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エピローグ

06

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目の前の二人のように、マミさんたちのように、そして、西園寺オーナーのように、家族以外の人に愛情や愛を感じたこともなければ与えられたこともない。

――食に対する愛はいっぱいあるんだけどなぁ。

そういえば母が言っていた。

『昔から男性を落とすには胃袋を掴めって言われていてね。ママもパパに初めてお料理を作った時、愛をいっぱい詰め込んだの。結果、このとおりラブラブよ』

料理人が食べ物に愛を込めて調理するのは当然だ。美味しいと思える料理には必ず愛を感じたもの。

しかし、その時母が言った『愛』は、私の思っていた愛と違っていたんだと今気付いた。ただ一人、その人だけに込める究極の愛。それなのだと……。

そう思ったら、むくむくと探究心が湧き出てきた。
その究極の『愛』が籠められた料理を食べてみたい!

「樫野チーフ、私にも白戸さんの胃袋を掴んだ究極の愛入り料理を食べさせて下さい!」

「はい?」とハテナ顔になる樫野チーフに、少し説明すると彼は笑いを堪えながら言った。

「それは自分で作らないと分からないと思うよ。あっ、そうだ、いい考えがある」

樫野チーフが思惑げにニッと笑い、「綾時を人体実験に使ったらいいのよ」と提案した。

「寧々ちゃんの作る料理に綾時が堕ちたら、それが貴女の欲している究極の愛入り料理ってこと」

「西園寺オーナーに? どうして彼を?」対象者にするのだろう?

「だって、婚約者でしょう? 人体実験の治験者としては申し分ないじゃない?」

そうなのか? 何となくこじ付けのようにも思えたが、究極の愛が籠もった料理を食べてみたい、という欲求には逆らえなかった。

後で思い返すとまんまとしてやられたのだが……私はその日から、おむすび定食に愛を込めた小鉢を一品追加した。



――結果は……まだ出ていない。
でも、秘密裏に任務を遂行するスパイみたいで毎日ワクワクしている。
彼が甘い罠にかかるのはいつか? その日が待ち遠しく……とても楽しみだ。

〈聖天、聖天寧々!〉

だから、理不尽な彼の呼び出しにも我慢……我慢んんんって、やっぱりできない!
早く堕ちて教えてよ! 究極の愛入り料理ってものを!



(2019.01.20 完結)
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