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第一部 第三章 一難去ってまた一難?
39話 新人育成を決める雷神系女子高生
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まさかの炎の魔法使いと出会うというイベントがあり、守衛が抑え込んでいる女性が燈条雅火だと知って周りが大騒ぎになってから十分後。
なんとかその場から離れることに成功し、探索者ギルド内の喫茶店の中に入る。
「まずは先に礼を言わせてくれ。妹を助けてくれてありがとう」
「いえ、大したことは。困っている人を見かけたら助けるのは当たり前ですし」
「……知り合いのどこぞの退魔師と似たようなことを言うね、君」
何か礼をされたくて助けたわけではなく、純粋に助けたいと思ったから行動に移したと言うと、少しだけきょとんとした顔をした後にふわりと笑みを浮かべる。
「自己紹介がまだだったね。私は燈条雅火。この子、灯里の姉で、知っての通り炎の魔法使いだ」
本人の口から直接魔法使いであることが明かされると、やはり初めて見る魔法使いということで少し緊張する。
魔法は魔術の原型である全ての現象の法律そのもので、何があっても魔法が優先される。水の魔術で炎の魔法に挑んでも水が燃やされるという、理解不能が現象が起きるくらいには、魔法が優先される。
美琴は分類上は魔神に当てはまるため、雷は権能に当たるため雅火よりも強いが、魔法使いは国の存続にかかわるような怪異や魔物との戦いに駆り出されるため、ダンジョンに潜って戦う探索者よりも実力が優れている。
もしここで彼女と本気でやりあったら、美琴本人の実戦経験の浅さもあって、雅火と相打ちになるかもしれない。
「君のことは知っているよ、雷電美琴。まだ配信中みたいだから、琴峰美琴と呼んだ方がいいかな?」
「どっちでも平気です。アモンとの戦いで本名知られちゃいましたし」
「そうか。ふむ、では下の名前で呼ばせてもらうよ。そちらも私のことを雅火と呼んでもかまわない」
「では雅火さんと。聞きたいのですが、雅火さんはどうしてここに? イギリス魔術協会の魔法使いとして管理されていますよね?」
「あ、それ私も聞きたかった。どうしてお姉ちゃんは今、日本にいるの?」
魔法使いは国に管理される。
魔法はどれも例外なく強力で、その国にとっての最大戦力となる。
そんな魔法使いを管理している国は、そう簡単に出国させてはくれない。もしも管理している国を離れて、移動した先の国に奪われたりでもしたら、戦力の大幅減少につながるからだ。
過去に、元々雅火と同じイギリス魔術協会に属していた魔法使いが一人、日本の魔術協会に移籍したことがある。その時の騒ぎようと言ったら、それはもうすさまじかった。
「どうしてと言われても、そりゃもちろん妹の誕生日を祝うために決まっているだろう。本当ならサプライズで家に行くつもりだったんだが、予想外な出来事が起きたからな。サプライズは失敗に終わってしまったよ」
「そっか、今日私の……」
「毎年自分の誕生日を、一か月前から楽しみにしているお前が忘れるほどとはな。……そこのAI。あの腐り散らかしているクランの住所を教えてほしい」
『何をなさろうとしているのか、二百通り演算して全て同じ結末に向かっているので、お教えできません』
「何、ただ妹のことを『お世話』してくれたクランのマスターと、会話したいだけさ」
そうにこりと笑みを浮かべながら言うが、目が全く笑っていない。それどころか、怒り以外の感情が全て抜け落ちているように見える。
”目が笑ってねえwwww”
”あの黒十字、魔法使いを敵に回すとか愚かなことしたな”
”魔法使いの身内を雑に扱った結果、魔法使い本人がやってくるとかシャレにならんわwww”
”というか魔法使い本人が来るとかだれが予想できるよ”
”美琴ちゃんとは別のベクトルで美人なんだけど、顔が綺麗であるが故にキレると超怖え”
”ただでさえ真っ黒な十字架が、炎の魔法で更に真っ黒になるのか”
