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第一部 第二章 炎雷
第24話 コラボ配信
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とんでもないバズりがきっかけで火が付き、チャンネル登録者数が激増して目を回した日から二週間が過ぎた。
今なおチャンネル登録者数は伸び続けており、眠っている間に二百万人を軽く突破していた。
「健康優良児の美琴らしいというか、なんというか。チャンネルの伸び方と美琴の生活習慣じゃ、突破の瞬間を視聴者と一緒に、なんてことは今後余程運がないとできないね」
朝起きてパニックになった美琴は登校後即昌に泣きついたが、呆れたように笑われておしまいだった。
ちなみに収益化の件だが、成長速度があまりにも早いからか審査に時間がかかっているようだ。それにしてもかかりすぎな気はしなくもないが、そこは気にしないでおく。
そんなことよりも美琴の脳を一番バグらせたのは、美琴の先輩探索者と配信者に当たる、トライアドちゃんねるの方から直接コラボ配信のお誘いがあったことだ。
登録者の数だけで言えば美琴のほうが上になってしまったが、最初にとてつもない起爆剤が放り込まれた後に配信の中でとんでもないことを連続して行って、それが拡散されて行ったからで、美琴が評価されているのもあるが純度百パーセントの努力の結果とも少し言い難いかもしれない。
一方でトライアドちゃんねるは、ダンジョン攻略系配信者の黎明期から活動を始め、地道な努力と活動実績で七十万人という数字まで伸ばした実力者だ。
ただモンスターを薙刀で倒していくだけの配信の美琴とは違って、しっかりとお手本のような丁寧な連携でモンスターを倒し、その後に解説を付けるため根強いファンがとても多い。
美琴もあの一件以降トライアドちゃんねるの配信や切り抜き動画を観るようになり、初心者にも非常に分かりやすい解説をすることに感銘を受けていた。
そんなところに当の本人から直接お誘いが来たため、危うく座っている椅子ごと後ろに転げ落ちるところだった。
もちろんコラボ配信は了承して、お互いのスケジュールなどを話し合ってついに今日、コラボ配信をすることになったのだ。
余談だが、コラボを即了承したのは先輩からのお誘いというのも大きいが、以前アイリと昌が話していた下層以降が何やらきな臭いので単独ではなく臨時で誰かと一緒にいたほうがいいということがあったからだ。
トライアドちゃんねるであれば全員人格者だし、実力も全員が一等とレベルが高く、イノケンティウスに挑む前にダンジョンに潜って戦い終えて出てくるまでに中層深域までやってこれるだけの速度があるため、最も的確だと判断したからでもある。
『緊張なさっていますね』
「そ、そりゃ緊張するわよ」
『イノケンティウス討伐後に合流した時は、普通に話しておられましたが』
「あの時とは状況が違うじゃない。私はただモンスターを倒すだけの配信者で、向こうは解説とかで初心者にも分かりやすいダンジョン攻略をする配信者。私の視聴者達が私を受け入れてくれても、先輩達の視聴者が私を受け入れてくれるとは限らないじゃん」
『それは間違いなく杞憂だと思うのですが……こればかりは言っても仕方がないので、その時になってから身を以て杞憂だと実感しましょう』
あの三人が基本活動しているのは中層から下層中域あたりだ。
美琴も毎回最深域まで行っているわけでもないし、あの一戦以降はあんなのと戦いたくないので行っても深域にとどめている。
今回のコラボ配信の待ち合わせは下層の入り口があるボス部屋となっている。
場所はゴリアテが本来いる部屋だ。
そこは現在、大手探索者クランの一つであるホークアイがボスを三日前に倒したため、あと四日は出てこない。
そこに選んだ理由は、あの伝説を越して神話になった配信の時に立ち寄って場所だからだそうだ。
「あ、お待たせしました! 遅くなってすみません!」
雷薙をブレスレットの中にしまってから転送陣を踏んで部屋の中に入ると、少しだけ離れた場所で刀を持って形を行っている女性と、一人はストレッチ、もう一人は床に座ってスマホをいじっている男性二人がいた。
