上 下
71 / 170
第3章 事件、事件、事件

24

しおりを挟む
佐藤君の頬から耳の辺りが薄らと赤く染まる。

「どうやらビンゴのようだね」

樫野チーフが口元を緩める。

「くそっ、バレたら仕方ない。そうだよ」
「だからクーラウに来たの?」
「寧々ちゃん、どういう意味?」

樫野チーフが首を傾げた。

「彼、例の詐欺師のこと知っていたんです。でしょう?」
「本当、お前って何でもお見通しだな」

佐藤君が苦笑する。

「仲間内でも一部の奴しか知らないマル秘情報だったんだ。あのおっさんが超やり手の詐欺師だってこと」

「じゃあ、あの男が来店したとき……彼をすでに知ってたんだ」

樫野チーフの言葉に佐藤君は「ああ、クーラウでも詐欺を働くんだなってずっと見てた。でも……こいつが」と彼の視線が私に向く。

「あの時、こいつが『詐欺師だ』って叫んだとき、神の啓示だと思った。だって、俺ら以外、誰も奴の正体を知らないんだぞ」

「だから宇宙人か、短絡的な思考だな」

西園寺オーナーは馬鹿にしたように笑うと、「で? 捕まるのが分かっていてクーラウに来たというのか?」と呆れたように言い、「まったくご苦労なことだ」と息を吐き出すと腕を組み背もたれに深くもたれ掛かった。

「――俺だって……何の根拠もなかったけど、こいつなら止めてくれるかもしれないと思ったんだ」
「そして、現実になった。良かったじゃない」

樫野チーフの微笑みに佐藤君がコクリと頷いた。

「俺、気が狂いそうだったんだ」

突然髪を掻きむしり始めた佐藤君を樫野チーフが慌てて止める。

「ちょ、ちょっと止めなさい。いったいどうしたの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迦具夜姫異聞~紅の鬼狩姫~

あおい彗星(仮)
キャラ文芸
かぐや姫×陰陽師の和風バトルファンタジー! あらすじ 紅い月が昇る夜に月から堕ちてくる罪人──月鬼。 彼らから人々を守るために、闘う武人。 それが陰陽師であった。 平安時代から今もなお続く闘いに、一人の少女が足を踏み入れる。 大切なものを探すために。約束を胸に抱いて──。 第1夜 陰陽師 主人公の神野緋鞠(かみのひまり)は、見習い陰陽師。相棒の妖怪、銀狼(ぎんろう)と共に陰陽師の聖地である古都“大和”に向かう途中、行き倒れてしまい──。 【暁入隊編】 第2夜 古都大和 大和に着いた緋鞠と銀狼。銀狼の旧知や謎の少年との出会い。兄の情報を知る老人との再会など、試験前にもひと波乱!  第3夜 鬼狩試験 鬼狩試験が開始。 校舎内を探していると、突然結界に異変が起きる。実体化する体、月鬼の出現。そして、元凶との対峙。絶体絶命のピンチに陥る緋鞠は、無事に月の裁定者と契約を交わし、力を手にいれることができるのか。 第4夜 天岩戸の天照 四鬼との激闘の末、月姫と無事契約を交わした緋鞠は、病院で目を覚ます。数日経ってもなかなか傷が治らず、落ち込む緋鞠に琴音はとある女性の話をする。どんな病気や怪我、呪いでさえも治してみせる太陽のように美しい女性薬師──天岩戸の天照のうわさ。 緋鞠は彼女に会うために脱走作戦を決行!? 【星命学園編】 第5夜 星命学園 いよいよ星命学園に入学。 楽しい学園生活に期待を膨らませていたが、早速波乱の予感!? 新キャラも増えて大騒ぎ! そして松曜から明かされる、兄の最後の任務とは──。 第6夜 夢みる羊 波乱の一日目を終えた緋鞠。二日目は警戒して学園へと挑むも、嬉しい伝言が。しかし、そんなうきうき気分も粉砕!? 催される体力測定、その名も「100メェーとる走」!100匹の羊を捕まえろ……って100匹!?戸惑う生徒たちに、見守る教師たち。それぞれの想いとは──。 第7夜 忘却の地下牢 模擬試験前日。翼が誰ともチームを組んでいないことを知り、そのことで翼と喧嘩になってしまい、落ち込む緋鞠。 そんなとき、翼の過去を知る生徒と戦闘になり、罰として地下牢に入れられてしまう。 そこでみた、幼き日の記憶の断片とは。 第8夜 心休める時 澪の蔵で目を覚ます緋鞠。ゆっくり休むよう言われるが、地下牢で見た出来事が気になってしまって眠れない。 小雨の音を聞きながら緋鞠が思い出すのは、あの約束。 そして、たまたまあの人も起きていて? ──予告── いよいよ始まる模擬試験。 緋鞠は翼に誘われ、琴音も加えた三人+一匹のチームを組むことに。 対する瑠衣と来栖は、己が一番となるために全力で闘うことを宣言。 勝利はどのチームに輝くのか。 ──第9夜 模擬試験(前編)

