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第6章 再就職
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「何って、貴女に会いに来たんじゃない」
だが、私の思いに反して樫野チーフはそう答えた。
「でも……住所なんて、誰にも言ってないし……」
「履歴書」
間髪入れず白戸さんが口を挟んだ――珍しい。
普段無口な白戸さんの言葉に一瞬、虚を衝かれる。
「立ち話も何だから……寧々ちゃんはどこに行こうとしていたの?」
「――買い出しに」
だから素直に答えてしまった。
「だったら、我々がお供するわ」
私を挟んで樫野チーフと白戸さんが両脇に立ち歩き出す。
いやいや、お供が必要なほど豪勢な買い物はしない。
「食料品を買いに行くだけなので……」
「あらっ、だったらなおのことだわ、ねぇ、純也」
熱の籠もった樫野チーフの瞳が白戸さんを見つめる。
よく見れば二人ともお洒落な格好をしていた。
「――私に会いに来たって、嘘ですね?」
どう見てもデートだ。
「あら、バレちゃった?」
ペロリと舌を出し、樫野チーフがお茶目にウインクする。
崩落するのが早い。
「実は私たちも買い出しに来たの」
聞けば初詣の帰りらしい。そう言えばもう一駅向こうに有名な神社があった。
「近くで開いているスーパーがそこしかなかったの」
年末ギリギリまで仕事だったので、買い出しができていなかったようだ。
なるほどそういうことか。
「そしたら、見覚えのある後ろ姿があるじゃない。よく見たら行方不明の寧々ちゃんだったって訳」
行方不明って……。
「私、お店を辞めたんですけど……」
西園寺オーナーは皆に伝えていないのか?
だが、私の思いに反して樫野チーフはそう答えた。
「でも……住所なんて、誰にも言ってないし……」
「履歴書」
間髪入れず白戸さんが口を挟んだ――珍しい。
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「立ち話も何だから……寧々ちゃんはどこに行こうとしていたの?」
「――買い出しに」
だから素直に答えてしまった。
「だったら、我々がお供するわ」
私を挟んで樫野チーフと白戸さんが両脇に立ち歩き出す。
いやいや、お供が必要なほど豪勢な買い物はしない。
「食料品を買いに行くだけなので……」
「あらっ、だったらなおのことだわ、ねぇ、純也」
熱の籠もった樫野チーフの瞳が白戸さんを見つめる。
よく見れば二人ともお洒落な格好をしていた。
「――私に会いに来たって、嘘ですね?」
どう見てもデートだ。
「あら、バレちゃった?」
ペロリと舌を出し、樫野チーフがお茶目にウインクする。
崩落するのが早い。
「実は私たちも買い出しに来たの」
聞けば初詣の帰りらしい。そう言えばもう一駅向こうに有名な神社があった。
「近くで開いているスーパーがそこしかなかったの」
年末ギリギリまで仕事だったので、買い出しができていなかったようだ。
なるほどそういうことか。
「そしたら、見覚えのある後ろ姿があるじゃない。よく見たら行方不明の寧々ちゃんだったって訳」
行方不明って……。
「私、お店を辞めたんですけど……」
西園寺オーナーは皆に伝えていないのか?
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