「気にしないでいいよ、美琴ちゃん。私達もついさっき来たばかりだから」
美琴より十センチほど背の低い、トライアドちゃんねるの実質リーダー的な茶髪の女性の氷城彩音が優しい笑顔を浮かべながら刀を納めて近寄ってくる。
「こうして会うのは三回目だね。立花慎司だ。今日はよろしく」
美琴と同じくらいの体の線は細いが袖から覗かせている腕についている筋肉から、ただ細いだけじゃないと知らしめている赤髪の男性、慎司もストレッチをやめて近寄る。
「今日はマジで、うちのリーダーのいきなりの誘いを承諾してくれてありがとな! おれは蒼峰和弘、よろしくな美琴ちゃん」
最後に、床に胡坐をかいて座っていた和弘が立ち上がって近寄り、握手をしようと右手を差し出してくる。
「はい、こちらこそお誘いいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いしますね、先輩」
きちんと挨拶をして折り目正しく腰を曲げて頭を下げて微笑みを浮かべると、彩音はほんのりと頬を赤くして、慎司と和弘は気まずそうに視線をさまよわせる。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、何でもないの。ただ、美琴ちゃんみたいな綺麗な女の子に先輩って言われるのが、こう、くすぐったいって言うか、ちょっと照れくさいって言うか。多分そこの二人はちょっと理由は違うかもだけど」
「随分と熱い風評被害をしてくれるね? 彩音が美琴ちゃんのチャンネルの大ファンになって、日々動画を観ていることを明かすよ?」
「もう言ってるじゃない!」
「そう言う慎司だってよく見てんじゃん。俺も人のこと言えないけどさ」
一連のやり取りを見て、この三人は仲がいいのだなとちょっぴり羨ましくなる。
ああやって楽しそうに話すことができる仲間がいるのはいいなと、ソロでやっていくと決めていても思ってしまう。
「……こほん。今回美琴ちゃんにコラボのお誘いをしたのには一つ、大きな理由があるの」
「理由、ですか?」
羨ましそうに三人のことを見ていると、彩音が小さく咳払いをして佇まいを改める。
「えぇ。あなたの配信のコメントとか、前に中層で合流した時にも少し言ったけど、こうして落ち着いた状況でちゃんと言えなかったから。あの時、私達のことを助けてくれてありがとう。本当に助かったわ」
三人を代表してか、彩音が頭を下げながらお礼を言ってくる。
「あ、あの、そこまでお気になさらず。前にも言いましたが、助ける意図はありましたがほとんどが八つ当たりのためみたいなものでしたから」
「例えおれ達を助けてくれた理由が八つ当たりだとしても、助けられたことに変わりはないぜ。だから素直に礼を受け取ってほしい」
「マジで助かった。ずっとこれだけは、ちゃんとした場で言いたかった」
続けて和弘と慎司も頭を下げながらお礼を言う。
先輩三人から頭を下げられながらお礼を言われるとは思ってもいなかったので、どうしようと少し狼狽える。
『お三方の仰る通り、ここは素直に受け取りましょうお嬢様。助けたことは変わらぬ事実。お嬢様がどう思っていようと、受け取り方は相手側にあります』
「……わ、分かりました。その、こういう時は何を言えばいいか分からないですけど、どういたしまして?」
人助けをすることも、助けた人からここまで改まった態度で真っ向からお礼を言われることもなかったので、何を言えばいいか分からず疑問形になりながらもどういたしましてと言う。
それを聞いた三人は一瞬きょとんとした顔になり、すぐに小さく笑みを浮かべる。
「ふふっ。受け取ってくれてありがとう。それじゃあ早速、配信始めましょう!」
「は、はい! 不慣れな点が多くあると思いますが、よろしくお願いします!」
四人で一緒に配信の準備をして、時間になったので開始する。
今回は美琴がコラボのお誘いを受けた側なので、美琴も配信はするが自分メインではなくトライアドちゃんねる側に加わるような形だ。
「ドキドキワクワクを皆様にお届け! どうも、トライアドちゃんねるの彩音です! 本日は特別なゲストをお呼びしています!」
「け、眷属の皆さん、こんにちわ! 琴峰美琴のダンジョン攻略配信の時間だよ!」
”おおおおおおおおおおおお!!”
