【悲報】ダンジョン攻略JK配信者、配信を切り忘れて無双しすぎてしまいアホほどバズって伝説になる

夜桜カスミ

文字の大きさ
上 下
14 / 96
第一部 第一章 異変

第14話 中層の更にその先の下層へ

しおりを挟む
「よし、討伐完了! そして中層踏破!」

 下層へ行くものを阻む最大の難所ともいえるボスを単独撃破した美琴は、やり切ったような清々しい笑顔を浮かべる。
 これでなんの心置きなくその先の下層へ通じる道を進むことができる。

”マジいいいいいいいいいいいい!?”
”中層で最も強いボスのゴリアテがこうもあっさりと……”
”あいつ確か下層上位のモンスターと変わらんくらい強かったよな!?”
”最後の攻撃やばすぎるwww もう笑うしかねえwww”
”離れていたとはいえどうしてカメラが壊れていないんだよwww”
”これ間違いなくゴリアテ討伐最速記録だろ”
”美琴ちゃんにしかできない攻略法だから絶対に真似できないね!”
”一応呪術にも九天応元雷声普化天尊きゅうてんおうげんらいせいふかてんそんって言うマジもんの雷を落とす術があるけど、比べ物にならねえ威力してた”
”むしろそれじゃないと倒しきれないゴリアテがすごいって褒めるべきなのか?”

 中層最強格ボスゴリアテのソロ討伐に沸き立つコメント欄。
 爆速でコメントが一斉に流れていき、全てを追いきれない。

 中々にいいタイムで倒せたのではないだろうかと思い、ふと同接数を見てみるとそこには十八万という数字が表示されており、思わず悲鳴を上げそうになる。

『お疲れ様ですお嬢様。相変わらずとんでも威力ですね。これでまだ三鳴というのですから、七鳴神はどんな威力になることやら』
「じ、実は私も四鳴以上は使ったことないから分からない。それよりも、同接が今までにないくらいあるんだけど、ど、どうしたらいい!?」

 もうじき二十万を迎えるその数字を見て少しテンパってしまった美琴は、十八万人突破とボス討伐記念に少しセクシーなポーズでもしたほうがいいのではないかと、変なことを考えて勝手に自滅しかける。

『落ち着いてくださいませ。戦いの後でハイになっているのは分かりますが、慌てて変なことをしないように。同接が増えたところで、何か特別なことをしなければいけないなんてことはありませんよ』
「……ほんとに?」
『配信開始時にからかいすぎた弊害ですね。そのことについては謝罪しますので、今の言葉は信じてください。下手にファンサービスをすれば、後々痛い目を見るのはお嬢様ですよ』

 確かに下手なファンサービスは視聴者が離れてしまう原因になりかねないので、冷静になるべく深呼吸をして落ち着かせる。

「少し取り乱してごめんなさい。もう大丈夫だよ」

”全然いいよー”
”そりゃいきなりこんな数字見たら取り乱すよね”
”序盤の出来事のせいでアイリちゃんのこと信用しきれてないの笑えるwww”
”もう十八万か。この配信内容からじゃ、まだ少ないとすら感じるな”
”二十万、なんだったら三十万行ってもいいくらい”
”《トライアドちゃんねる》ゴリアテソロ討伐で最速記録叩き出してるよこの女子高生……”
”トライアドちゃんねるが困惑しとるwww こんなん困惑しないわけないからわかるわwww”
”ゴリアテの落とす核石でっけえなあオイ!?”

 ボス級のモンスターは基本体が大きく、その分核石も落とす素材も大きい。
 ゴリアテが落としたのは十七メートルもある巌の大剣と、美琴の顔ほどの大きさはある核石だ。
 大剣は大きすぎて持ち運びが不可能なのでここに放置するのは決定として、問題はこの核石だ。

 これだけ大きければ恩返し資金の大きな足しになるのだが、大きすぎてしまうことができない。
 もしソロではなくもう一人いれば、その人に持たせることもできたかもしれないが、そこはないものねだりしても仕方がない。

『ボスを倒したのでこの部屋から来た道を引き返すこともできますが、それだと時間を大きくロスしてしまいますね。こういう時、ソロは辛いですね』
「……仕方ない。ここのどこかに隠しておきましょう。アイリ、カメラだけ切って」

 カメラを切るように指示を出して、配信画面が真っ黒になったのを確認してから中層へ戻る転送陣の近くの瓦礫の下に隠す。
 こうしたお金になるものへの嗅覚が異常に鋭い探索者から隠せるとは思えないが、何もしないよりはましだろう。

”美琴ちゃん美琴ちゃん、最後のやう゛ぁい雷は何?”
”見た感じスタンピード蹂躙のに似てる気がするけど”

 隠し終えて浮遊カメラが浮いている場所に戻ってカメラを再起動させて映っているのを確認していると、コメント欄に質問がいくつも書き込まれていた。

「白雷のこと? んー、ざっくりとだけ話すと、私の後ろに出ていた巴紋に雷エネルギーを一定以上蓄積させていって、限界まで溜まったらそこに溜まった分のエネルギーをまるっと雷に変換して打ち出す私の必殺技みたいなもの、かな」

 これはあくまで美琴が自力で編み出したオリジナルの技術であるので話してもいいと判断して、ざくっと説明する。

『付け加えますと、四鳴、五鳴、六鳴、七鳴神と蓄積できるエネルギーの限界値は加算ではなく乗算で増えていきますので、下手に乱発もできない代物ですね』
「ダンジョン内ではせいぜい四鳴が限界だからねー」

 これ以上行くと自分の攻撃でダンジョンが崩落しかねないという言葉は、口から出る直前で飲み込んだ。
 このことまで話してしまえば、それこそ女子高生の配信者ではなく、女子高生の皮を被ったとんでも威力の技を持つ化け物配信者というイメージが定着しかねない。
 たとえ、割と手遅れになっていそうだとしても。

「さってと、いつまでもここに留まっているわけにはいかないし、現役女子高生の貴重な時間を無駄にしないためにささっと下層に行きましょう」

”話し方のテンションが散歩に行くそれで草”
”下層って紛いなりにもベテランですら油断できないってきっぱりと言う地獄なんですが”
”https://mikoto_kotomine○○○○←アイリちゃんが切り抜いて投稿したこの動画を観ても同じことが言えるかな?”
”さっきからアイリちゃん仕事が爆速すぎて笑える”
”切り抜き班や職人涙目だろこんなん”
”あんなの見せられた後だから不安はないけど心配にはなりそうだなあ”

 これから下層だというのにまるで散歩や遠足にでも行くかのようなテンションで、地獄との評される領域へ通じる道へと進む美琴。

「それじゃあ、今日の本題の下層の攻略開始!」

 どこかぬるりとした空気を感じる下層へ通じる道へためらわずに踏み出し、視聴者達は緊張を隠せない様子でコメントを残していった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら
ファンタジー
 主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。  勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。  しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。  更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。  自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。 これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【掲示板形式】気付いたら貞操逆転世界にいたんだがどうすればいい

やまいし
ファンタジー
掲示板にハマった…… 掲示板形式+αです。※掲示板は元の世界(現代日本)と繋がっています。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

嫌われ魔眼保持者の学園生活 ~掲示板で実況スネーク活動してるんだけど、リアルで身バレしそうwww~

一樹
ファンタジー
嫌われ者が趣味で楽しくおもしろく過ごす話です。

処理中です...