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第5章 解雇
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ローテーブルに半月盆を置き布巾を取ると、意外だったのか西園寺オーナーが目を見張った。
「ふーん、クーラウにしては実にシンプルな賄いだな」
ラップ越しにおむすびをまじまじと見つめ、そのラップを剥がそうとおもむろに手を伸ばすが、タイミング悪く半月盆の横に置かれたスマートフォンがブルブル震え出した。
「誰だ?」
苛立たしげに言うと、彼の手は方向を変えスマートフォンを取る。
しかし、相手が誰か分かった瞬間、頬が緩んだ。
その表情に気を回して、「席を外しましょうか?」と小声で訊ねたが、西園寺オーナーは『そのままそこで待て』と言うように向かいのソファーを指した。どうやら『そこに座っていろ』と言っているらしい。
反論するのもやぶさかではない気がして、「失礼します」と呟くように言い、素直に腰を下ろした。
「富美乃さん、何かご用ですか?」
その名前で、さっき浮かべた笑みの意味を知る。
『綾時さん……』
スピーカー対応にしてあるらしい。富美乃様の声がスマートフォンの向こうから聞こえた。
『今、お父様から聞いたわ。西園寺を継ぐつもりはないとハッキリ断ったそうね』
えっ! 盗み聞きをしたから少しは事情を知っているが、そんな家庭の事情めいた話を私が聞いてしまってもいいのだろうか?
「側にいたんですね?」
西園寺オーナーがチラリと私を見る。その眼が『盗み聞きしていたんだろ?』と言っているように見え、ドキリとする。
『ええ、いたわ。お父様がガックリと項垂れた瞬間も見たわ』
「なら、答えずともご存知でしょう? 後継者にはなりません」
ハッキリ答える声に富美乃様の溜息が被る。
『私が実子だから? 遠慮しているの?』
「まさか」
戯けたように西園寺オーナーが言う。
「ふーん、クーラウにしては実にシンプルな賄いだな」
ラップ越しにおむすびをまじまじと見つめ、そのラップを剥がそうとおもむろに手を伸ばすが、タイミング悪く半月盆の横に置かれたスマートフォンがブルブル震え出した。
「誰だ?」
苛立たしげに言うと、彼の手は方向を変えスマートフォンを取る。
しかし、相手が誰か分かった瞬間、頬が緩んだ。
その表情に気を回して、「席を外しましょうか?」と小声で訊ねたが、西園寺オーナーは『そのままそこで待て』と言うように向かいのソファーを指した。どうやら『そこに座っていろ』と言っているらしい。
反論するのもやぶさかではない気がして、「失礼します」と呟くように言い、素直に腰を下ろした。
「富美乃さん、何かご用ですか?」
その名前で、さっき浮かべた笑みの意味を知る。
『綾時さん……』
スピーカー対応にしてあるらしい。富美乃様の声がスマートフォンの向こうから聞こえた。
『今、お父様から聞いたわ。西園寺を継ぐつもりはないとハッキリ断ったそうね』
えっ! 盗み聞きをしたから少しは事情を知っているが、そんな家庭の事情めいた話を私が聞いてしまってもいいのだろうか?
「側にいたんですね?」
西園寺オーナーがチラリと私を見る。その眼が『盗み聞きしていたんだろ?』と言っているように見え、ドキリとする。
『ええ、いたわ。お父様がガックリと項垂れた瞬間も見たわ』
「なら、答えずともご存知でしょう? 後継者にはなりません」
ハッキリ答える声に富美乃様の溜息が被る。
『私が実子だから? 遠慮しているの?』
「まさか」
戯けたように西園寺オーナーが言う。
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