”待ってたあああああああああああ!!”
”美人と美少女の並びがもう絵になって最高です”
”ずっっっと楽しみにしてた!!”
”どっちも可愛いなあ”
配信が開始されると、両方の配信画面のコメント欄が爆発したようにすさまじい速度で流れていく。
「今日は美琴ちゃんと一緒に中層から下層中域にかけて探索する予定だよ。本当はン美琴ちゃんに合わせたいんだけど、最深域とか流石にちょっときついからね」
「普通あんな下層の中でもトップクラスの怪物地獄にソロで潜らないんだけどな。純粋にすげーって思う」
「おれだったら多分十分で引き返すかもなー。今度、美琴ちゃんに最深域でも余裕で戦えるコツとか聞いてみようか」
「こ、コツですか? 私は基本を守っているだけのつもりなんですけど」
「あれで基礎を守っているはちょっと無理があると思うよー?」
”あんなのが基礎であってたまるかwww”
”いや、美琴ちゃんにとってはあれが基礎なんだろう”
”レベルがくそ高えwww”
『ここではお嬢様の常識は通用しないでしょうから、下手な発言は控えたほうがいいかと』
「私が非常識みたいな言い方やめてくれない?」
アイリの毒にじとーっと睨み付ける。
「あははっ。美琴ちゃんとアイリちゃんは仲が本当にいいよね」
「結構騙されたり裏切られたりしますけどね……」
「ダンジョン配信の時に十分遅刻したのもアイリちゃんのせいだったものね」
『気付かないお嬢様が鼻歌交じりでダンジョンに潜っているのが中々に面白かったです』
「本当にいつか仕返ししてやるんだから……!」
今でも忘れない、バズった後のダンジョン配信。
いつか必ず何かしらのお仕置きをしてやるんだと、密かに意気込む。
「今日はいつも通り私達の戦いに解説を入れていくよ。メインは、最近話題沸騰中の美琴ちゃんの解説になるけど」
「よ、よろしくお願いします」
”あやちゃん前にしてちょっと緊張しているの可愛い”
”活動者としても探索者としても年齢的にも全部先輩だもんね、あやちゃん達”
”こんな可愛い女の子に先輩って呼ばれるのちょっとうらやましい”
”どこにでもなんにでもうらやましいって言う奴いるよなwww”
”でも実際ウラヤマシイ。俺も美琴ちゃんに先輩って呼ばれたい”
”ファンネーム眷属じゃなくて先輩にしてもよかったかも”
若干緊張しいな美琴に対して可愛いというコメントがたくさん送られてくる。
もう言われ慣れたつもりだが、やっぱりコメントとして何千件も一気に送られてくると恥ずかしいという気持ちがわいてくる。
「それじゃあ早速、このまま中層の方に潜っていくよ。美琴ちゃん、準備はいい?」
「はい、ばっちりです!」
「今どこから薙刀出てきたの!?」
ブレスレットのことは未だに明かしていないので、視聴者やトライアドちゃんねるの三人はいつの間に雷薙を持っていることに驚いた反応を見せる。
いい加減このブレスレットのことを言ったほうがいいんじゃないかと思うが、アイリが口酸っぱく耳にタコができるくらい言わないほうがいいと言ってくるので、明かさずにいる。
どこから出てきたのだろうと興味深そうに雷薙を眺める彩音に小さく微笑みを浮かべてから、人生初の有名配信者とのコラボで浮足立って軽い足取りで下層へと続く道を歩く。
今なおチャンネル登録者数は伸び続けており、眠っている間に二百万人を軽く突破していた。
「健康優良児の美琴らしいというか、なんというか。チャンネルの伸び方と美琴の生活習慣じゃ、突破の瞬間を視聴者と一緒に、なんてことは今後余程運がないとできないね」
朝起きてパニックになった美琴は登校後即昌に泣きついたが、呆れたように笑われておしまいだった。
ちなみに収益化の件だが、成長速度があまりにも早いからか審査に時間がかかっているようだ。それにしてもかかりすぎな気はしなくもないが、そこは気にしないでおく。
