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第2章 愉快な仲間たち

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――やっぱり思った通り樫野チーフはオネエ様。ゲイだった。
このたぐいの人は今まで私の周りにはいなかった。基本、私は探究心の塊だ。

「寧々ってチーフにホの字なの? でも、無駄よ」

だから観察と称してあまりにも彼を見つめていたからだろう。こんなことを言われてしまった。

言ったのはホール係りの間宮まみやマミさん。同じ年だが短大を出てすぐクーラウに入ったのでここでは先輩だ。

「いえ、ゲイという人が珍しくて」
「貴女って言い難いことをサラリに言うのね。でも、そういう性格嫌いじゃないわ」

そう言いながらマミさんは、あの時のフロアマネージャーに視線を向けた。

「私が嫌いなのはああいう女」

彼女は神野佳乃じんのよしのさん。

『仕事は明日からだ』と言われた次の日、スタッフたちとは自己紹介し合った。だが、例の一件を覚えていた皆は一様に驚いた表情をしていた。

あれだけの騒ぎを起こしたのだ。まぁ、当然と言えば当然だ。
しかし、後日聞いたのだが、驚いた理由はそのことだけではなかったようだ。

マミさん曰く。『西園寺オーナーが自ら新人を紹介するなんて! 貴女が初めて!』ということだった。

だからかもしれない。いつも遠巻きに見られ無視される私が、ここでは絶滅危惧種の生き物並に関心を持たれている。

「貴女もたぶん知っていると思うけど、神野さんって西園寺オーナーの遠縁らしいの」

そして、こんなトンチンカンなことをいきなり言われるようになったのも、それ故だと思う。

どうやら私と西園寺オーナーが特別な関係にあると思われているらしい。

いいえ、そんな情報は全くもって知りません――と心で呟き首を横に振ると、「あら、知らなかったの?」とマミさんが意外そうな顔をした。

「でも、血は繋がっていないのよ。それをいいことに、虎視眈々と妻の座を狙い策を練る女狐なの」

あの市松人形のような清純派女優っぽい人が……女狐?

だが、かく言うマミさんも西園寺オーナーに恋する一人だと思う。そう思ったのは、彼女の話題がたいていオーナーとマネージャーのことでヤキモチを焼いているように思えたからだ。
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