”炎魔法使われたら消し炭じゃなくて例外なく灰になるから、これからは灰ゴミクランと呼ぼう”
”【悲報】灰ゴミクランマスター、雷の魔神と魔法使いに目を付けられる”
”圧倒的絶望で草しか生えん”
かなり本気で怒っている雅火をカメラ越しに見ている視聴者達は、その怒りが自分ではなくブラッククロスに向けられていることを知っているため、ただただざまあ見ろと思っているようだ。
しかし、もしこの怒りの矛先が自分に向くと思うと、美琴は怖くて仕方がない。
魔神であるため一応平気だが、それでも炎は怖いものだ。
『お嬢様、この際です。灯里様とデュオを組んでみてはいかがでしょうか? 新人の育成にもなりますし、連携の練習にもなります』
「それは分かるけど、私は前みたいに力が抑え込まれているわけじゃないし、手加減も全くできない状態だから練習にもならないと思うわよ」
「力が、抑え込まれている……? 美琴、さん、は力を抑えていたのですか?」
今まで配信で力が封印されていたことを伏せていたため、そのことを知らない灯里が首を傾げながら聞いてくる。
「そうなの。今までは私は力を七分割して、分割したそれぞれに封印がかかっていたの。一鳴とか七鳴神とかは、元は封印している力をどれだけ引き出したかを示す名前だったの」
『それが今では、素の状態でかつての七鳴神ほどの雷が使えるようになり、諸願七雷のそれぞれの名前は全て、どれだけその状態から強化するかに変わりましたね。はてさて、七鳴神まで使ったら、どんな被害が出るのでしょうね』
「想像もできないから、また魔神と本気で戦わなきゃいけない状況にならない限り、使うつもりはないわよ。何もなしの状態で、下層のモンスター一撃で倒しちゃうんだから」
「暇潰しで君の配信を観させてもらっていたが、最強格のモンスターが軒並みワンパンで、コラボ相手のそこの三人が何もできずにいておかしくて腹を抱えたな」
”連携を覚えるためのコラボ配信が、手加減を覚えるための配信に切り替わったくらいだしね”
”ミノの頭に乗って角掴んで電撃で焼き殺した時は、色々とショックを受けたけど”
”電撃だけにかwww”
”人間電気椅子状態だったな。でも美琴ちゃんに触れてもらえるだけで羨ましい”
”毎度この配信には一定数、美琴ちゃんに踏まれたいとか電撃撃ち込まれたい変態が湧くな”
”変態を見るような目を向けられたいのもいるぞ”
”美人女子高生の配信に変態が湧くの事案すぎるwww”
「はーい、これ以上変なコメント打ち込むようなら書き込み停止にするからねー。……でも、灯里ちゃんの安全を考慮すると、確実に誰かと一緒にいたほうがいいのよね。でも私は魔術師じゃないから、育成と言ってもどうすればいいか分からないわよ?」
『お嬢様の雷も、根っこの部分では呪術と似ているでしょう。立ち回りを教えればよろしいかと』
「立ち回り、か。確かにそれは重要よね。術師は間合い詰められると結構危険だし、詰められないようにする立ち回りも必要になるし」
美琴は基本は薙刀を使った近距離から中距離の戦い方だが、雷だけを使うのならば魔術師や呪術師と同じ立ち回りが要求されなくもない。
火力が高すぎて基本一撃だが、その火力を出す前に詰められたら役に立たないところは同じだ。
だが、勉強はともかく戦いのコツを人に教えることは今までなかったので、上手く教えられるかどうか不安なところだ。
「……あ」
と、ふと顔を上げて隣で若干怯えながら紅茶を飲む彩音の顔を見て、一つ名案が降ってくる。
「ねえ、彩音先輩」
「な、何かな?」
「先輩達って、明日も予定空いていますか?」
「空いているけど、それがどうかしたの?」
これは実に都合がいいと、小さく笑みを浮かべる。
「私一人では上手く教えられる自信がないので、手伝ってもらえませんか?」
「手伝うって、灯里ちゃんの育成をってこと? 元々、美琴ちゃんだけに任せるつもりはなかったからいいけど」
「よかったです。では、早速なんですけど、明日またコラボしませんか? いきなりなのは承知ですけど」