冷たい貴方とそんな夢を見た

かれは
キャラ文芸
その日、ひみとけいはひみの家で遊びそのまま眠ってしまっていた。 なんでもない日々。 2人が目覚めるとそこは自分達の知っている世界とは違っていた。 街のあちこちが壊された戦場。 武装した兵士。 全てを破壊するロボット。 人間は人間だけの世界を築こうとしていた。 それに対するは不思議な力を持った人たち。 彼らは全ての生物を守る為に立ち上がる。 ひみとけいも共に行く。

ブランリーゼへようこそ

みるくてぃー
恋愛
今王都で人気のファッションブランド『ブランリーゼ』 その全てのデザインを手がけるのが伯爵令嬢であるこの私、リーゼ・ブラン。 一年程前、婚約者でもあった王子に婚約破棄を言い渡され、長年通い続けた学園を去る事になったのだけれど、その際前世の記憶を取り戻し一人商売を始める事を決意する。 試行錯誤の末、最初に手掛けたドレスが想像以上に評価をもらい、次第に人気を広めていくことになるが、その時国を揺るがす大事件が起きてしまう。 やがて国は変換の時を迎える事になるが、突然目の前に現れる元婚約者。一度は自分をフッた相手をリーゼはどうするのか。 そして謎の青年との出会いで一度は捨て去った恋心が再び蘇る。 【注意】恋愛要素が出てくるのは中盤辺りからになると思います。最初から恋愛を読みたい方にはそぐわないかもしれません。 お仕事シリーズの第二弾「ブランリーゼへようこそ」

殺意の扉が開くまで

夕凪ヨウ
ミステリー
 警視庁捜査一課に所属する火宮翔一郎は、ある日の勤務中、何者かに誘拐される。いつのまにか失った意識を取り戻した彼の前には、1人の青年が佇んでいた。  青年の名は、水守拓司。その名を聞いた瞬間、互いの顔を見た瞬間、彼らの心は10年前へ引き戻される。  唯一愛を注いでくれた兄を殺された、被害者遺族の拓司。最も大切だった弟が殺人を犯し自殺した、加害者遺族の翔一郎。異なる立場にありながら、彼らは共に10年前の事件へ不信感を持っていた。  そして、拓司は告げる。自分と協力して、10年前の事件の真相を突き止めないか、とーーーー。  なぜ、兄は殺されたのか。 なぜ、弟は人を殺したのか。  不可解かつ不可思議なことが重なる過去の真実に、彼らは辿り着けるのか。

ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十
キャラ文芸
蒼井ミハエルは、外見は十一歳くらいの人間にも見えるものの、その正体は、<吸血鬼>である。人間の<ラノベ作家>である蒼井霧雨(あおいきりさめ)との間に子供を成し、幸せな家庭生活を送っていた。 なお、長男と長女はミハエルの形質を受け継いで<ダンピール>として生まれ、次女は蒼井霧雨の形質を受け継いで普通の人間として生まれた。 これは、そういう特殊な家族構成でありつつ、人間と折り合いながら穏当に生きている家族の物語である。     筆者より  ショタパパ ミハエルくん(マイルドバージョン)として連載していたこちらを本編とし、タイトルも変更しました。

本日は性転ナリ。

ある
キャラ文芸
 如月瑠衣(きさらぎ るい)は、ごく普通の男子高校生として代わり映えの無いつまらない毎日を送っていた。  しかし、ある日を境に、それが自分に与えられた"嘘で作られた、幸せで平穏な日々"だったのだと思い知らされる事となる。  幼馴染の"高梨莉結(たかなし りゆ)に手を借りつつも、"元に戻る事の出来るその日"まで、女としての生活を送る事となった瑠衣だが、それは想像以上に難しいものだった……。  そして瑠衣自身、そして周りの人々に次々と起こる様々な問題。  瑠衣は、葛藤しながらも自分を信じてそれらに立ち向かっていくのであった。  これは"性転"してしまった瑠衣が、周りの人々との出会いによって"本当の自分"を見つけていくストーリー。    興味を持って頂けたら是非一話だけでも読んで下さい。つまらないと思った方は、良ければその理由などもコメントして頂けたら、出来る限りの改善をしていきたいと思います。  未熟者が書いた素人小説ですが、創造をカタチにしていく勉強の真っ最中なので、是非温かい目で見守ってください。  古い話から常時改稿していますが、途中から読み進めるのが嫌になるような文体になるかもしれません。  それは、この「本日は性転ナリ。」が、携帯小説を始めてから、初めて完結まで続けられた作品なので、未改稿部分はルールや小説執筆の常識等も知らないままに思い付く事を書き殴ったからです。笑  今でも"改稿"と言える程の事は出来ていないかも知れませんが、以前と比べて確実に読み易く直せていると思いますので、是非改稿後の方も読んでいただけると幸いです。  この小説を執筆するにあたって、読者の方々に大変励まされております。この物語が続いているのはその方々が居るからです。  本当にありがとうございます。

【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。

紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。 アルファポリスのインセンティブの仕組み。 ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。 どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。 実際に新人賞に応募していくまでの過程。 春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

処理中です...