上 下
42 / 170
第2章 愉快な仲間たち

19

しおりを挟む
***


あれ以来、マミさんと神乃マネージャーの仲は改善されたが、それに気付いているのは私だけのようだった。二人は以前と変わりなく、淡々とした仲を装っていた。

「ねぇ。寧々の賄い、オーナーに食べてもらった?」
「いえ、機会がなく、まだです」
「あのおむすび、本当に美味しかったぁ。でも、最近不作ね」

不作というのは『次回に期待』という評価続きだからだ。お握り定食以降『オーナーに試食』という評価を貰った賄いはない。

私はどれもこれも美味しいと思ったのだが……いったい何を以て『オーナーに試食』に至るのだろう?

今日の賄いは柚木斗真ゆずきとうま君という、若干二十二歳ながら海外の三つ星レストランで修業を積んだ、クーラウ期待の若手ホープが作ったものだ。

「マミさん、それ嫌味ですか?」
「本心よ。どうして?」
「だって、柚木君の料理を食べながら言うからです」

「はぁ?」という顔で、マミさんが“彩り竹籠弁当”と名付けられた料理に目をやった。
視線の先には、丸く編んだ大ぶりの竹籠に旬の食材をこれでもかと使った料理が載っている。

海外の生活が長かったと聞いていたので、柚木君作の賄いを見たとき意外に思った。なぜなら、『ザ・和』だったからだ。いつか写真で見た、晩秋の京都嵯峨野をイメージさせるお弁当だった。

「見て下さい、このコハダの酢じめを。トッピングの山芋とイクラがとっても綺麗ですよね? お握り定食とは比べものになりません」

見た目もさることながら味も抜群だった。トッピングが味に深みを与え、えもいわれぬ美味しさにしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

未亡人クローディアが夫を亡くした理由

臣桜
キャラ文芸
老齢の辺境伯、バフェット伯が亡くなった。 しかしその若き未亡人クローディアは、夫が亡くなったばかりだというのに、喪服とは色ばかりの艶やかな姿をして、毎晩舞踏会でダンスに興じる。 うら若き未亡人はなぜ老齢の辺境伯に嫁いだのか。なぜ彼女は夫が亡くなったばかりだというのに、楽しげに振る舞っているのか。 クローディアには、夫が亡くなった理由を知らなければならない理由があった――。 ※ 表紙はニジジャーニーで生成しました

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

第七魔眼の契約者

文月ヒロ
キャラ文芸
 主人公、最弱の【魔術師】・和灘 悟《わなだ さとる》。  第六魔法学院に通う彼は、二年の夏のとある日の朝学院より落第を通告された。 『【迷宮】攻略試験を受け、攻略する』  状況を打破しようと奔走する彼は、そんな折、落第回避の方法として追試の存在を知る。  そして試験開始後【迷宮】へと潜り込んだ悟だったが、そこで【魔眼】を名乗る声に話し掛けられ――。  最弱だった少年【魔術師】が【魔眼】と紡ぐ――最強の物語、開幕!!

処理中です...