美琴が思いついたこと。それは、明日もまたコラボ配信をして、その中で灯里を育成するということだ。
美琴は近・中距離での立ち回りを、彩音達は複数人との連携を教える。それぞれの得意分野を活かす様に、新人である灯里に教えるのだ。
「本当にいきなりね? でも、まあ、いいわよ。新人の育成は得意よ」
彩音がそう言うと、灯里が驚いたように目を見開く。
「い、いいんですか? 私みたいなド初心者なんかに……」
「灯里、これは滅多にない機会だと思うぞ。ここは素直に、お前の先輩たちの厚意に甘えておくのが吉だ」
『なによりも、かつてのパーティーよりも探索者の等級は上ですし、一名に限っては魔神相手に大勢の住民を庇いながら戦って倒した実績があります。下手な上位の探索者パーティーなんかよりも、よっぽど安全ですよ』
アイリと姉の雅火に説得されるように言われ、少し悩むようなそぶりを見せる。
彼女からすれば、様付けで呼ぶくらい尊敬する美琴や、その美琴が先輩と敬う三人から教えてもらえるのは、願ってもいないことだろう。
しかしその先輩に迷惑をかけたくはないとも思っているのか、頭を捻りながら一分近く悩む。
「……その、お願いしてもいい、ですか?」
悩んだ末に、灯里は教えを乞うことにした。
「もちろん、いいわよ。助けるだけ助けてさようならじゃ、後味最悪だし」
「私も同じよ、灯里ちゃん。慎司くんと和弘くんも、いいわよね?」
「毎度そっちで決めてから確認するのはやめてくれ。ま、おれも未来ある新人をほっとけねーわ」
「何だったら、俺らのパーティーに加わってもいいと思うけどな。彩音と同性で、気も合いそうだし」
おずおずといった様子で聞いてきた灯里に、美琴と彩音は笑顔で答え、和弘と慎司も了承する。
美琴達から言ったことなのだが、本当に受け入れてくれたことは嬉しいのか、ぱっと表情を明るくさせる。暗い雰囲気よりも、やはり明るい雰囲気や表情でいたほうが似合っている。
これで魔法使いの妹である灯里は、美琴達と共に行動することが決まり、早速明日三度目の正直となるコラボ配信を決定する。
そして、この三度目のコラボ配信がきっかけで、美琴達は想像も付かないような一難とぶち当たることになるのだが、この時はまだ五人とも何も知らない。
なんとかその場から離れることに成功し、探索者ギルド内の喫茶店の中に入る。
「まずは先に礼を言わせてくれ。妹を助けてくれてありがとう」
「いえ、大したことは。困っている人を見かけたら助けるのは当たり前ですし」
「……知り合いのどこぞの退魔師と似たようなことを言うね、君」
何か礼をされたくて助けたわけではなく、純粋に助けたいと思ったから行動に移したと言うと、少しだけきょとんとした顔をした後にふわりと笑みを浮かべる。
「自己紹介がまだだったね。私は燈条雅火。この子、灯里の姉で、知っての通り炎の魔法使いだ」
本人の口から直接魔法使いであることが明かされると、やはり初めて見る魔法使いということで少し緊張する。
魔法は魔術の原型である全ての現象の法律そのもので、何があっても魔法が優先される。水の魔術で炎の魔法に挑んでも水が燃やされるという、理解不能が現象が起きるくらいには、魔法が優先される。
美琴は分類上は魔神に当てはまるため、雷は権能に当たるため雅火よりも強いが、魔法使いは国の存続にかかわるような怪異や魔物との戦いに駆り出されるため、ダンジョンに潜って戦う探索者よりも実力が優れている。
もしここで彼女と本気でやりあったら、美琴本人の実戦経験の浅さもあって、雅火と相打ちになるかもしれない。
「君のことは知っているよ、雷電美琴。まだ配信中みたいだから、琴峰美琴と呼んだ方がいいかな?」
「どっちでも平気です。アモンとの戦いで本名知られちゃいましたし」
「そうか。ふむ、では下の名前で呼ばせてもらうよ。そちらも私のことを雅火と呼んでもかまわない」
「では雅火さんと。聞きたいのですが、雅火さんはどうしてここに? イギリス魔術協会の魔法使いとして管理されていますよね?」
「あ、それ私も聞きたかった。どうしてお姉ちゃんは今、日本にいるの?」
