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第6章 再就職
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西園寺オーナーをそんな状態にする何かって? むくむく好奇心が湧いてくる。
「確かめたい!」
そう思うが西園寺オーナーには会いたくない。でも、知りたい!
「うわぁぁぁ、イライラする」
髪をかきむしりイーッと叫びジレンマを発散させるが……この思い、ちょっとやそっとでは収まらない。
「――ダメだ、何か食べよう!」
気持ちを落ち着かすには無心になるのが一番だ。
こういう時は料理をするに限る。
「やっぱり、シチューよりピリリと辛いカレーかな?」
迷った末に当初予定していた夕飯を変更する。
我が家のカレーは母直伝で水を一切使わない。通常の二倍以上使う野菜から出た水分とトマトジュースだけだ。ルーも市販の固形ルーで、いつも三種類ほど使う。
だから各種スパイスやハーブを用意しなくても、一晩寝かせなくても、深みのある濃い味に仕上がった。
『家庭料理は手間暇かけずに、安価で美味しく作らなきゃね』
これが母のモットーだ。
そんな母だからメーカーにも拘りがなく、お買い得品を特価のたびに買っていた。
そんなわけで、家には常時数種類のルーがあった。それを母は自らブレンドして――といっても、一片ずつ適当に使っていただけだったが。
だから、美味しかったが食べるたびに味が違っていた。でも、それが何となく家庭的で、私は母の作るカレーが大好きだった。だから研究熱心な私も、自宅で作るカレーだけはかなり適当だった。
そんなことを思い返しているうちに、ぐちゃぐちゃだった思考は次第に整理され、同時に鍋の中から良い匂いが漂ってきた。
急いでグリーンサラダを作り、グラスにミネラルウォーターを注ぎ、カウンターテーブルにそれらを置いていった。
「確かめたい!」
そう思うが西園寺オーナーには会いたくない。でも、知りたい!
「うわぁぁぁ、イライラする」
髪をかきむしりイーッと叫びジレンマを発散させるが……この思い、ちょっとやそっとでは収まらない。
「――ダメだ、何か食べよう!」
気持ちを落ち着かすには無心になるのが一番だ。
こういう時は料理をするに限る。
「やっぱり、シチューよりピリリと辛いカレーかな?」
迷った末に当初予定していた夕飯を変更する。
我が家のカレーは母直伝で水を一切使わない。通常の二倍以上使う野菜から出た水分とトマトジュースだけだ。ルーも市販の固形ルーで、いつも三種類ほど使う。
だから各種スパイスやハーブを用意しなくても、一晩寝かせなくても、深みのある濃い味に仕上がった。
『家庭料理は手間暇かけずに、安価で美味しく作らなきゃね』
これが母のモットーだ。
そんな母だからメーカーにも拘りがなく、お買い得品を特価のたびに買っていた。
そんなわけで、家には常時数種類のルーがあった。それを母は自らブレンドして――といっても、一片ずつ適当に使っていただけだったが。
だから、美味しかったが食べるたびに味が違っていた。でも、それが何となく家庭的で、私は母の作るカレーが大好きだった。だから研究熱心な私も、自宅で作るカレーだけはかなり適当だった。
そんなことを思い返しているうちに、ぐちゃぐちゃだった思考は次第に整理され、同時に鍋の中から良い匂いが漂ってきた。
急いでグリーンサラダを作り、グラスにミネラルウォーターを注ぎ、カウンターテーブルにそれらを置いていった。
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