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第5章 解雇
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「でも、その幸せは長く続かなかった。富美乃様が恋をしたから、それも十も上の大人の男性に」
「――めろ……止めろ!」
絞り出すような西園寺オーナーの声が私を制する。
「いえ、止めません。いくら義理でも富美乃様はお姉さん。それもすでに人のものとなっている人。それなのにいつまでも思っているなんて……すっごく気持ち悪いです!」
最後の言葉を強調するように言葉を吐き出した。
「貴方は変態です! 悲劇のヒーロー? そんな風に自分を憐れみ、そんな自分に酔いしれている……ナルキッソスのようなナルシシストです。胸糞悪いです」
興奮して、自分が発した言葉の意味が自分で理解できなかった……自分でもメチャクチャ言っているなと思った。
――なのに、西園寺オーナーには私の言いたいことが分かったようだ。だが、それは彼の核心を突いてしまったようだ。烈火の如く怒りだした。
「お前の方が不気味だ! 何が吹き出しだ。それこそ胸糞が悪い!」
確かに彼の言うとおりだ。胸の奥深くにひっそりと仕舞ってある秘密を、他人の口から突然暴露されたら気味悪く感じるのも当然だ。でも、ここでそれを肯定して彼に勝ちを譲るわけにはいかなかった。
「西園寺オーナーがムキになるということは、私の言葉が真実だ、と言っているのも同じですね?」
これには彼もグッと喉を詰まらせた。
「――めろ……止めろ!」
絞り出すような西園寺オーナーの声が私を制する。
「いえ、止めません。いくら義理でも富美乃様はお姉さん。それもすでに人のものとなっている人。それなのにいつまでも思っているなんて……すっごく気持ち悪いです!」
最後の言葉を強調するように言葉を吐き出した。
「貴方は変態です! 悲劇のヒーロー? そんな風に自分を憐れみ、そんな自分に酔いしれている……ナルキッソスのようなナルシシストです。胸糞悪いです」
興奮して、自分が発した言葉の意味が自分で理解できなかった……自分でもメチャクチャ言っているなと思った。
――なのに、西園寺オーナーには私の言いたいことが分かったようだ。だが、それは彼の核心を突いてしまったようだ。烈火の如く怒りだした。
「お前の方が不気味だ! 何が吹き出しだ。それこそ胸糞が悪い!」
確かに彼の言うとおりだ。胸の奥深くにひっそりと仕舞ってある秘密を、他人の口から突然暴露されたら気味悪く感じるのも当然だ。でも、ここでそれを肯定して彼に勝ちを譲るわけにはいかなかった。
「西園寺オーナーがムキになるということは、私の言葉が真実だ、と言っているのも同じですね?」
これには彼もグッと喉を詰まらせた。
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