そんなことよりも美琴の脳を一番バグらせたのは、美琴の先輩探索者と配信者に当たる、トライアドちゃんねるの方から直接コラボ配信のお誘いがあったことだ。
登録者の数だけで言えば美琴のほうが上になってしまったが、最初にとてつもない起爆剤が放り込まれた後に配信の中でとんでもないことを連続して行って、それが拡散されて行ったからで、美琴が評価されているのもあるが純度百パーセントの努力の結果とも少し言い難いかもしれない。
一方でトライアドちゃんねるは、ダンジョン攻略系配信者の黎明期から活動を始め、地道な努力と活動実績で七十万人という数字まで伸ばした実力者だ。
ただモンスターを薙刀で倒していくだけの配信の美琴とは違って、しっかりとお手本のような丁寧な連携でモンスターを倒し、その後に解説を付けるため根強いファンがとても多い。
美琴もあの一件以降トライアドちゃんねるの配信や切り抜き動画を観るようになり、初心者にも非常に分かりやすい解説をすることに感銘を受けていた。
そんなところに当の本人から直接お誘いが来たため、危うく座っている椅子ごと後ろに転げ落ちるところだった。
もちろんコラボ配信は了承して、お互いのスケジュールなどを話し合ってついに今日、コラボ配信をすることになったのだ。
余談だが、コラボを即了承したのは先輩からのお誘いというのも大きいが、以前アイリと昌が話していた下層以降が何やらきな臭いので単独ではなく臨時で誰かと一緒にいたほうがいいということがあったからだ。
トライアドちゃんねるであれば全員人格者だし、実力も全員が一等とレベルが高く、イノケンティウスに挑む前にダンジョンに潜って戦い終えて出てくるまでに中層深域までやってこれるだけの速度があるため、最も的確だと判断したからでもある。
『緊張なさっていますね』
「そ、そりゃ緊張するわよ」
『イノケンティウス討伐後に合流した時は、普通に話しておられましたが』
「あの時とは状況が違うじゃない。私はただモンスターを倒すだけの配信者で、向こうは解説とかで初心者にも分かりやすいダンジョン攻略をする配信者。私の視聴者達が私を受け入れてくれても、先輩達の視聴者が私を受け入れてくれるとは限らないじゃん」
『それは間違いなく杞憂だと思うのですが……こればかりは言っても仕方がないので、その時になってから身を以て杞憂だと実感しましょう』
あの三人が基本活動しているのは中層から下層中域あたりだ。
美琴も毎回最深域まで行っているわけでもないし、あの一戦以降はあんなのと戦いたくないので行っても深域にとどめている。
今回のコラボ配信の待ち合わせは下層の入り口があるボス部屋となっている。
場所はゴリアテが本来いる部屋だ。
そこは現在、大手探索者クランの一つであるホークアイがボスを三日前に倒したため、あと四日は出てこない。
そこに選んだ理由は、あの伝説を越して神話になった配信の時に立ち寄って場所だからだそうだ。
「あ、お待たせしました! 遅くなってすみません!」
雷薙をブレスレットの中にしまってから転送陣を踏んで部屋の中に入ると、少しだけ離れた場所で刀を持って形を行っている女性と、一人はストレッチ、もう一人は床に座ってスマホをいじっている男性二人がいた。
「気にしないでいいよ、美琴ちゃん。私達もついさっき来たばかりだから」
美琴より十センチほど背の低い、トライアドちゃんねるの実質リーダー的な茶髪の女性の氷城彩音が優しい笑顔を浮かべながら刀を納めて近寄ってくる。
「こうして会うのは三回目だね。立花慎司だ。今日はよろしく」
美琴と同じくらいの体の線は細いが袖から覗かせている腕についている筋肉から、ただ細いだけじゃないと知らしめている赤髪の男性、慎司もストレッチをやめて近寄る。
