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第4章 美しい女性

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「はい。確かに最高級の食材で作るとそれぐらいの値段になります。本日の物も手に入る材料の中で一番の食材で作っております」

聞けばアワビやホタテの海産乾物を初め、山の幸の乾物など十数種類の食材が使われているらしい。

「一口召し上がって頂くと分かりますが、とても濃厚なスープです。ですが、化学調味料などは一切使っていません。食材を干すと旨味成分が増すので、それを宝玉では一日かけて煮たり蒸したりして引き出しています――ということでごゆっくりお召し上がり下さい」

手間とお金が掛かった料理だということだ。これは心して頂かなければと力が入る。

「綾時さん、懐かしいわね」

富美乃様が目を細め、蓋に手を掛けた。

西園寺オーナーの目が一瞬だけ富美乃様を捉え、「――そうですね」と言いながら伏せられた。

「お母様、何が懐かしいの?」

夏乃お嬢様の問いに、富美乃様はウフフと愉しそうに笑って、「それは綾時さんと私の秘密よ」と言い、唇に人差し指を置いた。

「えーっ、狡い! 夏乃にも教えてぇ」

駄々を捏ねるお嬢様に、富美乃様は柔らかな眼差しを向けただけだったが――。
私は分かってしまった。

さらに西園寺オーナーの秘密も……。
沸跳墻を口にした彼の頭上に――吹き出しを視てしまったのだ。
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