする。
『失礼ですが、ルナ様の家名であるエトルソスは、太陽を意味する言葉が語源ではないでしょうか?』
「よく分かりましたね。そうですよ。太陽の光の騎士をラテン語にして、もじったものだそうです。それがなにか?」
『太陽の光の騎士というのに、どうして一族の使う魔術は月なのでしょうか? どうしても、そこが引っかかるのです』
「AIなのに引っかかるって変な感じね」
ルナの家名が何を意味するのかなんて全く考えていなかったが、言われてみれば太陽なのに月とはおかしいと感じる。
「うーん、お父さん曰く、月の光って結局は太陽の光じゃないですか? だから下手に月の騎士って名乗るより、意外性を突いて太陽の光の騎士って名乗るようになったんじゃないかって言ってました」
『……そうですか。これで一つ、疑問が拭えました。ありがとうございます』
「いえいえー。ちゃんと答えられてよかったです」
ほんの一瞬だけ、ルナが言い淀んだように聞こえた。
しかしそれはほんの一瞬だし、それこそ気のせいだって言えるほどのものだ。
ルナの言う通り、月光も月に当たって反射してきた太陽の光だ。なので、そのまま月を家名に入れるよりも思い切って太陽を入れたって、少し違和感はあるかもしれないが不思議ではない。
しかし、よく彼女の名字から語源になった言葉を導き出したなと、ますます進化していっているアイリに少しだけ恐怖を覚える。
本当にこのまま進化していってあの映画のような世界になってしまうのではないかと思い、このことについて龍博に相談することにする。
「み゛ごどお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!! だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」
「うわぁ!? ま、マラブさん? どうしたのよ急に」
ダンジョンの入り口を過ぎて、少し進んだところで配信を終わらせる挨拶を言おうとした瞬間、全部に濁点が付いた声で誰かが飛びついてきた。
驚いて声を上げて、飛びついてきた人の正体を見て、これまた少し驚く。
飛びついてきたのは知者の魔神バラム、現在名前をマラブとして、琴音の芸能事務所のI&Mでグラビアモデルとして活動を始めている。
今日も撮影が入っていて、この時間はまだ撮影している時間だというのに、どうしてこんなところにいるのだろうか。
なんか体がぶるぶる震えていて、切れ長な目元には涙がたっぷり浮かんでいる。
「……何があったのよ」
「事情は後で話すから! だから今はとにかく、どこか安全な場所に連れて行って! じゃないと、じゃないと───」
「みーつーけたー♪」
びっくう!! とマラブの体が大きく跳ねる。ゆっくりと顔を後ろに向けて、「ひぃっ!?」と短い悲鳴を上げて、美琴の背後に隠れる。
「お母さん? もしかして、マラブさんを追いかけてきたの?」
声の主は、美琴の母親の琴音だった。
美琴より若干背が低い程度で、二十代だと言っても信じられるほど若々しくそっくりな顔立ちをしている琴音は、並べば確実に姉妹と間違われる。
そんな琴音は今、にっこりと笑みを浮かべているが、綺麗とか可憐と感じるよりも怖いと感じる。
「そうよお。まだ撮影のお仕事残っているのに、次の水着を着たくないからって逃げ出したのよ。苦労したわよ? その子、どこをどう逃げれば私を撒けるのか権能で見えるから、何度も何度も見失っちゃって」
「その権能持ちの魔神を何度も再捕捉するお母さんの方がすごいんだけど。で、どうしてマラブさんは逃げたの」
背中に張り付くように隠れているマラブに、呆れたように尋ねる。
「だ、だって、だって! あ、あんなえっちな水着、着られるわけないじゃない! 私、まだ活動始めたばかりの新人よ!?」
「知らないわよ。新人だろうが何だろうが、あなたは瞬く間に人気を獲得したうちの看板になり得る逸材なの。さあ、早く戻りましょう。みーんな、あなたの帰りを待っているわよ」
「い、嫌だ! 嫌だあ! 私、マイクロビキニなんて着たくない!」
「マイッ!?」
”マイクロビキニだとぅ!?”
”それを着ているマラブさんの雑誌はいつ出ますか!?”
”今すぐに次号の電子版を予約せねば!”
