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第4章 美しい女性

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だが、西園寺オーナーとの約束は前途多難だった。
十二月に入ったというのに、彼の食事シーンを一度も見ていないのだ。

このままでは本当に辞めさせられてしまう……と思う今日この頃だ。でも、そうなったら佐藤君の残した言葉を現実のものにしてあげることができない。何となくそれは嫌だなと思った。

「そうそう、今日、あの方がいらっしゃるそうよ」
「あの方?」

首を捻る私に「ああ、そうかぁ」とマミさんが説明する。

「寧々はまだ会ったことなかったねっ。京極富美乃きょうごくふみの様、西園寺オーナーのお姉様よ。彼女がいらっしゃるの」

富美乃様は西園寺オーナーより四つ年上の三十二歳。二十二歳の時に十歳年上の京極貴之氏と結婚して、現在六歳になる女のお子様が一人いるらしい。

「会えば分かると思うけど、それはもう綺麗で素敵な女性ひと――痛っ! 誰、何するのよ!」
「浮気心を出してるからよ」

神乃マネージャーがマミさんの耳を引っ張っていた。「もう!」とマミさんがその手に自分の手を重ねる。

「馬鹿ねぇ、好きなのは佳乃だけって知ってるでしょう?」

その言葉に神乃マネージャーの目尻が下がる。

「富美乃様の話をしていたのよ」

「ああ」と神乃マネージャーが深く頷いた。
「それなら分かるわ」と言いながらマミさんの隣に腰掛けた。

「それで、何時頃おみえになるの?」

マミさんが神乃マネージャーの顔を覗き込みながら訊ねる。何気にイチャイチャしている?

「十九時頃らしいわ」
「ということは、あのお嬢ちゃんも一緒ってこと?」
「でしょうね」

二人の眉が八の字になる。困り顔? なぜに?
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