「今日はマジで、うちのリーダーのいきなりの誘いを承諾してくれてありがとな! おれは蒼峰和弘、よろしくな美琴ちゃん」
最後に、床に胡坐をかいて座っていた和弘が立ち上がって近寄り、握手をしようと右手を差し出してくる。
「はい、こちらこそお誘いいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いしますね、先輩」
きちんと挨拶をして折り目正しく腰を曲げて頭を下げて微笑みを浮かべると、彩音はほんのりと頬を赤くして、慎司と和弘は気まずそうに視線をさまよわせる。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、何でもないの。ただ、美琴ちゃんみたいな綺麗な女の子に先輩って言われるのが、こう、くすぐったいって言うか、ちょっと照れくさいって言うか。多分そこの二人はちょっと理由は違うかもだけど」
「随分と熱い風評被害をしてくれるね? 彩音が美琴ちゃんのチャンネルの大ファンになって、日々動画を観ていることを明かすよ?」
「もう言ってるじゃない!」
「そう言う慎司だってよく見てんじゃん。俺も人のこと言えないけどさ」
一連のやり取りを見て、この三人は仲がいいのだなとちょっぴり羨ましくなる。
ああやって楽しそうに話すことができる仲間がいるのはいいなと、ソロでやっていくと決めていても思ってしまう。
「……こほん。今回美琴ちゃんにコラボのお誘いをしたのには一つ、大きな理由があるの」
「理由、ですか?」
羨ましそうに三人のことを見ていると、彩音が小さく咳払いをして佇まいを改める。
「えぇ。あなたの配信のコメントとか、前に中層で合流した時にも少し言ったけど、こうして落ち着いた状況でちゃんと言えなかったから。あの時、私達のことを助けてくれてありがとう。本当に助かったわ」
三人を代表してか、彩音が頭を下げながらお礼を言ってくる。
「あ、あの、そこまでお気になさらず。前にも言いましたが、助ける意図はありましたがほとんどが八つ当たりのためみたいなものでしたから」
「例えおれ達を助けてくれた理由が八つ当たりだとしても、助けられたことに変わりはないぜ。だから素直に礼を受け取ってほしい」
「マジで助かった。ずっとこれだけは、ちゃんとした場で言いたかった」
続けて和弘と慎司も頭を下げながらお礼を言う。
先輩三人から頭を下げられながらお礼を言われるとは思ってもいなかったので、どうしようと少し狼狽える。
『お三方の仰る通り、ここは素直に受け取りましょうお嬢様。助けたことは変わらぬ事実。お嬢様がどう思っていようと、受け取り方は相手側にあります』
「……わ、分かりました。その、こういう時は何を言えばいいか分からないですけど、どういたしまして?」
人助けをすることも、助けた人からここまで改まった態度で真っ向からお礼を言われることもなかったので、何を言えばいいか分からず疑問形になりながらもどういたしましてと言う。
それを聞いた三人は一瞬きょとんとした顔になり、すぐに小さく笑みを浮かべる。
「ふふっ。受け取ってくれてありがとう。それじゃあ早速、配信始めましょう!」
「は、はい! 不慣れな点が多くあると思いますが、よろしくお願いします!」
四人で一緒に配信の準備をして、時間になったので開始する。
今回は美琴がコラボのお誘いを受けた側なので、美琴も配信はするが自分メインではなくトライアドちゃんねる側に加わるような形だ。
「ドキドキワクワクを皆様にお届け! どうも、トライアドちゃんねるの彩音です! 本日は特別なゲストをお呼びしています!」
「け、眷属の皆さん、こんにちわ! 琴峰美琴のダンジョン攻略配信の時間だよ!」
”おおおおおおおおおおおお!!”
