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第4章 美しい女性

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「なんだ? 顔に何か付いているのか?」
「いえ、流石だなと感心したもので」
「お前に褒められると気持ちが悪いな」

彼の口がへの字になる。本気で気味悪がっているようだ。

「失礼な人ですね。素直にそう思ったのに……」
「日頃の態度がそう思わせるのだ。それが嫌なら態度を改めるんだな」

あくまでも私が悪いということだろう。自分本位のその態度こそ改めるべきだと思う。

「不服そうだな」
「いえ」

ツンとそっぽを向くと、目の前に『宮廷料理 宝玉』の看板が見えた。

「あそこ、満漢全席が食べられるところですよね?」

両親と行ったのはあの店だった。ただ、お目当ての満漢全席は予約が必要だった上、最低人数が四名からとなっていたので頼むことはできなかった。

「ああ、目的の場所だ」
「えっ、今日のディナーは宝玉だったんですか?」
「お前に満漢全席で一番上等のプランを食べさせてやる」
「――さっ西園寺オーナー」

感動でウルウルと瞳が潤む。

「私、一度食べたかったんです!」
「お前の専門は賄いだったんじゃないのか?」

そんな嫌味も全然気にならない。

「以前、両親と食べ損なったんです。リベンジしたかったんですけど、最低人数が……」
「四人からだろ? お前、友達がいないのか?」

コクンと頷くとクッと喉を鳴らして、「今夜は存分にリベンジしろ」と言ってくれた。

何とお優しい……と思ったのは一瞬だった。「だが忘れるな、私の恋人だ。行儀良くな!」と再度注意を促され、今度は手を繋がれた。
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