”やばすぎんだろwww マラブさん超でっかいんだし、絶対こぼれるってwww”
”今想像しただけでワイの息子がビッグになったぜ”
”先週の週刊雑誌のアダルティー水着もエロかったけど、マイクロは予想外過ぎる”
”金髪超ボイン美女の水着ってだけで最高なのに、マイクロビキニは男を殺しにかかってる”
”次号の紙の雑誌の奪い合いすごいことになりそうだなwww”
”マラブさん、デビュー前の評判だけでかなり人気えぐかったから、デビューしてから大爆発したよな。デビューした号の雑誌、あちこちの書店やコンビニからなくなってたし”
”電子版もアクセスめっっっっっっっちゃ集中してサイト落ちてたしな”
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とんでもないものがマラブの口から飛び出てきて、それに驚愕する美琴。そして急加速するコメント欄。
「ダメよ、着なさい。これは社長命令よ」
「しゃ、社長命令でも無理なものは無理! あんなにちっちゃい布で、見せちゃいけないところ隠せるわけないでしょお!?」
「大丈夫大丈夫。ギリギリ見えないように特注した奴だから」
「余計に不安だってえ!?」
なんてものを着させようとしているんだと、美琴は頬を赤くして視線を少し彷徨わせる。
ルナも、美琴以上のグラマラス美女なマラブがそんなものを着ているところを想像したのか、顔を真っ赤にして両手で口元を隠している。
一応、理解できないことはない。
マラブほどグラマラスな体型であれば、かなり大胆に攻めた水着とかを着させることができる。外国人ともなればなおさらだ。
デビューしてまだ一か月も経っていない新人であるうちに、初動で大量の読者を確保しようとしていることは、少し前に琴音が帰宅した時に聞いていた。
でもまさか、そんなものを着させようとしているなんて思いもしなかった。
「美琴、早くマラブさんをこっちに寄こしなさい。さもないと」
「さ、さもないと?」
「美琴が販売しようとしているグッズの一つのシチュボ、超が十個くらいつく甘々なものにするわよ」
それを聞いた瞬間、触れているマラブに電流を流して脳から発せられる信号を一時的に遮断して、体の動きを一定時間封じる。
「ど、どうして……!?」
「ごめんなさい、マラブさん。私も譲れないものがあるの。はい、お母さん」
「ありがとう美琴。それじゃ、戻りましょう」
「み゛ごどの゛裏切者お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!?」
琴音に引き渡されたマラブが、半泣きになりながらずるずると引きずられて事務所の方に向かって連行されて行った。
「……なんか、台風が過ぎ去った後みたいな気分」
「ですね。……マイクロって……」
”いい情報聞けてラッキーだわ”
”あんな公衆の面前で何叫んでんだよマラブさんwwwww”
”どこに行っても不憫属性なのは変わらなかったよ……”
”サクッと美琴ちゃんに見捨てられるの草草の草”
”容赦ねえwww”
”今からマラブさんのマイクロビキニが楽しみだぜ!”
”しばらくは電子版を毎回予約するようだな”
”紙雑誌の争奪戦に勝てる気がしないから、俺も電子版で我慢するわ”
コメント欄はマラブの水着のことでいっぱいになっており、男性視聴者が多いのでそういうのに興味を持つのは理解できるが、やはり他の女性に興味を示されてちょっぴり不機嫌になり、頬を膨らませる。
それを見逃さずに即アイリによるいじりが始まり、視聴者達もそれに悪乗りしてきた。
すぐに収めようとするが中々収まらず、余計に不機嫌になったのでやけになったように適当な終わりの文言を言ってから配信を切った。
その後、ルナの方も配信を終わらせたので軽く言葉を交わしてから解散し、自宅に戻った。
帰宅後、ツウィーターを開いたら美琴の名前などがトレンドに入っていたが、一位と二位がマラブとマイクロビキニだったため、ふてくされてベッドにダイブしてふて寝した。
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だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
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ゲーム系の引っ張ってくるなら、せめてバレないようにした方が良いと思うんですが……。
さすがに、二次創作ではなく一次創作で、名字と得物と属性と設定と……ここまで一致させてくるのはもはやパクリレベルだと思いますよ。
確かに読者は知っている人はわかりやすいかもですが、本家が好きな人にとっては、かなり不快になる人もいるかと。
何よりも、雷電という字と能力の説明と容姿さえどうにかできていれば、まだパクリではないと思ってくれると思います。ゲームの設定を利用して楽しようとした、と思われてもおかしくはありません。
カク◯ムで投稿されてますか?
これまた濃いキャラが出てきましたね。
新規の美琴のクランに入るのもほぼ決まりみたいだな。