”待ってたあああああああああああ!!”
”美人と美少女の並びがもう絵になって最高です”
”ずっっっと楽しみにしてた!!”
”どっちも可愛いなあ”
配信が開始されると、両方の配信画面のコメント欄が爆発したようにすさまじい速度で流れていく。
「今日は美琴ちゃんと一緒に中層から下層中域にかけて探索する予定だよ。本当はン美琴ちゃんに合わせたいんだけど、最深域とか流石にちょっときついからね」
「普通あんな下層の中でもトップクラスの怪物地獄にソロで潜らないんだけどな。純粋にすげーって思う」
「おれだったら多分十分で引き返すかもなー。今度、美琴ちゃんに最深域でも余裕で戦えるコツとか聞いてみようか」
「こ、コツですか? 私は基本を守っているだけのつもりなんですけど」
「あれで基礎を守っているはちょっと無理があると思うよー?」
”あんなのが基礎であってたまるかwww”
”いや、美琴ちゃんにとってはあれが基礎なんだろう”
”レベルがくそ高えwww”
『ここではお嬢様の常識は通用しないでしょうから、下手な発言は控えたほうがいいかと』
「私が非常識みたいな言い方やめてくれない?」
アイリの毒にじとーっと睨み付ける。
「あははっ。美琴ちゃんとアイリちゃんは仲が本当にいいよね」
「結構騙されたり裏切られたりしますけどね……」
「ダンジョン配信の時に十分遅刻したのもアイリちゃんのせいだったものね」
『気付かないお嬢様が鼻歌交じりでダンジョンに潜っているのが中々に面白かったです』
「本当にいつか仕返ししてやるんだから……!」
今でも忘れない、バズった後のダンジョン配信。
いつか必ず何かしらのお仕置きをしてやるんだと、密かに意気込む。
「今日はいつも通り私達の戦いに解説を入れていくよ。メインは、最近話題沸騰中の美琴ちゃんの解説になるけど」
「よ、よろしくお願いします」
”あやちゃん前にしてちょっと緊張しているの可愛い”
”活動者としても探索者としても年齢的にも全部先輩だもんね、あやちゃん達”
”こんな可愛い女の子に先輩って呼ばれるのちょっとうらやましい”
”どこにでもなんにでもうらやましいって言う奴いるよなwww”
”でも実際ウラヤマシイ。俺も美琴ちゃんに先輩って呼ばれたい”
”ファンネーム眷属じゃなくて先輩にしてもよかったかも”
若干緊張しいな美琴に対して可愛いというコメントがたくさん送られてくる。
もう言われ慣れたつもりだが、やっぱりコメントとして何千件も一気に送られてくると恥ずかしいという気持ちがわいてくる。
「それじゃあ早速、このまま中層の方に潜っていくよ。美琴ちゃん、準備はいい?」
「はい、ばっちりです!」
「今どこから薙刀出てきたの!?」
ブレスレットのことは未だに明かしていないので、視聴者やトライアドちゃんねるの三人はいつの間に雷薙を持っていることに驚いた反応を見せる。
いい加減このブレスレットのことを言ったほうがいいんじゃないかと思うが、アイリが口酸っぱく耳にタコができるくらい言わないほうがいいと言ってくるので、明かさずにいる。
どこから出てきたのだろうと興味深そうに雷薙を眺める彩音に小さく微笑みを浮かべてから、人生初の有名配信者とのコラボで浮足立って軽い足取りで下層へと続く道を歩く。
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