魔法使いは国に管理される。
魔法はどれも例外なく強力で、その国にとっての最大戦力となる。
そんな魔法使いを管理している国は、そう簡単に出国させてはくれない。もしも管理している国を離れて、移動した先の国に奪われたりでもしたら、戦力の大幅減少につながるからだ。
過去に、元々雅火と同じイギリス魔術協会に属していた魔法使いが一人、日本の魔術協会に移籍したことがある。その時の騒ぎようと言ったら、それはもうすさまじかった。
「どうしてと言われても、そりゃもちろん妹の誕生日を祝うために決まっているだろう。本当ならサプライズで家に行くつもりだったんだが、予想外な出来事が起きたからな。サプライズは失敗に終わってしまったよ」
「そっか、今日私の……」
「毎年自分の誕生日を、一か月前から楽しみにしているお前が忘れるほどとはな。……そこのAI。あの腐り散らかしているクランの住所を教えてほしい」
『何をなさろうとしているのか、二百通り演算して全て同じ結末に向かっているので、お教えできません』
「何、ただ妹のことを『お世話』してくれたクランのマスターと、会話したいだけさ」
そうにこりと笑みを浮かべながら言うが、目が全く笑っていない。それどころか、怒り以外の感情が全て抜け落ちているように見える。
”目が笑ってねえwwww”
”あの黒十字、魔法使いを敵に回すとか愚かなことしたな”
”魔法使いの身内を雑に扱った結果、魔法使い本人がやってくるとかシャレにならんわwww”
”というか魔法使い本人が来るとかだれが予想できるよ”
”美琴ちゃんとは別のベクトルで美人なんだけど、顔が綺麗であるが故にキレると超怖え”
”ただでさえ真っ黒な十字架が、炎の魔法で更に真っ黒になるのか”
”炎魔法使われたら消し炭じゃなくて例外なく灰になるから、これからは灰ゴミクランと呼ぼう”
”【悲報】灰ゴミクランマスター、雷の魔神と魔法使いに目を付けられる”
”圧倒的絶望で草しか生えん”
かなり本気で怒っている雅火をカメラ越しに見ている視聴者達は、その怒りが自分ではなくブラッククロスに向けられていることを知っているため、ただただざまあ見ろと思っているようだ。
しかし、もしこの怒りの矛先が自分に向くと思うと、美琴は怖くて仕方がない。
魔神であるため一応平気だが、それでも炎は怖いものだ。
『お嬢様、この際です。灯里様とデュオを組んでみてはいかがでしょうか? 新人の育成にもなりますし、連携の練習にもなります』
「それは分かるけど、私は前みたいに力が抑え込まれているわけじゃないし、手加減も全くできない状態だから練習にもならないと思うわよ」
「力が、抑え込まれている……? 美琴、さん、は力を抑えていたのですか?」
今まで配信で力が封印されていたことを伏せていたため、そのことを知らない灯里が首を傾げながら聞いてくる。
「そうなの。今までは私は力を七分割して、分割したそれぞれに封印がかかっていたの。一鳴とか七鳴神とかは、元は封印している力をどれだけ引き出したかを示す名前だったの」
『それが今では、素の状態でかつての七鳴神ほどの雷が使えるようになり、諸願七雷のそれぞれの名前は全て、どれだけその状態から強化するかに変わりましたね。はてさて、七鳴神まで使ったら、どんな被害が出るのでしょうね』
「想像もできないから、また魔神と本気で戦わなきゃいけない状況にならない限り、使うつもりはないわよ。何もなしの状態で、下層のモンスター一撃で倒しちゃうんだから」
「暇潰しで君の配信を観させてもらっていたが、最強格のモンスターが軒並みワンパンで、コラボ相手のそこの三人が何もできずにいておかしくて腹を抱えたな」
”連携を覚えるためのコラボ配信が、手加減を覚えるための配信に切り替わったくらいだしね”
”ミノの頭に乗って角掴んで電撃で焼き殺した時は、色々とショックを受けたけど”
”電撃だけにかwww”
”人間電気椅子状態だったな。でも美琴ちゃんに触れてもらえるだけで羨ましい”
”毎度この配信には一定数、美琴ちゃんに踏まれたいとか電撃撃ち込まれたい変態が湧くな”
