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可愛いお客様

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パチン。
まきが爆ぜる音におばあさんの手が止まります。

「雪が全ての音を飲み込んでいるみたい……」

静まり返った部屋の中で、おばあさんの耳に届くのは、コチコチと時を刻む鳩時計の音と時折爆ぜる薪の音だけでした。

「きっと外は凍えるような寒さでしょうね」

でも……とおばあさんが暖炉の火に目を遣ります。

「ここは春のように暖かいわ」

おばあさんが座るロッキングチェアは、暖炉の前にありました。
部屋には明かりが灯っていません。雪明かりとオレンジ色の温かな火の光だけです。

「――あら?」

手を動かそうとして、また止まります。
薪の爆ぜる音に加えて微かに鳴き声が聞こえたような気がしたからです。

顔を上げるとおばあさんは鼻の頭に乗った丸い眼鏡をクイッと上げ、耳を澄ましました。

「みゃー、みゃー」

幻聴ではないようです。か細い声が聞こえます。

「赤ちゃん? 子猫?」

そんな鳴き声です。
さらに耳を澄ますと……声はどうやら玄関の方から聞こえてくるようでした。

おばあさんは急いで椅子から立ち上がると、大慌てで飛んで行きました。そして、玄関のドアを開けた途端――。

「みゃー」

ハッキリと可愛い声が聞こえました。

「あらまぁ!」

おばあさんの目がまん丸になります。
小さな白猫が行儀良くお座りをして、おばあさんを見上げ「みゃー」と鳴いたからです。

まるで、『ごきげんよう』と挨拶をするかのように。
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