”変態を見るような目を向けられたいのもいるぞ”
”美人女子高生の配信に変態が湧くの事案すぎるwww”
「はーい、これ以上変なコメント打ち込むようなら書き込み停止にするからねー。……でも、灯里ちゃんの安全を考慮すると、確実に誰かと一緒にいたほうがいいのよね。でも私は魔術師じゃないから、育成と言ってもどうすればいいか分からないわよ?」
『お嬢様の雷も、根っこの部分では呪術と似ているでしょう。立ち回りを教えればよろしいかと』
「立ち回り、か。確かにそれは重要よね。術師は間合い詰められると結構危険だし、詰められないようにする立ち回りも必要になるし」
美琴は基本は薙刀を使った近距離から中距離の戦い方だが、雷だけを使うのならば魔術師や呪術師と同じ立ち回りが要求されなくもない。
火力が高すぎて基本一撃だが、その火力を出す前に詰められたら役に立たないところは同じだ。
だが、勉強はともかく戦いのコツを人に教えることは今までなかったので、上手く教えられるかどうか不安なところだ。
「……あ」
と、ふと顔を上げて隣で若干怯えながら紅茶を飲む彩音の顔を見て、一つ名案が降ってくる。
「ねえ、彩音先輩」
「な、何かな?」
「先輩達って、明日も予定空いていますか?」
「空いているけど、それがどうかしたの?」
これは実に都合がいいと、小さく笑みを浮かべる。
「私一人では上手く教えられる自信がないので、手伝ってもらえませんか?」
「手伝うって、灯里ちゃんの育成をってこと? 元々、美琴ちゃんだけに任せるつもりはなかったからいいけど」
「よかったです。では、早速なんですけど、明日またコラボしませんか? いきなりなのは承知ですけど」
美琴が思いついたこと。それは、明日もまたコラボ配信をして、その中で灯里を育成するということだ。
美琴は近・中距離での立ち回りを、彩音達は複数人との連携を教える。それぞれの得意分野を活かす様に、新人である灯里に教えるのだ。
「本当にいきなりね? でも、まあ、いいわよ。新人の育成は得意よ」
彩音がそう言うと、灯里が驚いたように目を見開く。
「い、いいんですか? 私みたいなド初心者なんかに……」
「灯里、これは滅多にない機会だと思うぞ。ここは素直に、お前の先輩たちの厚意に甘えておくのが吉だ」
『なによりも、かつてのパーティーよりも探索者の等級は上ですし、一名に限っては魔神相手に大勢の住民を庇いながら戦って倒した実績があります。下手な上位の探索者パーティーなんかよりも、よっぽど安全ですよ』
アイリと姉の雅火に説得されるように言われ、少し悩むようなそぶりを見せる。
彼女からすれば、様付けで呼ぶくらい尊敬する美琴や、その美琴が先輩と敬う三人から教えてもらえるのは、願ってもいないことだろう。
しかしその先輩に迷惑をかけたくはないとも思っているのか、頭を捻りながら一分近く悩む。
「……その、お願いしてもいい、ですか?」
悩んだ末に、灯里は教えを乞うことにした。
「もちろん、いいわよ。助けるだけ助けてさようならじゃ、後味最悪だし」
「私も同じよ、灯里ちゃん。慎司くんと和弘くんも、いいわよね?」
「毎度そっちで決めてから確認するのはやめてくれ。ま、おれも未来ある新人をほっとけねーわ」
「何だったら、俺らのパーティーに加わってもいいと思うけどな。彩音と同性で、気も合いそうだし」
おずおずといった様子で聞いてきた灯里に、美琴と彩音は笑顔で答え、和弘と慎司も了承する。
美琴達から言ったことなのだが、本当に受け入れてくれたことは嬉しいのか、ぱっと表情を明るくさせる。暗い雰囲気よりも、やはり明るい雰囲気や表情でいたほうが似合っている。
これで魔法使いの妹である灯里は、美琴達と共に行動することが決まり、早速明日三度目の正直となるコラボ配信を決定する。
そして、この三度目のコラボ配信がきっかけで、美琴達は想像も付かないような一難とぶち当たることになるのだが、この時はまだ五人とも何も知らない。
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